トランプ支持者の興奮と期待…大越が行く“決戦の地”ペンシルベニア州(2024年11月5日『テレビ朝日系(ANN)』) 

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トランプ支持者の興奮と期待…大越が行く“決戦の地”ペンシルベニア州
いよいよ5日に投開票が行われるアメリカ大統領選。
■運命分ける“最大”激戦州
典型的なラストベルトのペンシルベニア州。両陣営の最新の支持率を見てみると、トランプ氏48.3% 、ハリス氏48.0%と、ほぼ互角となっています。
大越健介キャスター                                「鉄鋼の町ということもあって、倉庫などがいたる所にあるんです。ヘルメット姿の人がいたり、ピッツバーグは鉄鋼の町、労働者の町と言われていますが、だから伝統的に民主党支持が多い。でも、トランプ陣営は、ここに切り込もうということです」
本来は、民主党支持の労働組合が強い地域ですが、トランプ氏本人がいなくても、ミニ集会は大盛り上がりです。
トランプ氏の次男 エリック・トランプ氏                        「私は、この偉大な州で5年暮らしましたし、一族全員、ゆかりがあります」
ドイツ移民だったトランプ氏の祖父、フレデリック・トランプ氏が一時住んでいたのがペンシルベニア。若かりし頃、トランプ氏本人が経営学を学び、卒業したのもペンシルベニアの大学でした。
集会に参加した元製鉄企業勤務(72)                        「(Q.選挙を前に市内の雰囲気は)分断されています。特に、郊外の人は、話題にしたがりません。言い合いになるのが怖いんです。自分の意見を自由に言えるのは、同じ考えの人が集まる集会くらいです」
一方のハリス氏。今年に入ってからのペンシルベニア入りは、20回を超えます。
民主党 ハリス候補(先月27日)                         「ペンシルベニア州が鍵です。間違いありません」
民主党の大物や著名人も次々と現地を回り、支持固めを行いました。そして、電話攻勢で票の掘り起こしです。
大越健介キャスター                              「『一票獲得』みたいなこと言っている。こういう草の根の人たち、ボランティアの人たちが、選挙を支える姿というのは、日本もアメリカもいいものだなと」
ペンシルベニアの選挙人の数は、激戦州の中で最も多い19人です。過去の戦績を見ると、オバマ大統領以降、勝った候補者はみな、ペンシルベニアをとってきました。ハリス氏が、この州を落とした場合、試算された勝率は12%。大統領選の敗退にほかなりません。
■最後の狙いは“無党派層
大越健介キャスター                                  「ペンシルベニア州のエリー郡というところに来ています。実は、過去4回、このエリー群を制した候補が、大統領選挙で勝利をしているんです。ここは激戦州の中の最激戦地ということになります」
エリー郡は、民主党共和党の支持層がそれぞれ4割で、無党派層が2割。インテリ層の多い都市部、中流層中心の郊外、共和党支持者が多い農村地域という3つの政治風土が同居しています。“アメリカの縮図”とも呼ばれる場所です。
大越健介キャスター                                「こちらペンシルベニア州内にある食料の無料配給所ですが、教会が運営しているそうなんですけれども、ここ数年やはり物価高ということで、所得の低い人たちがここを利用する。そういう人たちが増えたそうです。いま、この場所が、開くのを大勢の人たちが待っています。気温も低くなって、いま寒空の下で食料の配給を待っています」
去年、発表されたペンシルベニアでの食料品値上がり率は、全米で最悪の8.2%です。
食料配給を受けた人                                 「あの2人だったら、トランプを選びます。(Q.なぜですか)結果を出すから。(Q.お金持ちとそうでない人たち、差が開いている思いますか)わからないな。貧しい知り合いしかいないから。(Q.アメリカの政治に期待し望むものはなんでしょうか。あなたの生活をよりよくするために)わからない。最善を期待するしかない」
■トランプ支持者の興奮と期待
大越健介キャスター                                 「日曜日の選挙戦の最終盤ということで、念のために10時からトランプさんの演説が始まるのに5時半に来てみたんですけど、車が渋滞して、この先は歩くしかないですね。こうやって自分の足で候補者の元に話を聞きにいく。大事なことなんだと思います。いま、朝6時を回りましたので、間もなく開門の時間です。間もなく入れると思うんですけど、いま、気温が実は0度。しかし、寒さなどみじんも感じさせない熱気にあふれて、人々が開門を待っています」
熱気あふれる一方で、気になったこともあります。
大越健介キャスター                                 「トランプさんを熱烈に支持するのはわかるんですけれど、例えば、このTシャツの裏のメッセージ『you missed』の下の言葉は、あまりアメリカでは使ってはいけない汚い言葉なんです。ハリスさんを批判しているんです。『お前は的を外したぞ』って。熱心な支持のあまりにちょっと相手を、いま流に言うと“ディスる”っていうんですか。そういうメッセージが、ところどころ散見されるのが、ちょっとその危うさを感じる」
トランプ氏の演説で目立ったのは「ペンシルベニアで不正選挙が行われている」という主張でしたが、裏付ける根拠はありません。
共和党 トランプ候補                                「連中は選挙を盗もうと躍起だ。『陰謀だ』と否定するが、恐ろしいことがこの国で起きている。不正の仕組みを変えなければならない」
90分に及んだ演説を聞いた支持者たちに聞きました。
集会参加者                                    「不正選挙は、いまも続いています。メディアは、“接戦”と報じますが、トランプ氏が圧倒的に優勢」
集会参加者                                   「(Q.トランプ氏の印象は)国を救って、経済を良くしてくれる。アメリカを成功に導いてくれる」
集会参加者                                   「(Q.トランプ氏は『票が盗まれた』と。その言葉を信じますか)もちろん、民主党は絶対に信用できない。このシャツを見てくれ。オバマの切り札は人種。ヒラリーの切り札は女性。アメリカの切り札はトランプ」
■大統領選 大越が見た“決戦の地”
◆首都ワシントンにいる大越キャスターに聞きます。
(Q.大統領選の取材を各地で続けてきましたが、トランプ氏本人の集会を取材してどう感じましたか)
大越健介キャスター                               「演説会場の列に並んで、5時間以上、待って、ようやく始まった演説は、得意のジョークは満載ですが、半分以上はハリス氏やメディアに対する悪口や皮肉で占められていて、さすがに90分もの演説時間は、正直、長いなと感じました。そして、気になったのが、前回4年前の選挙について、『自分は勝っていたのに票を盗まれたのだ』と、またも繰り返した挙句に、『今回も、すでに郵便投票で不正が起きている』と主張していたことでした。大接戦の今回の選挙、仮に敗北という結果が出たとしても、それはインチキが行われていたからだと言い張るための伏線ではないかと疑わしく思いました。もし、そうなれば、またも支持者の暴力沙汰に発展してしまいかねない。このワシントンの町がピリピリしているのもうなずけるなと思いました」
(Q.物価高やインフレに苦しむ人が多かったのが印象的でしたが、勝敗を分けるとされるペンシルベニア州。実際に取材してどう感じましたか)
大越健介キャスター                                 「象徴的な激戦地といわれるエリー郡ですが、まさに最激戦地ということで訪れましたが、さびれた街並みは、選挙戦の熱気とは、どこか縁遠い印象を受けました。失業者の増加や物価高によって、食料の無料配給所が発足した4年前から、利用者は増え続けているとのことでした。利用者の多くが『貧富の差はどんどん大きくなっている』と話していて、『政治に期待するものがあるとしたら、逆に知りたいくらいだ』と投げやりに話す人もいました。どの候補者の理念に賛同するかという思想的な分断とはまた違った、経済格差による分断は、さらなる深刻さをはらんでいると思います」
(Q.あす投開票ですが、1週間の取材を通して、一番、強く感じたことは何でしょうか)
大越健介キャスター                                「大都市でも、ひなびた小さな町を取材しても、自分たちの1票でリーダーを選ぶのだという強い意志を持つ市民が大勢いて、民主主義の大国、アメリカはさすがだなと思いました。ただ、異なる意見も尊重するという寛容さが薄れてきているのも、また事実でした。そして、トランプ氏の演説を取材するなかで、『地球温暖化なんて絵空事だ』と主張するのを聞くと、トランプ氏が大統領になれば、この型破りの人物の言葉が再び世界を面食らわせて、いわゆる西側諸国の結束の足かせになるのは避けられないのではないかと感じました。一方、ハリス氏が大統領になっても、民主党を敵視するトランプ支持者が相当数いるなかで、強いリーダーシップは当面、期待できないかもしれません。中国が威圧感を強め、ロシアが暴挙を続ける世界にあって、足元のおぼつかない超大国アメリカと、同盟国である日本のような国が、どう関わって、国際秩序を保っていくかの。時代が不確実性を増していくのは、ほぼ間違いないと感じた今回の取材でした」