(写真:kapinon/PIXTA)
【画像でわかる】木枯らし1号の時期と株価の関係
■「木枯らし1号」が発生する年・しない年
東京地方の場合、西高東低の冬型の気圧配置の季節風によるもので、風速8m以上の北(から西北西)風でないと木枯らし1号にはなりません。風速8m以上は春一番にも使われる基準ですが、ザックリとした実感で、砂ホコリが立ち、髪の毛は大きく乱れて、雨が降っていたら傘をさすのが難しい位の強風です。
ですから、こうした北風の強風が11月中に吹かない年もあり、その場合には木枯らし1号が発生しなかった年になります。近年では、2022年までの2年間は木枯らし1号が吹かない年でした。これは温暖化が影響していると見られています。
そこで10月中に吹いてしまった「早い年」、11月10日までの「例年並み」と11月11日以降に吹いた「遅い年」の3つに分けて、木枯らし1号が吹いた日の翌日から年末までの日経平均株価の騰落率を平均しました。
木枯らし1号が「早い年」は、1951年以降で22回ありました。それぞれの年で、木枯らし1号が吹いた翌日から年末までの日経平均株価の騰落率を計算した後、22年間を平均すると、2.4%となり上昇しました。ただ、「例年並み」の4.1%と「遅い年」の5.2%に比べると上昇率が劣っていることも注目されます。
■景気へのプラス効果
基本的にこの時期の株価は年末にかけて上昇しやすいことは前回の本連載『ハロウィンの日の投資は「儲かりやすい」の真相』でも紹介しました。冬を迎えてエアコンなどの家電の購入が増えたり、年末に向けて会社員はボーナスの時期にもなり、クリスマスや年末商戦を迎えて個人消費が増える時期です。このような景気へのプラス効果が、木枯らし1号が吹いた日の翌日から年末に向けて基本的に株価が高い理由となります。
そして、分析結果から最も注目したいポイントは、木枯らし1号が吹いたのが「遅い年」は日経平均株価の騰落率が「例年並み」や「早い年」に比べて最も高いことです(5.2%)。また、上昇した年が21回となる一方で、下落した年は3回しかなかったため、88%の高確率で上昇する傾向(勝率)が見られました。
■木枯らし1号のジンクスが起こる理由
なぜ、このようなジンクスが起こるのでしょうか。木枯らし1号が吹くのが遅いということは、それまでの間、暖かい秋が続くわけです。爽やかな秋の季節のなかではみなさんも外出しやすくなり消費も盛り上がりやすくなるでしょう。
食欲の秋、旅行の秋など、楽しみも多く、消費が増えれば景気や株価にポジティブとなります。秋の期間が長ければ、衣料品業界でも秋物の売れ行きが好調となります。秋が短いと秋物が売れず、その時期を通り越して真冬物に注目が集まってしまい、消費にも影響してしまいます。
ところで、注意点もあります。木枯らし1号が吹かなかった年はこれまで8回あるのですが、これらの11月から年末までの2カ月の日経平均株価の騰落率を平均すると、-1.2%と下落傾向でした。冬の訪れが分かりにくいと冬物の消費が盛り上がりにくいことが理由にあるのでしょう。
吉野 貴晶 :ニッセイアセットマネジメント 投資工学開発センター長