自民と国民民主が組めば「大暴落」もある ワタミ、サブウェイ大反響(2024年11月7日『夕刊フジ』)

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ワタミ全社員会議で統合効果を説明した
【経営者目線】
衆院選で、自民・公明両党は、過半数(233議席)を割り込む大惨敗となった。石破茂首相の発言が、二転三転し大きな信頼を失った。失った信頼を取り戻すのは容易ではないと感じる。来年に選挙を控える同期の参院議員と話すと「非常に不安」という声が聞こえてくる。
いずれにしろ、自民党は今後、野党の協力を得なければ予算も法案も通すことが難しい。なかでも議席を4倍に伸ばした国民民主党キャスチングボートだと連日注目を浴びている。同党の公約を読み返してみた。
「手取りを増やす」ことを主軸に消費税の減税や、社会保険料の軽減のほか、103万円以上になると所得税が発生する「年収の壁」を178万円に引き上げることも看板政策に掲げる。これを実施すると約8兆円の税収減になると政府の試算も出た。
長年、財政破綻を警告し続けている藤巻健史参院議員とニッポン放送の番組で意見交換した。
藤巻氏は今回の選挙「バラマキの政党の方が議席を伸ばしている」と大衆迎合化を警告した。日銀の植田和男総裁も金融引き締めの姿勢を打ち出しているが、財源なきバラマキ政策のオンパレードでは、国の借金は膨らみ、日銀にまた国債を引き受けて貰うことになる。日銀が示した国債買い入れの減額などできるのだろうか。
藤巻氏は「(日銀が)方向転換すると長期金利も暴騰する」と危惧していた。国民民主の掲げる「年収の壁」の引き上げも「所得税が17兆~18兆円という中で、約8兆円減でどうなるのか。夢のような話だ。社会保障給付費をカットするなどしなければ無責任だ」と批判した。
2022年に英国のリズ・トラス政権は大型減税策などを打ち出したが、市場が大暴落し退陣に追い込まれた。藤巻氏は「当時のイギリスと比べても段違いに財政は悪く、中央銀行もお金をばらまいている。〝そよ風〟が吹いただけでトリプル安(=株安、円安、債券安)が起こる可能性がある」と指摘したが、同感だ。
現状、自民は国民民主の要望を聞くしか道はない。財政破綻に向けて足音が大きくなってきた。補正予算や来年度予算の策定をみて、海外投資家が日本は財政再建する気がないと評価し、国債の格付けダウンなどが起こり「Xデー」がいよいよ来るかもしれない。
自民と国民民主が手を組むことで国家経営上の「プラスの効果」は全くない。一方、ワタミが先日発表した日本サブウェイの完全子会社化は大きな反響をいただいた。マーケットも反応している。ワタミファームの有機農業をはじめとする「ワタミモデル」をサブウェイ社員が理解し、全体最適で、仕入れ、物流、マーケティング、店舗開発など、2つの組織が一体となることで「プラスの効果」がたくさん生まれる。それが経営だ。
政治も本来は国家経営だ。選挙で自民党は大惨敗のNOをつきつけられたが、次はマーケットから大暴落のNOをつきつけられる可能性が大いにある。
 (ワタミ代表取締役会長兼社長CEO・渡邉美樹)