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「政治と宗教と野球の話はするな」との俗言もあるが、私たちは宗教のことをどれだけ知っているのだろうか。知らなければ語ることもできない。伝統仏教からスピリチュアルまで令和の現状を追う。
旧統一教会と保守派の関係
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母親が巨額の献金をしたことから旧統一教会に恨みを抱いた山上徹也被告が、安倍晋三元総理を銃殺したのが'22年7月のこと。安倍元総理が旧統一教会系団体のイベントにビデオメッセージを寄せたことから、旧統一教会とつながりがあると考えた末の凶行だった。
「旧統一教会が日本で宗教法人として認証されたのが'64年。当時の日本は学生運動や労働運動で左派勢力が強く、一方の旧統一教会は『国際勝共連合』を作り、反共産主義を掲げていた。そこで岸信介元総理ら保守勢力は、左派勢力に対抗するために旧統一教会と協力関係を築きました。
ところが、'80年代後半から合同結婚式や霊感商法が社会問題視されるようになり、'89年には東西冷戦が終結して共産主義勢力の脅威が低減した結果、旧統一教会と自民党の関係性は弱くなっていた。亀裂が決定的となったのは、'91年に文鮮明氏が北朝鮮を訪問し、当時の金日成主席と握手をしたことです。これまでの反共主義とはなんだったのかと、国際勝共連合は一気にトーンダウンしてしまいました」
「'13年の参院選から旧統一教会による自民党候補への支援が活発化しました。当時は参議院で与党が半数を下回る『ねじれ国会』が続いていましたし、安倍氏は旧統一教会の支援も受けて一人でも多くの自民党議員を当選させたかったのでしょう。一方の旧統一教会側は、教団の体制保護のために安倍氏に近づいたのだと思います。
旧統一教会の持つ票数は当時で8万票ほど。安倍氏は選挙で協力してくれるならと、軽い気持ちで付き合っていたはず。安倍氏以外の議員にしても、選挙協力は受けても、政策的な影響は受けていないという認識だったと思います。安倍氏の銃撃事件が起きて、旧統一教会に注目が集まり、慌ててトカゲの尻尾切りをしたということです」
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「谷口氏は敗戦後の国民を鼓舞して天皇中心のナショナリズムを説き、保守的な政治活動を始めました。'64年には生長の家政治連合を組織し、組織内候補を出馬させたり、自民党候補を支援したりしてきました。ところが、いくらやっても『明治憲法復元』や『優生保護法改正』は実現しない。自民党への不信感などから、'83年には政治活動から撤退しています」
「しかし、生長の家の谷口総裁の愛国主義的な教えを引き継ぐ一派がいました。彼らが中核となって、現在も続く保守団体『日本会議』が'97年に創設されます。興味深いのは、日本会議には神社本庁などに加えて佛所護念会教団や崇教眞光など、新宗教団体が含まれていることです。新宗教の中にも戦前への復古的な考えを持っている人が存在していて、歴史の流れは断絶していないということなのでしょう」(ジャーナリストの藤倉善郎氏)
宗教団体の抱える「苦しさ」
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「霊友会は生前の石原慎太郎氏を支援していて、今でも保守色は変わりませんが、活動の力は弱くなってきました。その霊友会から分派した立正佼成会も、以前は積極的に推薦候補の選挙活動を支援していましたが、いまは会長も高齢で活力がなくなっているようです」(前出・小川氏)
「ここ30年で新宗教の各団体は大きく信者数を減らしていますが、真如苑だけはあまり数を減らしていない。そのポイントは政治活動をやっていないことかもしれません。選挙運動に動員されるのは信者にとっては負担ですから、それがないことが、人が離れない理由の一つではないか」
旧統一教会問題で注目が集まった「政治と宗教」の関係。総選挙が終わったばかりのいま、改めて考えてみたい。
「週刊現代」2024年10月26日・11月2日合併号より