「歴史的で画期的な違憲判決」同性婚訴訟、東京高裁の判断を弁護団は高く評価 その5つのポイントは?(2024年10月30日『弁護士ドットコムニュース』)

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東京高裁の違憲判決を受けて喜ぶ原告や弁護団(2024年10月30日、弁護士ドットコムニュース撮影)
同性カップル法律婚を認めない民法や戸籍法の規定は憲法に反するとして、国を相手取り訴えた集団訴訟控訴審判決が10月30日、東京高裁(谷口園恵裁判長)であり、規定は憲法14条、24条2項に反して「違憲」との判断した。一方、国の賠償責任を否定した一審・東京地裁判決を支持し、同性カップル側の控訴を棄却した。
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「合憲」判断を示したのは大阪地裁のみ
2審で「違憲」と判断されるのは、今年3月に判決が言い渡された札幌高裁に次いで2例目となったが、その内容は一層、踏み込んだものとなった。
弁護団は「判決では、民法739条に相当する配偶者としての法的身分関係の形成にかかる規定が設けられていないことの違憲性について正面から判断し、憲法14条1項、24条2項に違反すると認めたものであり、歴史的であり高く評価できる」とした。
この集団訴訟は2019年2月に提訴され、同性カップル法律婚できないのは憲法14条や憲法24条について違反すると訴えてきた。
●婚姻制度の目的や意義を考察
弁護団は東京高裁判決をどう受け止めているのか。判決では、憲法14条1項と24条2項について「違憲」と述べている。
判決後の会見で、東京訴訟弁護団の共同代表である寺原真希子弁護士は、特に重要な5つのポイントを次のように説明した。
「まず1点目ですが、判決では婚姻制度の目的や意義について検討し、婚姻制度は時代や社会によって変化するものであるとしています。この婚姻の意義について、国民の意識としては、社会的な公認を受けて、安定的な生活をともにすることにあるというのが実情だと言っています。
それを踏まえて、婚姻することが、自らの自由な意志で選んだ相手との永続的な人的結合関係、配偶者としての法的身分関係の形成が安定的で充実した社会生活を送る基盤だとしています」
ここで国側が「婚姻の目的は男女が子どもを産み育てながら共同生活を送る関係を保護するもの、カップルの間で自然生殖可能性のない同性カップルは当てはまらない」とした反論を否定した。
憲法24条「両性」は男女を示しているのか?
2点目のポイントは、「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない」と定めた憲法24条の趣旨に及ぶ。
国側は「両性」という言葉から、「憲法同性婚を想定していない」と反論していた。
「判決では、憲法24条について検討しています。憲法24条の制定時、確かに男女間の人的結合関係を前提に規定されましたが、同時に当時は同性婚の可否について議論にも上がっていなかったこと、また、両性とか夫婦といった文言はあるけれど、このことが同性間の人的結合関係に法的な保護をあてないということを許容する趣旨ではないとしました。
ですので、この24条があることを根拠に、同性婚を認めないということは、憲法14条1項で定められた法の下の平等に違反する問題が生じ得ないということはできないとしています」
同性カップルらの共同生活を「認定」
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判決後に会見をした弁護団(2024年10月30日、弁護士ドットコム撮影)
寺原弁護士が挙げる3点目のポイントは、性的指向による区別だ。
「判決では、性的指向による区別の存在について判断しています。かつて異性愛が自然で、同性愛は病理であるという認識がありました。ですので憲法の制定時は結婚は男女間のものであると規定されています。
しかし、この性的指向は本人の意志で選択、変更はできなことが現在は明らかになっており、その性的指向による差別は許されないということや、すべての人の人権が性的指向にかかわらず尊重されるべきであるという認識は広く共有されていると指摘しました。
そして、原告控訴人の具体的な生活状況にかなり手厚く触れ、同性カップルもお互いを人生の伴侶としたり、家事や生活費を分担しあり、子どもを養育したりと、婚姻関係にある夫婦と異なることのない共同生活を営んできた実態があると認定しました。
以上のことなどから、この配偶者としての法的身分関係の形成ができることが、個人の人格的存在と結びついた重要な法的利益であり、男女間と同様に同性間でも尊重されるべきだと言っています。そして、同性間では配偶者としての法的身分関係の形成ができないことの不利益の重大さを認定しています」
●男女間と同性間の「区別」に合理的根拠は?
4つ目のポイントは、こうした男女間と同性間のカップルにある「区別」の合理的根拠の検討だ。
「先ほども述べた通り、自然生殖可能性は婚姻の不可欠な目的ではなく、法的な利益は同性カップルにとっても重要なことだとしました。しかも、同性カップルに婚姻という法的保護を与えたとしても、そのことが男女間に与えられている法的保護になんら影響を与えないとしました。
それに加えて、異性カップルも連れ子や養子など自然生殖による子どもだけを育てているわけではなく、さまざまなパターンがあり、同性カップルも実際にそうして子育てしているケースがあるとしました」
さらに、判決では国連理事会や自由権規約委員会同性婚について法改正を求める勧告を出していることや、自治体で広がっている同性パートナーシップ制度についても触れている。
「判決では、同性間の関係に社会的公認を受けたいという要請と、それを受け止めるべきであるという認識が広がっていることを示しています。世論調査でも同性婚に賛成する割合が増えており、社会的需要は相当程度高まっているという認識を示しました。
こうした理由から、男女間と同性間のカップルに生じている区別は、現在も維持することに合理的根拠があるとは言えないと断じています」
同性婚を実現するなら…国会に「注文」
最後のポイントは、同性婚を認めていない規定が違憲だとして、同性カップルが配偶者としての法的身分の形成にかかる規定をどう設けるのか、具体的に踏み込んだ点となる。
「その方法として、今の民法や戸籍法の規定を改正して同性カップルを包摂するという方法もありますし、婚姻とは別制度をつくる方法もあるとしています。
ただし、判決では、国会が立法する際には個人の尊重(憲法13条)や法の下の平等憲法14条)という憲法上の要請があり、その裁量には限界があるということも言っています。例えば、配偶者の法定相続権があるけれども、婚姻当事者の性別にはかかわらない。配偶者の地位によって当然に生じる権利で、そうした権利について、男女間と同性間を違う内容にするには、違憲の問題が生じるとしています。
これは、国会の立法にかなり具体的な注文をつけているもので、同性カップルに配偶者としての法的身分関係の形成にかかる規定を設けていないということは、性的指向による差別であって、憲法14条1項や24条2項に違反するということを言っています」
弁護団は声明「ただちに立法を」
弁護団は同日、声明を公表した。声明では判決を評価するとともに、次のように述べている。
「婚姻の自由と平等の実現は、同性愛者等の尊厳回復にとって譲れないものであると同時に、日本に祝福と幸福を増やすものである。声を上げ続けた当事者、支援者、多くの方の声を受け、本日までに、2件の高裁判決を含む7件もの違憲判断が積み重なってきた。
今後の全国の『結婚の自由をすべての人に』訴訟の高裁及び最高裁においても、明確な違憲・違法との判断が下されること、そして、何より、立法府においては、本判決が、国会に立法裁量があることは、不合理な区別を解消する立法措置を取らないことの合理的理由とはならないと明示的に指摘したことを重く受け止め、直ちに婚姻の自由と平等を実現する立法を行うことを強く期待する」
同性婚訴訟】5地方で計6件の訴訟が起こされている。今日の控訴審判決を入れて8件の判決が出ており、その内7件が「違憲」「違憲状態」との判断を示した。これまでに同性カップルの結婚を認めない現在の規定を「合憲」と判断したのは大阪地方裁判所の判決のみ。