セクハラに関する社説・コラム(2024年11月6/29日)

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企業は就活セクハラ根絶を(2024年11月17日『日本経済新聞』-「社説」)
 
 
キャプチャ
合同企業説明会で企業の担当者の話を聞く就活生(大阪市住之江区
 就職活動中の学生が、志望先企業の社員などからセクシュアルハラスメントを受ける事例が後を絶たない。厚生労働省は防止対策を企業に義務づけるため法改正の準備を進めている。
 セクハラは重大な人権侵害である。イメージ低下から人材獲得の支障にもなる。国のルール作りを待つことなく、各企業は率先して根絶に取り組むべきだ。
 厚労省が今年発表した調査によれば、インターンシップ中にセクハラを受けた学生は30.1%、それ以外の就活中では31.9%にのぼった。いずれも男子学生のほうが女子学生より体験した人の割合は高い。全体として3年前の調査より被害は増加傾向にある。
 主な内容は「性的な冗談やからかい」「食事やデートへの執拗な誘い」「不必要な身体への接触」「性的な事実関係に関する質問」などだ。過去に性的関係の強要が刑事事件となり逮捕者が出る事件もあった。一方で同性同士という気安さからの冗談や質問がセクハラになる場合もあろう。
 本来、採用活動に性的な話題や質問は不要だ。企業は一定のルールを設け社内で徹底したい。就職希望者からの訴えの受付窓口を設ければ学生の安心感につながり、社員への抑止効果にもなる。
 背景にはスマホとアプリによるマッチングサービスの登場で、卒業生と学生が個人的に会いやすくなった点もあるとされる。学生との接触は会社に届けるよう義務づける手もある。大学なども問題の解消に協力してほしい。
 男女雇用機会均等法の制定から来年で40年たつ。これからは外国の学生など海外人材の採用も増える。文化や習慣などさまざまなルーツや背景、価値観を持つ学生に対し、日本企業はハラスメントを生まないよう接し、能力や資質を評価しなければならない。
 ただし入社後のミスマッチを減らすためには、学生と社員らの接触をむやみに制限するのも弊害がある。望ましい就活に向け、企業は努力を重ねるべきだ。

就活中のセクハラ/社員を監督する責務果たせ(2024年11月6日『福島民友新聞』-「社説」)
 
 企業の採用担当者らが優越的な立場を利用し、就職活動中の学生に行うセクハラは、被害者を傷つけ、人生を壊しかねない卑劣な行為だ。担当者を雇用する企業にセクハラを根絶する責任がある。
 厚生労働省が、学生へのセクハラ防止対策を企業に義務付ける方向で検討に入った。学生と面談する際の社内ルールの策定や、相談窓口の設置と利用の周知などが対策案に挙がっている。学生のみならず求職者全体が保護の対象になるとみられる。来年の通常国会で関連法改正案の提出を目指す。
 厚労省の調査によると、就活中やインターンシップ(就業体験)中にセクハラを受けた学生は3割に上った。内容は性的なからかいや質問、食事への執拗(しつよう)な誘いなどが多い。セクハラにより「就職活動に対する意欲が減退した」「学校を休むことが増えた」など心身への影響が確認されている。
 義務化が検討される対策の多くは、20年近く前に厚労省が定めたセクハラ防止に関する指針に沿ったものだ。指針で対策が求められながら、5割を超える企業は特に対応していなかった。
 企業の対応が鈍く、セクハラがなくならない現状からすれば、義務化の検討は遅きに失したと言わざるを得ない。政府と国会は法改正の議論を急ぐ必要がある。
 採用担当者だけでなく、インターンシップなどに対応した人事部門以外の社員がセクハラを起こすことが少なくない。過去にはOB訪問した学生に対し、社員が酒を飲ませて乱暴し、刑事事件に発展したケースがあった。
 対策に取り組んでいる企業は、セクハラに関する処分規定を設けて抑止力を働かせたり、学生と接する社員を研修で指導したりしている。面接官が学生の個人情報を悪用する事例があることから、電話番号や電子メールアドレスなどを非公開にした企業もある。
 採用活動時の対策を実施しないのは、性犯罪となりかねないセクハラを黙認しているに等しいと企業は認識すべきだ。義務化を待たず対策を取ることが求められる。
 学生は被害に遭わぬよう、採用担当者らと個人的な連絡を取らないことが大切となる。食事に誘われたり、個室での面談を求められたりしても応じる必要はない。
 泣き寝入りすると、入社後も性的な嫌がらせが続く恐れがある。セクハラを受けたら、大学のキャリアセンターや労働局などにためらわず相談することが重要だ。たとえ第1志望であっても、セクハラを行う企業には入社しないという選択肢を持ってほしい。