経団連「自公中心に政治構築を」 維新・国民民主とは距離(2024年10月28日『日本経済新聞』)

 
石破首相と経団連の十倉会長㊨
経団連は28日、自民党公明党の与党が過半数を割った衆院選の結果について十倉雅和会長の談話を発表した。「自民党公明党を中心とする安定的な政治の態勢を構築し、政策本位の政治が進められることを強く期待する」と訴えた。

与党の敗因に関して「政治資金を巡る問題に国民が厳しい判断を下した」との認識を示した。「待ったなしの様々な重要課題に直面している」と主張し、成長と分配の好循環や原子力の最大限活用、賃上げへの環境整備などに迅速に取り組むよう求めた。

日本商工会議所小林健会頭は談話で「連立与党の枠組みがいかなるものであれ、デフレ経済からの完全脱却などに不退転の決意で臨むべきだ」と唱えた。経済同友会新浪剛史代表幹事は「与野党問わず現実を直視した上でしっかりと議論を尽くし、必要な政策を前に進めてほしい」と要求した。

業界団体では日本鉄鋼連盟今井正会長(日本製鉄社長)が「ものづくり産業の競争力を強化する政策として、安全を大前提とした新設・リプレース(建て替え)を含めた原子力の活用を強く期待する」とのコメントを発表した。石油連盟の木藤俊一会長(出光興産社長)は「自民党公明党を中心にする安定的な政治体制のもと、日本の経済発展に資する政策本位の政治を望む」との談話を出した。

石破茂首相は連立政権の枠組みの拡大など野党の協力を引き出す道を探る。与党の議席過半数に達しない少数与党となった場合、予算案や法案の成立に向けた政策の推進力を欠きかねない。

自民党内で連携を模索する声がある日本維新の会や国民民主党衆院選で消費税の減税を提起した。

経団連の十倉氏は22日の記者会見で「暮らしをよくするために消費税を下げるというのはやや安直な議論ではないか」と批判した。有事に備えた財政健全化を重視しており、経済財政運営の考え方は維新や国民民主とは異なる。

経団連岸田文雄政権下でグリーントランスフォーメーション(GX)推進や賃上げの環境整備、日韓関係改善といった主要政策で蜜月関係を築いた。岸田政権の経済政策の継承を掲げた石破氏に期待したものの、さっそく政権運営は難路に差し掛かった。

政治の混乱は経団連の活動に影響する。1990年代以降、自民党の2度の下野時にはいずれも政治献金への関与を見直した。民主党政権から自民党政権に戻った第2次安倍晋三政権下では当時の米倉弘昌経団連会長と安倍氏の折り合いが悪く、政策決定への影響力を発揮できなかった。