「極めて小さいが、デブリから得られる分析結果で、取り出し装置の開発などの知見が得られる」。福島第1原発2号機から初めてデブリを回収した意義について、東京電力の担当者は7日の記者会見でこう説明した。成分を分析し、炉内状況の推定や取り出し工法を決めるために活用するというが、今回取り出したのは「耳かき1杯程度」の微量で、限界があるとの指摘もある。
◆三段階の分析プロセス
今回のデブリは格納容器底部に転がっていたが、固まって設備に張り付いている場合もあり、砕いたり、穴を開けたりしないと取り出せないことも想定される。取り出し装置の開発には、デブリの硬さや成分の把握が欠かせない。
デブリの分析は日本原子力研究開発機構の研究所で実施され、主に三つのプロセスに分けられる。
「固体分析」では、核燃料由来のウランと、一緒に溶け落ちた金属やコンクリートの結晶構造などを特定。より現実に近い炉内状況が分かるという。
最後の「化学分析」では、切断したデブリを硝酸に溶かして調べる。デブリの成分を特定し、廃炉に向けた作業の安全対策やデブリの保管方法の検討に生かすという。ただ、1~3号機には、核燃料由来が濃いデブリもあれば、他の炉内構造物が多く交じっているものもあり、今回取り出した微量のデブリから全体像を把握するのは困難だ。
◆「本当に一歩」結果公表には1年程度
原子力規制委員会の山中伸介委員長は10月31日の記者会見で、「全体工程の中では本当に一歩。次のステップとして広範囲に採取し分析できて、初めて取り出し工法等の大きな参考になる」とくぎを刺した。
原子力機構は来年3月までに一定の成果をまとめたいとするが、最終的な結果の公表には1年程度かかるという。(山下葉月)