(政権与党には)非常に厳しい結果になったね。だけど、僕はこうなるんじゃないかと予想はしていましたよ。
敗因は「政治とカネ」の問題。裏金問題です。この問題に対しては、(前政権の)岸田(文雄)首相も石破首相も、厳しく、しっかりと対処します、と言ってたができなかった。
(政治資金収支報告書に不記載があった)いわゆる〝裏金議員〟を当初はすべて公認しようとしていたでしょ。批判を浴びて、(一定の基準以上の)12人を非公認にしたんだけど、今度はそこに2000万円を支給していたことが発覚してしまった。あれで国民の怒りが爆発したね。その結果が今回の自公過半数割れでしょう。
もうひとつの敗因は、石破さんが自民党総裁選中に掲げていたことがまったく実行されないどころか、正反対になってしまったことかな。与野党でしっかり議論をした上で、解散・総選挙をやる、と言っていたのに実際は、たった8日で解散でしょ。言ったことと、やっていることがまるで違う。これじゃあ国民もソッポを向く。
《田原さんは、石破首相とは旧知の仲。「政治とカネ」の問題ではどんな話を?》
「政治とカネ」の問題はもっと透明にしなきゃいけない。裏金のことが問題になったときは雑誌で鼎談(ていだん)もしました。
石破さんは「政治にはどうしてもお金がかかる、だから透明にすべきだ」と言っていたんです。そのことを総理・総裁になっても主張すべきだったが、「数の論理」で言えなくなったのでしょう。
《田原さんは当初、石破さんを「度胸がある」「逃げない」と評価していたが》
石破さんは「安倍(晋三氏)1強時代」でも、恐れず批判をした点が、国民に評価された。そういった面の人気もあって総裁選で勝てたんです。
でも、石破さんはもともと党内の少数派だから、いざ総理・総裁になったら例の「数の論理」で自分のやりたいことができない。押し通そうとすれば、失脚してしまいかねないし、その「度胸」にもいまひとつ欠けていたと思いますね。
結局、幹事長ら党の執行部に翻弄されて、石破さんが総裁選で言ったこともほとんど〝封印〟せざるを得なくなった。国民からすれば「石破さんは何をやりたいのか分からない」とみられてしまったのでしょう。
《与党過半数割れで今後の政権の行方はどうなる?》
ただ、いずれにせよ、(選挙前に掲げた「自公で過半数」を達成できなかったことで)石破政権は、持たない可能性が強くなったかな。
次は誰かって? うーん、(総裁選で決選投票になった)高市(早苗)さんに対しては党内の反発もあるし、小泉(進次郎)さんも違うかな…。
《健全な民主主義のためには政権交代が必要―というのが田原さんの主張。その可能性は高まったのか?》
必ずしも、そうじゃないと思いますね。今の野党の状況を見たらバラバラで、選挙協力もほとんどできなかった。率直に言えば、今の野党は本気で政権奪取を考えていないんじゃないか、とさえ感じますよ。(聞き手 喜多由浩)