共和党支持者の3割「愛国心で暴力に訴える必要あり」 議会襲撃再現恐れ狙撃手、防弾チョッキ配備の投票所も(2024年11月5日『東京新聞』)

 
 【ワシントン=鈴木龍司】アメリカ大統領選は5日朝(日本時間5日夜)、投票が始まる。女性初の大統領を目指す民主党のハリス副大統領(60)と、返り咲きを狙う共和党のトランプ前大統領(78)が歴史的な大接戦を演じており、両候補は3日も勝敗を左右する激戦州での遊説を続けた。国民の関心は高く、3日時点の期日前投票は約7800万人超で、前回投票総数の約5割に上った。

◆トランプ氏48.4%、ハリス氏48.3%…歴史的大接戦

 アメリカ政治専門サイト「リアル・クリア・ポリティクス」の分析によると、3日現在の主要世論調査の平均支持率はトランプ氏が48.4%、ハリス氏が48.3%でほぼ同率。激戦の7州では、トランプ氏が東部ペンシルベニアや南部ジョージアなどの5州、ハリス氏が中西部のウィスコンシンとミシガンの2州の支持率でわずかに上回っているが、いずれも僅差で結果が読めない展開となっている。
 選挙戦最後の週末の3日、ハリス氏はミシガン州で黒人や若者の票固めに注力した。トランプ氏はペンシルベニアと南部ノースカロライナジョージアの3州を駆け回って支持を呼びかけた。
 投票は5日朝から夜まで行われ、順次、開票作業が始まる。激戦州では両者の得票差がわずかな場合、再集計作業などによる混乱も予想されている。米紙ニューヨーク・タイムズは「世論調査の通りの接戦であれば、勝者が判明するまでに数日かかる可能性がある」と指摘している。
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◆「もしトランプ氏が敗れたら…」8割が暴力行為を懸念

 【ワシントン=鈴木龍司】5日に投開票されるアメリカ大統領選で、政治的な分断を背景にした暴力事件への警戒感が高まっている。前回の大統領選後には共和党のトランプ前大統領(78)の支持者による連邦議会襲撃事件が発生し、同氏はすでに今回の選挙でも「不正投票があった」と主張。期日前を含めた投票所に狙撃手を配置するなど、各地の警察が警備に追われている。
 「民主主義の危機」としてアメリカ政治史に汚点を残した議会襲撃事件が起きたワシントンでは、投開票日に先立って連邦議会議事堂周辺にフェンスを設置した。ホワイトハウス周辺のオフィスビルや店舗では、ガラス窓を木の板で覆う作業が進められている。
暴動の発生に備えて木の板で店舗を囲ったファストフード店=1日、米ワシントンで(鈴木龍司撮影)

暴動の発生に備えて木の板で店舗を囲ったファストフード店=1日、米ワシントンで(鈴木龍司撮影)

 「もし、トランプ氏が敗れた場合、過激な支持者がまた暴動を起こすのではないかと不安だ」
 ワシントン在住の50代の男性は木の板で囲われた店舗を見つめた。ホワイトハウス近くで働く女性(39)は「投票日以降の出勤は、街の安全を確認してからでないと決められない」と嘆いた。

◆銃撃、投票箱炎上、刃物男も…すでに不穏

 大統領選では、7月に演説中のトランプ氏が銃撃された。10月には西部のオレゴン州ワシントン州で、期日前投票所の投票箱が炎上。他地域の投票所でも男が刃物を振り回したり、選挙スタッフが暴行されたりする事件が起きている。
 こうした状況を踏まえ、警察当局は激戦州を中心に警備を強化。西部アリゾナ州の投票所では上空からドローンで不審者を監視し、建物の屋上に狙撃手を配置した。東部ペンシルベニア州には窓に防弾フィルムを貼った投票所もある。投票所の職員に防弾チョッキを配布する動きも出ている。
 一方、議会襲撃事件の扇動で起訴されたトランプ氏は激戦州の投票手続きなどで、繰り返し「大規模な不正が見つかった」と主張し、熱狂的な支持者の間で選挙の公平性への不信感がくすぶっている。
前回大統領選後、議事堂に詰めかけ結果に抗議するトランプ氏支持者ら=2021年1月6日、ワシントンで(岩田仲弘撮影)

前回大統領選後、議事堂に詰めかけ結果に抗議するトランプ氏支持者ら=2021年1月6日、ワシントンで(岩田仲弘撮影)

 アメリカの公共宗教研究所が8〜9月に実施した世論調査では、共和党支持者の約3割が「愛国者が国を救うためには暴力に訴える必要があるかもしれない」との意見に賛同。トランプ氏が敗北した場合、「選挙結果の無効を宣言し、大統領に就任するためにあらゆる手段を講じるべきだ」との考えに同調した支持者も約2割に上った。
 AP通信世論調査では回答者の8割弱が、選挙結果を覆そうとする暴力行為への懸念を示した。