見た目バケモノ〉〈ヒステリーババア〉とXで中傷された東野篤子教授
記者が解説する。
「本来、犯罪を抑止し取り締まる側の警察官が、匿名で研究者を中傷していた事件です。起訴されたのは40代のA警部。略式手続きなので罪を認めていると見られ、同日、刑が確定しています。侮辱罪の罰金刑としては、30万円は最も重い部類です」
「2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻以降、SNSでは情報発信が盛んになり、中には根拠のない陰謀論も多くみられるようになった。こうした背景から研究者に対する攻撃的な投稿が増えており、特に東野教授をはじめとする女性の研究者は、容姿をあげつらうなど侵攻とは無関係な誹謗中傷の標的となっていた」(同前)
A警部は、極右系カルト「Qアノン」へ傾倒していたと見られ、22年3月には、自らの匿名アカウントに〈我々デジタルソルジャーはマスコミに屈せず、このデジタル空間で闘い続けなければ人類の未来はない〉などと投稿。
さらにA警部はウクライナ侵攻をめぐってX上で専門家を次々と罵倒しており、東野教授に対しても、昨年5月に〈見た目からしてバケモノ〉と中傷した上、東野教授の代理人から損害賠償を求める通知が今年1月に届いた後も、〈ウクナチ(注・ウクライナナチスの略称)擁護のヒステリーババアのスラップなんかに怯んでいられない〉などと投稿を続けていた。
事実上の謹慎処分を受けていた
4月に東野教授がA警部を侮辱罪で刑事告発すると、5月中旬にA警部は警務部への異動が公表された。
「捜査に伴うもので、実質上の謹慎です。さらに家宅捜索まで行われたが、県警では思想を示す書籍などが見つからなかったとしている一方でパソコンの押収やアカウントの保全はされず、書き込みに至る思想的な背景は不明のままです」(捜査関係者)
A警部の職務上の立場も問題視された。
「A警部は、3月から装備施設課に所属するまでは県警本部で生活環境課の課長補佐、署で生活安全課長を務めるなど、まさにネット上でのトラブルを取り締まる部署にいた」(同前)
A警部は直撃に「アゾフ連隊ってご存知ですか?」
異動後もA警部は県警本部へ勤務していた。小誌は、6月にA警部へ直撃している。
――東野教授への誹謗中傷について。
「ほかの人の発言に乗っかっちゃった。私の不徳の致すところで謝罪してます」
――「アノン」と書いていたが?
「アノンってその他大勢っていう意味。トランプ大統領は大好きですが、Qの投稿が事実と符合することがあって面白く見てただけ。私が警察官として何かをしたっていうことは一度もありませんよ」
当初は反省の弁を繰り返していたA警部だが、ウクライナにまつわる書き込みを問うと自説を開陳。
――「ウクナチ」というのは?
――そういった情報はどこで入手される?
「すべてTwitter上ですけど」
一部の書き込みについて「妄信していた」と釈明する一方、最後にはこう逆ギレするのだった。
「他人の話を鵜呑みにしたことは申し訳ないと思いますが、私だって捜査も受けてる。それなりに社会的制裁を受けているとは思うんですけど、少しかわいそうとは思いませんか」
A警部の今後について、前出の記者が語る。
「有罪が確定しても、禁固刑以上の罪でなければ失職しません。ただし県警としても何らかの処分が検討される。一般的には依願退職するケースが多いですが、認められた場合退職金が支払われ、数百万単位の額が支払われてもおかしくない。当然原資は税金です」
県警に問い合わせたところ、「依願退職については、個人のプライバシーにかかわるためお答えできません」と回答した。
果たして県警はどのような処分を下したのか、注目が集まっている。