政治とカネ に関する社説・コラム(2024年11月6日)

政治とカネ 抜本改革の議論を急げ(2024年11月6日『東京新聞』-「社説」)
 
 11日に召集される特別国会に向け、与野党の協議が進んでいる。政権の枠組みを巡る協議が先行するが、衆院選有権者が厳しい判断を下したのは自民党派閥の裏金事件に象徴される政治腐敗だ。与野党には政治資金の抜本改革に関する議論を急ぐ責任がある。
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 立憲民主党野田佳彦、国民民主党玉木雄一郎両代表は5日に会談し、政治改革に向けて協力することを申し合わせた。これに先立つ立民、日本維新の会、国民、共産の野党4党の国対委員長会談でも連携を確認した=写真。
 衆院選では「政治とカネ」が最大の争点となり、野党側が過半数議席を得た。民意に沿い、政治改革に一致して取り組むのは当然だ。先の通常国会で不十分だった裏金の実態解明はもちろん、「ザル法」と指摘される政治資金規正法も再改正の必要がある。
 使途公開が義務づけられていない政策活動費の廃止、国会議員全員に毎月100万円が支給される調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)の使途公開は、与野党ともに明言している。政治資金の透明性向上に向けて必要な法改正は年内に実現するよう求める。
 最大の焦点は、金権腐敗の元凶と指摘されてきた企業・団体献金禁止の成否だ。自民、公明の与党は存続を唱え、立民、維新、共産の野党3党は禁止を主張する。
 鍵を握る国民民主の玉木代表は全党一致で禁止するなら「反対する理由はない」と語るが、それでは自民党の判断を追認するに等しい。政策実現を重視する党なら主体的な判断を示すべきだ。
 企業・団体献金は「平成の政治改革」で禁止が決まったにもかかわらず、先送りされてきた。自民1強の時代が終わり、与野党伯仲になった今こそ、30年来の課題に答えを出す好機である。
 自民党は政治改革の議論以前に野党第3党の国民民主と経済対策や税制を巡る政策協議の開始を決めた。政治改革より政権維持を重視したのだろう。政治への信頼回復のために政治改革に直ちに取り組むと約束したのは石破茂首相自身だ。これ以上の先送りは有権者を欺く行為にほかならない。