◆関税、EV…「1期目よりインパクト大」
米大統領選に勝利したトランプ前大統領(鈴木龍司撮影)
「製造業の復活」を掲げるトランプ氏は全ての国に一律10%~20%、中国製品に60%の関税をかける方針。「看板政策なので、真っ先に手を付けるはずだ」。自動車関連企業の幹部は「1期目よりもインパクトが大きく、生産体制の検討が必要になる」と危機感を示した。
2016年の初当選後には、トヨタ自動車のメキシコ工場建設に対して「米国に建設しないなら多額の関税を支払え」と要求。今回はメキシコ製自動車への追加関税も打ち出す。人件費が高い米国を避けてメキシコに工場を構える日系企業は多く、関係者は「他国への投資を許さない姿勢だ」と警戒を強める。
また、メキシコ国境からの移民に対する強硬姿勢が労働力不足に拍車をかけ、賃金のさらなる上昇を招く懸念もくすぶる。
◆専門家「北米の生産、販売計画の修正を求められる」
政権交代によって、32年時点で6~7割を占めると想定された新車市場のEVシェアは2割ほど下振れするとの試算があり、日本総研の栂野(とがの)裕貴研究員は「北米の生産、販売計画の修正を求められる」と見通す。
◆「ビジネスの理論だけでは進まなくなっている」
現在の円安ドル高も、トランプ氏は輸出を念頭に「米国の製造業にとって大惨事だ」と是正を主張する。日本国内の中小企業などにとって原材料の仕入れ値や燃料費の低下につながるとの期待はあるが、実際には関税の強化や減税策がインフレを助長すると予想される。米国の利下げは進まず、日米の金利差に伴う円安ドル高の傾向が続くとの見方が強い。
米国に進出する企業からは法人税の大幅引き下げの公約に歓迎の声が出ているが、日本製鉄による米鉄鋼大手・USスチールの買収阻止を断言するなど政治介入のリスクは高まっている。丸紅ワシントン事務所の井上祐介所長は「米国は政治主導や世論重視の傾向が強まり、ビジネスの理論だけでは進まなくなっている」と指摘した。