岸田文雄前首相(資料写真)
「防衛増税」とは、2023~27年の5年間で計43兆円に膨らんだ防衛予算のうち、約1兆円を所得、法人、たばこの3税の増税で調達するという岸田政権が示した方針を指す。増税は有権者の評判が悪く、自民党内でも反対する声があり、実施が先送りにされてきた。
27日に投開票が行われた衆院選で、野党各党は増税に反対する姿勢を強調してきた。立憲民主は防衛増税はしないと公約に掲げ、国民民主は消費拡大を促す目的で、消費税とともに所得税減税を訴えた。日本維新の会も、消費税に加え、所得税や法人税の減税を断行すると強調した。
◆1兆円分「社会保険料に上乗せ」
岸田政権が残した財源問題は他にもある。児童手当の拡充や高等教育の負担軽減など、年間3兆6000億円を必要とする「少子化対策」だ。そのうち毎年1兆円分は26年度から社会保険料に上乗せして集めることが、岸田政権時に決定された。一方、今回の選挙戦で、国民民主や維新は若い人の可処分所得を増やすことを強調し、社会保険料の軽減を主張。政権の方針とは対立する。
野村総合研究所の木内登英氏は、「歳出を先にし、財源を後回しにした結果と言える」と岸田政権を批判。「与党は今後、政権を維持するために野党との協力が必要になり、岸田政権から引き継いだ財源問題は混迷するだろう」と予測している。
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