◆震災から13年、現場も世代交代
「長期停止に伴う人材育成の問題は、運転員の育成などソフト面の対応が重要になる」
再稼働についての懸念などを問われた原子力規制委員会の山中伸介委員長は、23日の記者会見でそう答えた。
原子力規制委の山中伸介委員長=9月4日撮影
それから13年半、現場の運転員らも世代交代した。東北電力によると今年4月時点で、原発で働く技術系の社員計517人のうち200人(39%)は運転の経験はなく、運転に直接携わる社員も、140人のうち51人(36%)が未経験者という。東北電力の担当者は「ベテランが現場で若手を指導したり、国内や米国の原発に派遣したりして、経験を補うようにしている」と説明する。
◆平安、江戸、明治、昭和…何度も大津波
女川原発が建設された三陸海岸は歴史的に、地震や津波といった自然災害のリスクが高いとされる。東日本大震災の震源からの距離は、福島第1の南西約180キロに対し、女川は北西約130キロと最も近い原発だった。
女川原発(2011年撮影)
そのため、規制委の審査は、1年程度で終わる原発がある中、女川2号機は6年2カ月もかかり、適合と判断された原発で最も長かった。山中委員長は「大地震を経験し大きな津波が発生する可能性のある原発で、慎重に審査した」と説明する。
◆福島第1と同じ沸騰水型の原子炉
さらに、女川2号機の原子炉は福島第1と同じ沸騰水型で、事故の記憶は消えない。これまでに再稼働した原発12基はすべて加圧水型だ。沸騰水型は、加圧水型より構造がシンプルだが、原子炉でつくった蒸気でタービンを直接回すため、タービンが汚染されて管理が難しいとされる。
女川3号機などにも携わった原子炉設計者で元東芝の後藤政志さんは「2号機の建屋は大震災で(変形のしにくさを示す)剛性が低下した」と指摘。「コンクリートの基礎など傷みが激しいのではないか。タービンの破損も心配だ」と話す。
その上で「沸騰水型は格納容器が小さく、事故時に圧力が一気に高まる。一方で、加圧水型は温度圧力が高く、炉心溶融を起こす時間が早いという欠点がある。事故は防止装置が機能しなかった時に発生する。それは両方の型で変わらない」と指摘した。