「本の街」東京・神保町の3書店が能登の書店復興へ「支援セット」販売 同じ本屋として「できることをしたい」(2024年11月5日『東京新聞』)

 
 全国有数の「本の街」東京・神保町から能登半島地震で被災した書店へ、支援の輪を。
 いずれも神保町に書店を構える三省堂書店、書泉、東京堂の3社が、地震で全壊した石川県珠洲(すず)市の「いろは書店」の復興支援のためのチャリティーを企画。能登の工房で製作したグラスとブックカバーを「支援セット」として、限定100セットを予約販売する。関係者は「同じ本屋として、できることをしたい」としている。(樋口薫)
 「避難所暮らしで仲良くなった地域の皆さんが、毎日店に集まってくれる。それが書店の役割なんだと痛感した」。10月31日、神保町のカフェで開かれた書店関係者向けイベントで、いろは書店の八木淳成さん(51)が熱弁した。
神保町の書店関係者に被災地の現状を説明するいろは書店の八木淳成さん=東京都千代田区神田神保町で

神保町の書店関係者に被災地の現状を説明するいろは書店の八木淳成さん=東京都千代田区神田神保町

珠洲市の「いろは書店」、震災で1万冊ががれきの下に

 同店は1月の地震で1階が押しつぶされ、約1万冊の本ががれきに埋もれた。市内の小中高校の教科書を取り扱っていたことから、淳成さんは店主の父・久さん(83)とともに早期の営業再開に奔走。3月下旬に仮店舗を開き、新学期に間に合わせた。「あっという間の10カ月だったが、動き出せば周りも前を向いて進んでくれる」。現在は来夏の新店舗再建を目指し、SNS(交流サイト)などで支援を呼びかけている。
(左から)書泉の手林大輔社長、いろは書店の八木淳成さん、三省堂書店の亀井崇雄社長、東京堂書店神田神保町店の星野幸弘店長=東京都千代田区神田神保町で

(左から)書泉の手林大輔社長、いろは書店の八木淳成さん、三省堂書店の亀井崇雄社長、東京堂書店神田神保町店の星野幸弘店長=東京都千代田区神田神保町

◆「本を買う以外にも、本屋に来る理由がある」に共感

 チャリティー企画は、神保町周辺で夜の書店の楽しみ方を提案するイベント「トーキョー・ブック・ナイト」(11月24日まで)の一環。
 書泉の手林大輔社長や三省堂書店の亀井崇雄社長らがいろは書店の発信を知り、支援を申し出た。手林社長は「本を買うこと以外にも、本屋に来る理由があるという八木さんの思いに共感した。本屋仲間として、少しでも応援できれば」と話している。
神保町の3書店が企画した「支援セット」のグラスとブックカバー

神保町の3書店が企画した「支援セット」のグラスとブックカバー

 支援セットの収益はいろは書店の新店舗建設費に充てられる。グラスは能登島ガラス工房(石川県七尾市)が、ブックカバーは「能登上布」の織元である山崎麻織物工房(同県羽咋=はくい=市)がそれぞれ製造。12月中旬発送予定で、税込み1万1999円(送料無料)。
 また、3書店はトーキョー・ブック・ナイトの事業として、作家の大沢在昌さん、住野よるさん、原田ひ香さんによる書き下ろし小説をラベルに掲載したオリジナル・ジン「ショット・ストーリー」(4180円)を開発し、数量限定で発売。それぞれ東京堂書店神田神保町店、書泉グランデ三省堂書店神保町本店(小川町仮店舗)の店頭で購入できる。