石破茂首相(自民党総裁)が先の衆院選期間中、応援演説に駆け付けた与党候補者77人のうち小選挙区での勝敗は13勝63敗(残り1人は比例単独立候補で当選)と大きく負け越した。19人は比例復活当選を果たしたが、44人は落選。首相のセールスポイントとされる「国民人気」に疑問符がつく結果となった。
1万4000キロ移動も結果伴わず
「厳しい結果は自民党の改革姿勢に対する国民の厳しい叱責と受け止める」。投開票から一夜明けた28日、首相は記者会見で沈痛な表情で語った。首相は選挙戦初日の福島県を皮切りに、北海道や鹿児島県など延べ27都道府県で、自民が党独自の調査をもとに「接戦」や「劣勢」と判定された選挙区を訪れ、総移動距離は約1万4000キロに上った。
地域別では12日間の選挙期間のうち3日間を関西の日程に費やし、自民が推薦する公明党の候補を含め22人の演説会などでマイクを握った。大阪と兵庫で計6つの小選挙区の確保を狙う公明への配慮や、関西が地盤の日本維新の会が伸び悩んでいるとの分析が一部であったためとみられる。ただ、応援に入った関西の小選挙区での勝利は、公明候補を含めて4人にとどまり、結果が伴わなかった。
「勝負弱さ」露呈
最終日は東京都内の7選挙区を回ったものの、全289選挙区で最後に勝敗が決した東京10区の鈴木隼人氏の1勝しかもぎ取れなかった。選挙戦の最終演説地に選んだ東京15区の大空幸星氏ら3人を比例復活させることができたが、苦しい展開を強いられた。
また、首相は派閥パーティー収入不記載問題に絡み、「比例重複なし」と決めた旧安倍派や旧二階派の34人の候補者のうち旧安倍派の11人の選挙区にも応援に駆け付けた。首相はそれぞれの選挙区で「(不記載が)二度とないよう、深い反省のもとに選挙に臨む」などと陳謝した上で支持を呼び掛けたが、11人のうち勝利したのは兵庫3区の関芳弘氏のみ。「政治とカネ」を巡る逆風を跳ね除けることはできなかった。
「首相の応援で勢いはついたと思ったが、2千万円の問題は致命的だった」。終盤に首相の応援を受けた候補者はこうつぶやいた。首相はかねてより党内基盤の弱さが指摘される。選挙戦で接戦や劣勢の候補者を勝利に導くことができれば求心力がアップする好機でもあったが、結果的に「勝負弱さ」を露呈。執行部の責任問題を指摘する声もあり、今後も綱渡りの政権運営が続きそうだ。(當銘梨夏、飛松馨、大波加将太)