衆院選2024に関する全国紙の社説・コラム(2024年10月28・29日)

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開票を見守る自民党総裁の石破首相㊨と立憲民主党の野田代表。政権の座を争う激しい選挙になった(27日、東京都内) =共同

自公惨敗と日本政治 不信拭う改革が最優先だ(2024年10月29日『毎日新聞』-「社説」)
 
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自公党首会談で、公明党石井啓一代表(左)と政策合意書を交わす石破茂首相=国会内で2024年10月28日午後1時5分、平田明浩撮影
 日本政治の大きな転換点だ。衆院選で自民、公明の連立与党が15年ぶりの過半数割れに追い込まれ、「自民1強」の時代が終わりを迎えた。示された民意を踏まえて改革を進めることが急務である。
 衆院選の結果、自民は公示前の議席から65減の191まで落ち込んだ。現職閣僚2人に加えて閣僚経験者らも多く落選し、派閥裏金問題に関与した候補者も半数以上が議席を失った。「政治とカネ」の問題に対する国民の強い批判の表れだ。
 公明も公示前から8減の24と敗北した。石井啓一代表が落選したほか、「常勝」を誇ってきた大阪府内の4小選挙区で全敗した。
 石破茂首相は勝敗ラインとして自ら掲げた「与党で過半数」を達成できなかった。現政権が民意の信任を得られなかった形だ。政権トップとしての首相の責任は重大である。
弱体化した首相の基盤
 首相は衆院選から一夜明けた記者会見で、引き続き政権を担う意欲を示した。現下の経済情勢や厳しい安全保障環境の中で「国政は一時たりとも停滞が許されない」と強調した。
 自民は衆院の比較第1党に踏みとどまり、改めて政策合意を交わした公明とともに連立政権の継続を目指している。
 ただ、首相の政治基盤は極めて弱いものとなる。野党勢力衆院過半数を占めており、内閣不信任決議案が提出されれば可決される可能性がある。厳しい政権運営を迫られるのは間違いない。
 最優先で取り組まなければならないのは、抜本的な政治資金改革である。
 裏金問題を受けて政治資金規正法が改正されたが、依然として多くの抜け道が残る。次の臨時国会で再改正し、政治資金をガラス張りにしなければならない。
 不透明な政策活動費は、改正法では10年後に使途を公開することになった。自民は廃止に後ろ向きの姿勢を貫いてきた。
 だが衆院選の惨敗を踏まえて、首相は「党派を超えて速やかに実現する」と軌道修正を図ろうとしている。
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連合本部で芳野友子会長と会談後、記者の質問に答える立憲民主党野田佳彦代表=東京都千代田区で2024年10月28日午前9時26分、新宮巳美撮影
 野党が求めている企業・団体献金の廃止や、政治資金を監視する第三者機関の早期設置、国会議員に月100万円支給される調査研究広報滞在費(旧・文書通信交通滞在費)の使途公開などについても、早急に結論を得なければならない。
 権力者が「政治とカネ」を巡るルールを緩く設定し、自らの脱法的な行為を「違法ではない」と正当化する。裏金問題をきっかけとして、そうした自民党内の論理がいかに国民の常識とかけ離れているかが浮かび上がった。
 首相は改革にあたり「身内の論理は一切排除する」と約束した。だが、就任後に党利党略を優先してきた経緯を考えれば、実現性に疑問符がつく。
民意反映した熟議こそ
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議席の大幅増が確実となる中、当選確実となった立候補者のボードの前で撮影に臨む国民民主党玉木雄一郎代表(左)と榛葉賀津也幹事長=東京都新宿区で2024年10月28日午前0時59分、手塚耕一郎撮影
 与野党が伯仲する政治状況下では、緊張感ある論戦を通じて国民本位の合意を見いだすことが欠かせない。
 物価高などに対応する補正予算の必要性について、与野党の認識は一致している。年末には来年度予算案の編成も控える。
 衆院で自公が少数に陥る中で、首相は個別の政策ごとに野党の協力を得る「部分(パーシャル)連合」を模索する構えを示している。国民民主党日本維新の会などを念頭に置いたものだ。
 しかし、主張の違いを乗り越えるのは容易ではない。政権維持を優先する数合わせも、来夏の参院選を意識した党派対立のあおりで「決められない政治」に陥ることも避けなければならない。
 衆院選投票率小選挙区で53・85%で、戦後3番目に低い水準となった。選挙戦中には各党陣営から「有権者の熱を感じない」との声も相次いだ。
 約半数が投票権を行使しなかった事実からうかがえるのは、「選挙に行っても政治が変わるわけではない」と考える多くの有権者の姿ではないか。
 まずは、こうした根深い政治不信を払拭(ふっしょく)するための取り組みこそが求められている。
 衆院選の結果、国会が多様な民意を反映する構成となったことは健全な民主主義を取り戻すチャンスでもある。
 熟議を通して合意形成を図る議会政治のあり方を追求しなければならない。

「平等な選挙権と多数決の原則を組み合わせただけで…(2024年10月29日『毎日新聞』-「余録」)
 
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米国では選挙をめぐる支持者の対立が深まっている。写真は連邦議会を襲撃するトランプ前大統領の支持者たち=2021年1月6日、AP
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衆院選の結果を受けた記者会見で質問に答える石破茂首相=自民党本部で2024年10月28日午後2時17分、平田明浩撮影
 「平等な選挙権と多数決の原則を組み合わせただけで利益を平等に配分できるわけではない。勝者総取りのシステムでは恒久的な少数派を生む可能性もある」。そう指摘したのは米政治学者、マンスブリッジ博士だ
▲民主主義研究で知られる女性学者は話し合いや議論で最善の答えを見つける前に多数決で決着をつけようとする政治のあり方を「敵対的民主主義」と呼んだ。市民の利害が常に衝突していることを前提としているからだという
▲約40年前の著作からの引用だが、今の米国の政治状況はまさに「敵対的」に映る。女性の中絶の権利や銃規制などをめぐって民主、共和両党の議論がすれ違う。大統領選で勝利すれば、価値観まで決定権を握ることにつながりかねない
▲ともすれば日本でも「多数決が正義」の選挙万能主義がまかり通ってきた。1強体制ではなおさら「敵対的」な姿勢が目立った。自公過半数割れ衆院選は政治のあり方を再考する機会になりうる
▲野党は裏金問題で国民からノーを突きつけられた自民党との連立協議に消極的だ。石破茂首相が続投しても少数与党政権運営を迫られそうである。緊急課題の政治改革や予算編成も低姿勢で野党側の協力を仰ぐ必要がある。「敵対的」では立ち往生する
▲異なる意見に耳を傾け、立場を修正していく議論は「熟議民主主義」と呼ばれる。中露など権威主義国の台頭で民主主義の危機が叫ばれる今こそ従来型の政治の見直しが求められている。「熟議」の国会論戦が見たい。

自民歴史的大敗 首相は責任の重さを自覚せよ(2024年10月29日『読売新聞』-「社説」)
 
◆政権の枠組み作りが焦点となる◆
 国民に信を問うために断行した衆院解散・総選挙で大敗した以上、石破首相が取るべき道は明らかだ。政権に居座り、政局の混乱を長引かせることは許されない。
 速やかに進退を決することが憲政の常道である。
 衆院選の結果、自民、公明の与党の獲得議席は、首相が「勝敗ライン」とした「与党で過半数」には程遠い215議席だった。自民党は191議席にとどまった。
勝敗ラインには程遠く
 自民党が200議席を下回るのは、民主党に政権を明け渡した2009年以来で、自民結党以降でも2回目だ。今回は歴史的惨敗を喫したと言える。
 首相は、過半数割れ少数与党であっても、無所属で当選した議員らの追加公認や、一部野党の協力によって政権を維持しようとしている。選挙後の記者会見では「国政を進めていくことで職責を果たしていく」と述べた。
 首相が協力相手として想定しているのは国民民主党だ。国民民主は「対決より解決」を掲げ、予算案や法案の採決で自公と足並みを 揃 そろ えたこともあるため、連携が可能とみているようだ。
 だが、衆院選で敗れた首相が少数与党の体制で政権を維持できたとしても、国会では多数派の野党を相手に、必要な法案や政策を実現させていくことは困難で、混乱が長引くだけだ。
 首相は責任の重さを自覚し、判断を間違えてはならない。
 衆院選の敗因について首相が、「政治とカネの問題で国民の疑念、不信、怒りが 払拭 ふっしょく されていないことが最大の理由だ」と述べたのはその通りだろう。
 しかし、新政権が衆院選でとった戦術はちぐはぐで、ことごとく裏目に出たのも事実だ。
 そもそも首相就任前に、解散日程を表明したことは異例で、違和感を覚えた人は多かった。
ミス繰り返した執行部
 首相は自民党総裁選の最中、早期の解散に慎重な考えを示していたのに、首相に就任すると、予算委員会を開かず、戦後最短の日程での解散に踏み切った。
 こうした策を首相に進言したのは、総裁選で早期解散論を唱えていた小泉進次郎選挙対策委員長だとされている。
 首相交代直後の刷新感を武器に選挙を戦おうとしたようだが、これを受け入れたのは首相で、有権者には、誠実さに欠けるという印象を与えたに違いない。
 このほか、政治資金収支報告書に不記載があった前議員らを公認するか、非公認とするかを巡って執行部の方針は二転三転した。
 選挙戦最終盤には、非公認候補が代表を務める党支部に、自民党から公認候補と同額の2000万円を支給していたことが判明し、「非公認は見かけ倒しの処分だ」といった批判を招いた。
 石破政権がこれほど失策を繰り返していたら、支持を失うのも当然だ。執行部に責任を取らせて済む問題ではない。
 大敗した自民とは対照的に、立憲民主党と国民民主党は躍進した。自公に代わる受け皿としてみなされたのだろう。日本維新の会共産党議席を減らした。
 欧州では、エネルギー価格など物価高騰への不満から、自国第一主義を掲げた極右政党が伸長するケースが目立っている。
 今回の衆院選では急進的な主張をする勢力が一定の支持を集めたが、その広がりは限定的で、日本の有権者は、穏健な保守や中道路線を支持したとみて良かろう。新たな政権の枠組みは、そうした民意を反映することが望ましい。
 立民は、他の野党との多数派工作に力を入れ始めている。野田代表が野党を糾合し、政権交代を実現できるかどうかが焦点だ。
政策の一致は不可欠だ
 ただ、野田氏の足元は盤石とは言い難い。立民は、リベラル系や中道路線を支持する議員などの「寄り合い所帯」で、安全保障やエネルギーなど基本政策でさえ一致しているとは言えない。
 そうした現状で、他の野党と政策協議ができるのか。まずは立民内の基本政策をしっかりと固めることが不可欠だろう。
 野党各党で協力するにしても、理念や基本政策が 乖離 かいり した状態では、政権は安定しまい。実際、1993年に7党1会派で発足した細川連立内閣は、路線対立が絶えず、1年足らずで瓦解した。
 国際情勢は緊迫の度を強め、国内は少子化問題社会保障制度改革、経済再生など待ったなしの課題が山積している。各党もまた責任の重さを忘れてはならない。

国政の停滞回避へ各党は責任ある行動を(2024年10月29日『日本経済新聞』-「社説」)
 
 衆院選で自民、公明両党の与党が大敗し、過半数を割り込んだ。特別国会の首相指名選挙に向け、与野党で駆け引きが始まった。国内外に難しい課題が山積するなか、国政の停滞は許されない。各党の連携では、国民のためにいま必要な優先政策は何かという視点での責任ある行動を求めたい。
 自公の過半数割れ旧民主党政権が誕生した2009年の衆院選以来となる。自民は191議席、公明は24議席の獲得にとどまり、非公認扱いの当選者らを含めても過半数233に届かない。
政治の信頼回復が急務
 旧派閥の裏金問題に端を発し、自民党執行部による真相究明や再発防止策への及び腰の対応に強い不信感がうかがえる。選挙終盤には非公認候補が代表を務める党支部への2000万円の支給も判明。選挙資金ではないと説明したものの、野党は「裏公認だ。まったく反省がない」と批判した。
 石破茂首相(自民党総裁)は28日に記者会見し、敗因の筆頭に政治資金問題を挙げて「国民の疑念、不信、怒りが払拭されていない」と述べた。
 今後の対応では①政策活動費の廃止②調査研究広報滞在費(旧文通費)の使途公開と残金返納③資金を監査する第三者機関の早期設置――に言及した。政権継続をめざす意向を示したが、信頼回復への具体的な行動が欠かせない。
 野党第1党の立憲民主党は、獲得議席を公示前の98から148に伸ばして躍進した。28日の執行役員会では、首相指名選挙で野田佳彦代表に投票するよう野党各党に協力を求める方針を確認した。
 自公と立民はそれぞれ政権獲得に向けた働きかけを本格化する見通しだ。獲得議席を28に伸ばした国民民主党が連携先に浮上し、野党第2党で38議席を得た日本維新の会にも秋波を送る。ただし多数派の形成は党利党略ではなく、あくまで重要政策の実現を軸として進めるのが筋である。
 日本経済は30年近く続いたデフレの状態からようやく抜け出し、持続的な成長軌道に乗れるかどうかの分岐点にある。政治の混乱で補正予算や本予算の編成、重要政策の遂行が滞るような事態は、絶対に避けなければならない。
 何より、次の成長に向けて種をまく「賢い支出」を徹底すべきだ。脱炭素を新たな成長産業に育てるべく、再生可能エネルギーへの投資、半導体など最先端の製造業を振興するための投資に予算を重点的に配分する必要がある。
 各党の公約は、税や社会保険料の軽減とセットで家計や教育支援を打ち出す政策が目立った。物価高に苦しむ低所得層への支援は大切だ。だが高所得層も恩恵を受ける給付金やガソリン代、電気料金への補助といったバラマキ的な施策は一刻も早く見直すべきだ。
 新型コロナウイルス禍で膨らんだ財政を「平時」に戻さなければ、成長を後押しする分野に予算を回せないだけでなく、社会保障制度の維持や防衛力の増強に充てるお金も確保できなくなる。
 にもかかわらず、首相は選挙戦のさなかに突然「国費13兆円超え」の補正予算編成を表明した。きちんと積み上げて算出した数字とはとても思えず、選挙のために「まず規模ありき」で打ち出した方針と断じざるを得ない。
経済対策は中身重視で
 首相は28日の記者会見で「党派を超え、すぐれた方策を取り上げ、意義のある経済対策と補正予算を実施していくことが必要」と語った。野党の協力を得るために要求を丸のみし、中身の精査が不十分なまま予算規模が膨らむようなことがあってはならない。
 国債を安易に増発すれば、国と地方の基礎的財政収支を25年度に黒字化する目標の実現は危うくなる。あくまで成長と財政健全化の両立を探るべきである。
 自民党は07年夏の参院選で敗北し、そこから旧民主党への政権交代を経て不安定な政治状況が6年にわたって続いた。衆参の多数派が異なる「ねじれ国会」で重要政策が停滞し、短命政権が続いて経済の低迷に拍車をかけた。
 当時は外交・安全保障政策の混乱も深刻だった。日米同盟がきしみ、中国やロシア、北朝鮮覇権主義的な動きを助長した。あの失敗を繰り返してはいけない。
 衆院選での立民や国民民主の大幅な議席増は、中道保守の考え方への支持の表れでもある。経済運営や社会保障改革、地方活性化や憲法改正を含めて、各党が建設的に話し合える余地は大きいといえる。与野党議席が接近したいまだからこそ、熟議で解決できる課題は多いはずだ。

国民の審判 首相の居座りは許されぬ 直ちに辞職し新総裁選出を(2024年10月29日『産経新聞』-「主張」)
 
 衆院選で大敗を喫した石破茂首相(自民党総裁)が28日の記者会見で、引き続き政権を担う意欲を示した。
 自身が設定した与党過半数という勝敗ラインを割り込む大敗の責任をとらずに、石破首相が政権に居座ろうとするのは信じがたいことだ。責任をとって潔く辞職すべきである。
 自民は比較第一党に踏みとどまった。友党の公明党とともに政権構築を目指すのは分かるが、それは国民の信を失った石破総裁の下ではありえない。自民は速やかに総裁選を実施し、新総裁と新執行部が他党と交渉するのが望ましい。
本当に反省しているか
 石破首相は会見で、衆院選の審判を「真摯(しんし)に厳粛に受け止める」と語った。だがその言葉とは裏腹に、「国政の停滞は許されない」と繰り返し、「安全保障、国民生活、災害対応に万事遺漏なきを期すことも私どもが負うべき責任だ」と述べた。
 そこには反省が感じられない。国民は衆院選で石破首相に国政運営を託したくないという判断を示した。それがなぜ分からないのか。
 有権者の審判を無視するトップが政権の座にとどまろうとして国民の支持を得られると思うなら甘すぎるし、民主主義から外れている。全ての自民国会議員は、石破首相の続投こそが、国政の停滞を招くと知るべきである。
 自民の小泉進次郎選対委員長は28日、「選挙の結果責任は選対委員長が引き受ける」として辞任した。小泉氏は自身の進退について「目標を達成できなかったのに責任をとらない自民党では、不信感の方が大きいと思う」と語った。これは石破首相、森山裕幹事長にこそいえることである。
 自民千葉県連会長の桜田義孝元五輪相は「議席をあれだけ減らした。責任はある」と述べ、首相や執行部の早期退陣を促した。これが国民感覚に沿った判断だろう。
 石破首相は、第1次安倍晋三政権時の参院選で自民が大敗し「ねじれ国会」となった際に、続投を表明した安倍首相を攻撃した。党総務会で「(安倍)首相は『私か小沢一郎民主党代表かの選択だ』と訴えたのに、どう説明するのか」と非難した。代議士会では「首相は『反省すべきは反省する』といっているが、何を反省し、どう改めるのかはっきりしてほしい」と責め立てた。
 同じことを石破首相に問いたい。28日の会見で「自民党は心底から反省し、生まれ変わらなければならない」と語ったが、トップである自身がまず責任をとるべきだろう。
 麻生太郎政権時に農林水産相だった石破首相は、事実上の退陣を迫ったこともある。過去の言動との整合性がなければ、石破首相への信頼は集まらない。首相の言葉は限りなく軽いものとしてしか受け取られまい。
森山幹事長も責任重い
 他人に厳しく自分に甘い、主権者である国民の審判を軽んじる。そこに謙虚さは見当たらない。このようなありさまで与党は特別国会の首相指名選挙に確実に勝てるのか。よしんば勝ったとしても、自民党内からは辞任論が出て、石破首相の求心力は低下している。安定した政権運営ができるのか。
 森山幹事長の責任も重い。選挙戦最終盤には、自民が非公認にした候補が代表を務める政党支部に活動費2千万円を支給したことが報じられ、「政治とカネ」を巡る批判に拍車をかけた。石破首相は「選挙に使うことはない」と述べたが説得力に乏しかった。支給を主導したのは森山氏だったとされる。
 石破首相の就任後に、臨時国会予算委員会を開かず早期に解散するよう進言したのも森山氏である。首相と森山氏は衆院選を有利に展開しようと党利党略に走ったが、思惑外れに終わった。
 政府与党は首相指名選挙を行う特別国会を11月11日に召集する方向で調整している。だが、憲法第54条は衆院選投票日から30日以内の召集を定めている。ことさら引き延ばすことはあってはならないが、国会議員中心の自民総裁選を実施するくらいの日程的余裕はある。
 自民は新総裁を選び、出直しを図らねば信頼回復は遠く、来年の参院選でも有権者から厳しい審判を受けるだろう。石破首相が今、日本と国民、党のためにできることは速やかに辞任することしかない。

「ひいきの政党」が見つからず天下大乱へ(2024年10月29日『産経新聞』-「産経抄」)
 
 「選挙とは、端的にいえば『ひいきのチーム』や『ひいきの候補者』に一票を投じる行為です。『ひいきの候補者』とは、いま風にいえば『推しメン(推薦したいメンバー)』かな」。文芸評論家の斎藤美奈子さんは著書の『学校が教えないほんとうの政治の話』で述べている。
▼どうやら多くの有権者は「ひいきの候補者」を見つけられなかったようだ。27日に投開票が行われた衆院選投票率は、小選挙区で53・85%にとどまり、戦後3番目の低さだった。
投票率の低下は組織力が自慢の自民党に有利に働く。そんな「法則」は今や通用しない。自民党は公示前の議席を大幅に下回り、連立政権を組む公明党と合わせても過半数に届かない大敗を喫した。
▼もともと政治とカネの問題により、自民党に逆風が吹くのは予想されていた。それでも当落線上に踏ん張っていた候補者を奈落の底に突き落としたのが、共産党機関紙「しんぶん赤旗」のスクープ記事である。
▼派閥パーティー収入不記載をめぐって衆院選で非公認となった候補が支部長を務める政党支部へ、自民党から2千万円が支給されていた事実をすっぱ抜いた。石破茂首相の温情だったとしても「裏公認料」だと野党を勢いづかせた罪は大きい。非公認の候補者にとっては、とんだ「ありがた迷惑」となった。まさに「ひいきの引き倒し」である。
▼ひいきを漢字で書くと贔屓となる。『角川大字源』によれば、亀の一種という意味もある。重い物を背負うことを好むといわれるので、石牌(せきはい)の台の亀をいう、とも。選挙の結果を受けて、自民党内では石破首相への怒りの声が渦巻いている。政治の安定を支えてきた亀はもはや存在しない。天下大乱の始まりである。

自民1強終焉 熟議の政治を取り戻せ(2024年10月29日『東京新聞』-「社説」)
 
 衆院選では自民、公明の与党が過半数を割る一方、野党第1党の立憲民主党過半数勢力を結集するに至っていない。「自民1強」の終焉(しゅうえん)とも言える与野党伯仲。幅広い合意形成なくして政策を遂行できない状況を、熟議の政治を取り戻す好機に転じるべきだ。
 与党惨敗を受け、自民党内には党総裁たる石破茂首相の責任を問う声が出ている。自ら掲げた与党過半数の目標を下回った以上、退陣論が出るのはやむを得まい。
 ただ、石破氏は28日の記者会見で「国政の停滞は許されない」と続投する意向を表明。自公連立の枠組みは変えず、野党とも「よく協議する」と述べた。
 政治改革や経済対策に野党の意見を取り入れて政権を継続することは一手段だが、仮に続投しても少数与党なら、いつでも内閣不信任決議案が衆院で可決され得る。政権運営にはこれまで以上の緊張感が必要となろう。
 議席を大幅に増やした立民の野田佳彦代表は、11月に召集される特別国会で「首相指名を取りにいく」として首相指名選挙では自身に投票するよう各野党に呼びかける考えを示した。
 日本維新の会、国民民主の両党は自公連立への参加は否定しているが、野田氏への投票に合意する道筋も見えてはいない。
 立民は自公過半数割れの目標は達成したが、擁立作業の遅れから候補者数はかろうじて過半数にとどまり、野党間の候補者調整も不十分だった。政権準備が不足していたことは残念でならない。
 首相指名選挙は1回目の投票で誰も過半数に達しない場合、上位2人の決選投票となり、比較多数を得た議員が首相になる。現状では自公両党の推す衆院議員が首相になる可能性が高いが、不安定な政権運営を強いられるだろう。
 10年以上の「自民1強」の下、法律や政権の重要方針が国会での十分な議論や国民の幅広い理解なく決まった例は多い。安定政権の驕(おご)りは裏金事件に象徴される政治腐敗を生んだ。円安・物価高が続いて実質賃金は上がらず、暮らしは上向いていない。だからこそ、有権者衆院での与野党伯仲の状況を選んだのだろう。
 異なる主張の党派が議論を尽くして合意を探るのが議会制民主主義だ。政策決定に時間がかかっても丁寧に議論し、一歩ずつ前に進む政治の復権を望みたい。

首都圏の衆院選 裏金・教団に厳しい審判(2024年10月29日『東京新聞』-「社説」)
 
 衆院選で自民、公明の与党は、首都圏でも大幅に議席を減らした。各都県で低下した投票率からは政治不信や政治離れの深刻さもうかがえる。裏金事件に象徴される政治腐敗と決別し、政治への信頼回復に努めなければならない。
 首都圏1都6県の小選挙区比例代表(東京、北・南関東ブロック)の獲得議席自民党が65にとどまる一方、立憲民主党58、国民民主党10と躍進。公明党日本維新の会共産党は伸び悩んだ。
 自民党が裏金問題で非公認とした6人中、下村博文・元文部科学相(東京11区)ら4人が落選。公認されたが比例重複できなかった8人のうち丸川珠代元五輪相(同7区)ら4人が議席を失った。
 有権者が裏金に下した厳しい審判にほかならない。非公認候補の党支部に公認候補と同額の2千万円が税金から支給されたことも、市民感覚からかけ離れていた。
 非公認ながら当選した萩生田光一経済産業相(同24区)らは選挙戦で自身の政治資金を透明化すると訴えた。口先だけでなく、確実に実行されるか注視したい。
 旧統一教会(世界平和統一家庭連合)と接点のあった現職閣僚の牧原秀樹法相(埼玉5区)、山本朋広元防衛副大臣(神奈川4区)は落選。山際大志郎元経済再生担当相(同18区)は小選挙区で落選し、比例で復活当選した。高額の献金被害を放置し、教団と密接な関係を続けたことに、有権者が厳しい判断を下したのは当然だ。
 公明党も政権に対する逆風をかわしきれず、石井啓一代表(埼玉14区)が議席を得られなかった。
 一方、れいわ新選組は首都圏で3議席、参政党は1議席を得た。背景には、議員の世襲や業界団体・労働組合への依存など、古い政治体質への不満もあるだろう。
 衆院選の最大争点が、裏金問題に象徴される「政治とカネ」となったことは、政策を競い合うべき政権選択選挙の理念とは程遠い。
 東京都の小選挙区投票率が56・06%と前回から1・15ポイント下がるなど、投票率が軒並み低調だったことも気掛かりだ。
 子育て支援や物価高対策、あるべき社会保障と、暮らしに密着した課題の先送りは許されない。
 選ばれた議員や政党が衆院選で公約した政策を本気で実現しようとしているのか。私たち有権者は選挙が終わったこれからも、目を凝らし続ける必要がある。

1955年の総選挙で当時の鳩山一郎首相の民主党過半数を確…(2024年10月29日『東京新聞』-「筆洗」)
 
 1955年の総選挙で当時の鳩山一郎首相の民主党過半数を確保できなかった。少数与党である
▼政権を担う者にとって少数与党は悪夢だろう。野党の協力がなければ法案は成立しない上、不信任案が出れば、野党の賛成多数で可決される危険もある
民主党はこの状況をどう打破したか。自由党との保守合同を模索した。民主党三木武吉総務会長は長年の政敵、自由党大野伴睦総務会長を説得。2人は犬猿の仲だったが、国のため保守の大同団結をと涙ながらに訴える三木に大野も応じ「ともに力を合わせようではないか」-。いささか講談めく自民党結成の経緯である
▼その自民党が総選挙での大敗で少数与党に転落した。公明党と合わせても過半数は遠く、野党側の一部の協力を得なければ国会運営はにっちもさっちもいかない
▼石破首相が協力を求めたい相手は躍進した国民民主党で、政策ごとの部分連合を考えているそうだが、選挙中、政治とカネの問題で自民党をさんざん攻撃してきた玉木代表がおいそれと自民党に手を貸せるかどうか。日本維新の会にしても同じだろう
▼今回の野党側への説得は策士の武吉でも音を上げるか。そもそも自民党、「1強時代」にあぐらをかいて野党側の言い分に耳を貸さず一方的な国会運営が目立っていた。虫の良いお願いはかなうか。「驕(おご)り」のツケをここでも払わされている。


自公が衆院過半数割れ 「政治とカネ」に重い審判(2024年10月28日『毎日新聞』-「社説」)
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自民党開票センターで中継のインタビューに答える石破茂首相=同党本部で2024年10月27日午後10時9分、平田明浩撮影
 「政治とカネ」の問題にけじめをつけられない自民党に「ノー」を突きつける有権者の審判だ。変革を望む国民の期待を裏切る形となった石破茂首相への失望感の表れでもある。
 衆院選で、自民は単独では過半数議席(233)を維持できなかった。公明党も振るわず、与党としても過半数を割り込むことが確実となった。
 旧民主党に政権を奪われた2009年以来15年ぶりの事態である。「与党で過半数」を勝敗ラインと定めた首相の責任を問う声が出るのは避けられまい。
 自民の最大の敗因は、第2次安倍晋三政権以降に深刻化した政治のゆがみやおごりを、根本から正そうとしなかったことだ。
刷新できぬ首相に失望
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投票する有権者=東京都千代田区で2024年10月27日午前9時48分、三浦研吾撮影
 自民は不透明なカネを使って党勢を維持し、政権の座にあぐらをかいてきた。その象徴が派閥の裏金問題である。
 政治資金パーティー券収入のノルマ超過分を議員に還流させていた。政治資金収支報告書に記載せず、11人が立件された。使途公開の義務がなかった政策活動費も改めて問題視された。
 批判の高まりを受けて政治資金規正法が改正されたが、自民は改革に後ろ向きで、多くの抜け道が残された。
 数の力を頼みとして異論に耳を傾けない姿勢は、安倍政権時代に極まった。国論を二分した安全保障関連法の制定をはじめ、国会を軽視する独善的な政権運営が目についた。
 森友・加計両学園問題などの疑惑が表面化し、安倍氏の死去後には、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との深い関わりも明るみに出た。
 岸田文雄前首相は当初、「丁寧で寛容な政治」を掲げて軌道修正を図ろうとしたが、アベノミクスの継続など「安倍路線」に回帰した。だが、裏金問題で追い込まれて退陣した。
 後任の石破氏は党内野党的な立場だったことから、自民政治の旧弊を改めることが期待された。
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投票が終了し、ラジオ局のインタビューに答える自民党小泉進次郎選対委員長=東京都千代田区の同党本部で2024年10月27日午後8時3分、宮間俊樹撮影
 にもかかわらず、国会で予算委員会を開かず、十分に議論する場を設けないまま衆院を解散した。支持率が高いうちに選挙を乗り切ろうとする党利党略に走った。
 「政治とカネ」の問題でも消極的な姿勢が目立った。裏金に関与した前職らの一部を非公認としたものの、大半は公認した。非公認候補が代表を務める党支部政党交付金から2000万円を支給していたことも発覚した。
 自民はこれまで、表紙をすげ替えて刷新感をアピールすることで危機を乗り越えてきたが、今回はそうした「疑似政権交代」にさえ当たらないと、国民から見透かされたのではないか。
 野党第1党の立憲民主党が躍進したのは、反自民の民意の受け皿となったからだろう。
与野党伯仲で緊張感を
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立憲民主党の開票センターで当選確実となった候補者の名前を張った野田佳彦代表=東京都千代田区で2024年10月27日午後8時54分、和田大典撮影
 立憲は安定感を重視し、旧民主党時代の首相経験者である野田佳彦氏が代表に就任した。従来の支持層であるリベラル系だけでなく、中道や保守層の支持獲得も狙う現実路線を打ち出した。
 「政権交代こそ、最大の政治改革」とのスローガンを掲げ、「政治とカネ」の問題を争点に据える戦術が奏功した。自民の敵失に助けられた面は否めないが、国会での存在感の高まりに見合った責任を果たすべきだ。
 今回の総選挙では、暮らしの不安を解消する議論は深まらなかった。各党の物価高対策は具体性を欠いたままだ。
 自民や立憲は最低賃金の引き上げや給付の拡充に言及したが、中小企業の生産性を高める方策や財源の裏付けは明確ではない。社会保障制度の持続性を高める道筋も示されなかった。
 11月の米大統領選の結果が国際情勢に及ぼす影響は見通せず、外交・安保戦略も問われる。
 課題が山積する中、求められているのは政治の機能回復である。
 12年衆院選から続いてきた「自民1強」の構図が一変し、与野党伯仲の状況が生まれる公算が大きい。緊張感のある国会を求める民意の表れだろう。
 自民は独善的な振る舞いを改めて野党の意見に耳を傾ける。野党は監視機能を果たしつつ、実効性ある対案を示す。そうすれば国会論戦が活発化するはずだ。
 政治への信頼を回復し、国民の不安を取り除く。それこそが与野党に課せられた責務である。

「不幸に思えても幸運です…(2024年10月28日『毎日新聞』-「余録」)
 
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1票を投じる有権者長野市で2024年10月27日午前11時3分、鈴木英世撮影
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最後の街頭演説に立つ自民党総裁石破茂首相=東京都江東区で2024年10月26日午後7時49分、手塚耕一郎撮影
 「不幸に思えても幸運です」。なぐさめる妻に「紛れもない不幸だ」と答えたのは第二次大戦を連合国勝利に導いた英首相、チャーチルである。高い支持率を誇っていたが、1945年7月の英総選挙で保守党が大敗し、首相を辞した
ポツダム会談の場に戻れず公式声明では「対日戦争完遂を許されなかったことは残念」と語る一方、国民に「深い感謝の念」を表明した。有権者の関心が戦争から平和下の生活に移っていたといわれた
▲「皆さんの怒りや失望の声を聞きました。敗北の責任は私にあります」。こちらは7月の総選挙で労働党に歴史的敗北を喫した保守党のスナク前英首相の最終スピーチ。支持率低迷から起死回生を狙った早期解散の賭けに失敗した
▲スナク氏の「有権者に対する畏れの気持ち」を「すべての政治家が持つべき姿勢」と評価したのが石破茂首相だ。総裁選前、自身のブログに書いた。さて自国の有権者への「畏れ」はいかばかりのものか
▲27日の総選挙では自民党への厳しい審判が下された。裏金問題で支持率が低迷した岸田文雄前首相に代わって登場した石破氏だが、主張を覆して早期解散に踏み切るなど「豹(ひょう)変(へん)」が目立ち、期待感が急速に薄れた
▲2大政党制の英国と異なり、政治の行方は不透明だ。与党が大幅に議席を減らしても政権交代に可能な議席を得られなければ野党も勝者ではない。有権者の選択は「伯仲」ともいえる。伯仲下で機能する政治のあり方を模索することが「畏れ」の表し方だろうか。

衆院選自公惨敗 長期政権の驕りが不信招いた(2024年10月28日『読売新聞』-「社説」)
 
◆国政の停滞は避けねばならない◆
 自民、公明の与党が衆院選で惨敗し、過半数を割り込んだ。
 今後、一部の野党の協力を得て、引き続き自公が政権を担い続けられるのか。あるいは、立憲民主党を中心とした野党勢力政権交代を起こせるのか。政局は一気に流動化する情勢となった。
 また、「自公で過半数」を勝敗ラインに設定していた石破首相の進退も焦点となる。
 政局の流動化は確実
 第50回衆院選が開票された。
 自公は、2012年の政権復帰以降、経験したことのない逆風にさらされた。大幅な議席減は、政治とカネの問題に象徴される、長期政権の 驕 おご りや緩みに対する国民の不信感を反映した結果と言えるのではないか。
 一方、多くの野党は議席を増やしたが、理念や基本政策の異なる各党で協力できるかは見通せない。自公、立民それぞれが過半数確保に向け、多数派工作を繰り広げることになりそうだ。
 与野党の勢力が伯仲することで、予算案や法案を巡る攻防が激化して政策遂行が遅れる事態が懸念される。実際、07~08年の福田内閣当時は、野党が国会運営を主導し、国政が停滞した。
 今後、政権の枠組みを巡って与野党が駆け引きを繰り広げ、混乱が長引く可能性もある。山積する内外の難題に適切に対応できるのか。与野党ともに大きな責任を負うことになった。
 今回の衆院選は異例ずくめだった。石破政権が内閣発足直後の「ご祝儀相場」を当て込み、戦後最短での衆院解散に踏み切った。
 だが、自民党は、政治資金問題を抱えた前議員らの処遇を巡り、原則として全員を公認する方針が批判されると、非公認を次々と増やし、定見のなさを露呈した。
 選挙戦の終盤には、非公認となった候補が代表を務める党支部に対し、党本部が公認候補向けと同額の2000万円を支給していたことも発覚し、混乱を広げた。執行部の失態と言うほかない。
 自民が苦戦した背景には、「岩盤」と呼ばれた保守層の支持が離れたこともあるのではないか。
 岸田前首相が昨年、性的少数者(LGBT)理解増進法の成立に急に 舵 かじ を切ったことや、総裁選での選択的夫婦別姓の議論に反発する支持者は多かった。
 こうした政策に反対してきた参政党や、政治団体・日本保守党が一定の支持を集めたのは、自民に不満を持つ保守層を引きつけることに成功したからだろう。既成政党に対する不信感が、新興勢力を勢いづけている側面もある。
 現実的な主張が奏功か
 先月、15年ぶりに党首が交代した公明も厳しい選挙戦となった。小選挙区選に初めて挑戦した石井新代表が落選したのは、支持母体の創価学会員の高齢化が影響しているとされる。
 一方、立民の伸長は、自民の「金権体質」を争点化する手法が奏功したことが一因だ。
 また、野田代表は、仮に政権交代が実現したとしても、現在の安全保障政策を 概 おおむ ね継承する考えを示したほか、原子力発電を含むエネルギー政策について、党の綱領で定めた「原発ゼロ」にこだわらない方針を強調した。
 こうした現実的な主張が有権者に安心感を与えたようだ。
 国民民主党も躍進した。玉木代表が「手取りを増やす」と主張して、「生活重視」の姿勢をとったことが、特に若い世代の支持拡大につながったのだろう。
 日本維新の会が伸び悩んだのは、大阪・関西万博の会場建設費が想定以上に膨らんだことや、推薦した前兵庫県知事のパワハラ疑惑が影響したとみられる。
 他方、選挙戦で政策論争が深まらなかったのは残念だ。

自民不信を突きつけた厳しい審判(2024年10月28日『日本経済新聞』-「社説」)
 
 政治とカネの問題で自民党に厳しい審判が下った。第50回衆院選は27日投開票され、自民、公明両党は過半数を大きく下回り敗北した。自公は政権に復帰した2012年以来の岐路に立った。
 石破茂首相らの責任論は避けられない。自公は野党に協力を求めて政権を継続する方針だ。立憲民主党は躍進し、多数派の形成に向けて野党各党と協議に入る。政局は流動化し、政権の枠組みがみえない不透明な状況になった。
世界の潮流が波及
 自民は公示前の247議席から大きく減らし、下野した09年以来の敗北となる。接戦だった多くの小選挙区で競り負け、閣僚経験者や政治資金の不記載で非公認となった無所属前職ら有力議員の落選が相次いだ。
 公明も石井啓一代表が落選したのをはじめ、牙城である関西で苦戦するなど、公示前の32議席を下回った。
 立民は公示前の98議席から大幅に議席を伸ばした。保守系野田佳彦元首相を代表に据えたことで、自民支持から離反した保守層の受け皿になったとみられる。自民との議席差を一気に縮める結果は、政権交代への足がかりを築いたといってよいだろう。
 自民の敗因が政治資金問題にあるのは明らかだ。私たちは当初から「政治とカネの問題は、扱いを誤れば政権の命取りになる」と指摘してきた。だが自民は生ぬるい対応に終始し、有権者の不信感をぬぐうことはできなかった。
 与党の敗北は世界的な潮流でもある。選挙イヤーの今年、各国で相次いだ現職や与党に逆風が吹く流れが日本にも及んできたといえよう。物価高や賃金、雇用など身近な課題に既存の政治が十分対応できず、有権者がノーを突きつける構図だ。 政治資金のずさんな管理が物価高に耐える国民の不満を増幅したとみるべきだろう。
 選挙戦の争点が政治とカネの問題に集中し、政策論争が深まらなかったのは残念だ。物価上昇を上回る所得向上への道筋や社会保障の給付と負担の見直し、人口減少に伴う地方創生のあり方などは、どんな政権であっても重要課題として取り組まざるをえない。
 日本の政治の安定が損なわれることになれば、対外的に大きなマイナスだ。米大統領選の行方が見通せないなか、日米同盟や日韓関係の不安定要因にならないよう注意する必要がある。日米韓の連携が動揺し、中国や北朝鮮、ロシアに対日政策の軽視や周辺地域での過激な行動を誘発する事態は避けなければならない。
 政治の安定は海外から日本にヒト、モノ、カネを呼び込む誘因の一つでもある。政局が混迷すれば、日本への投資を控える動きにつながる懸念がある。ようやく成長軌道に乗りつつある経済に水を差すことがあってはならない。
 そのためにはできるだけ早く安定した政権基盤を取り戻すほかない。自公は過半数を割っても一部の野党と連携することで政権を継続したい考えだ。連立政権の枠組みへの野党勢力の参加も視野に入れるが、現時点で野党側に自公連立に加わる動きはない。
熟議を取り戻す契機に
 一方、立民は非自民勢力の結集に向けて野党各党と協議する意向だ。ただ、どのような枠組みで政権をめざすのか、具体的な政権構想はこれからで、成否はまだ見通せない。
 自民と立民の議席差が大幅に縮まったことで、衆院選後に開かれる特別国会での首相指名選挙に向け、両陣営の攻防が激しくなる。国民民主党日本維新の会などとの連携をめぐる綱引きも予想される。政権の枠組みが見えてくるには時間がかかりそうだ。
 与野党の伯仲は政治のあり方として悪いことではない。政権交代をめざす立民の伸長は国会審議に緊張感を与える。
 中道保守の第1党と第2党が熟議を通じ、重要課題を解決するのは政治の一つの知恵である。立民にとっては政権担当能力を磨く場となり、政権への近道になるはずだ。対外的にも日本の政治の安定と成熟を示すことになろう。
 ウクライナ戦争や中東情勢は緊迫の度を増している。与野党とも内向きの政争に陥るのではなく、国内外の情勢に目を向け、国際社会で求められる日本の役割を自覚して安定した政治を取り戻すことを急ぐべきである。

与党「過半数割れ」 審判を重く受け止めよ 安定した政権の構築を求める(2024年10月28日『産経新聞』-「主張」)
 
 第50回衆院選の投開票が行われた。政権の信を問うと臨んだ石破茂首相は勝敗ラインに自民党公明党の与党過半数を設定していたが、届かなかった。立憲民主党は躍進し、国民民主党議席を伸ばした。
 自民にとって野党に転落した平成21年の衆院選以来となる歴史的敗北だ。首相は選挙結果を重く受け止めねばならない。
 今後自民は非公認当選者の追加公認を図る見通しだ。
国際情勢は厳しく、混迷の度合いを増している。今後、特別国会で首相指名選挙が行われるが、各政党は安定政権を作るべく努力してもらいたい。国政を停滞させてはならない。
言い訳選挙では勝てぬ
 今回の大敗は、石破首相と自民執行部が「言い訳選挙」にしてしまったことが大きい。言い訳選挙で優勢に戦うことなど望むべくもない。
 自民の旧安倍派などの派閥パーティー収入不記載事件への有権者の怒りはくすぶっていた。それにうまく対応できなかったのが首相だった。就任後、不記載の前議員の非公認を増やし、比例代表との重複立候補を認めなかった。
 しかも一気に事を決めず騒動を続けた。世間の関心が「政治とカネ」一色になったのはそのせいでもある。
 選挙戦最終盤には自民が、非公認にした候補が代表を務める政党支部に活動費2千万円を支給したことが報じられ、首相は党勢拡大のためで「選挙に使うことはない」と釈明した。
 これも有権者の投票行動を左右した可能性がある。有権者や他党からどう見られるかを考えなかった石破首相や森山裕幹事長には、自民内から疑問の声が上がった。
 石破首相は高市早苗前経済安全保障担当相との協力関係構築にも失敗し、閣僚人事で挙党体制を作らなかった。自民の岩盤支持層の離反を招き、票が日本保守党や参政党などへ流れた。国会論戦も十分に行わず早期解散に走った。これで勝てると思っていたのなら信じがたい。
 衆院選で政治とカネの問題への有権者の憤りが改めて示された。各党は政治改革の具体策で合意し、速やかに実行に移すべきだ。それを怠れば政治不信に拍車がかかる。
 言い訳選挙になったのは、もう一つ理由がある。それは、石破首相が政治とカネの問題を上回る、または匹敵するような政策上の大きな争点を国民に示せなかったことだ。
 衆院選は常に日本の独立と繁栄、国民の生活と暮らしがかかった、日本の針路を決める政権選択選挙なのである。にもかかわらず日本の針路を巡る本格的な論戦は展開されなかった。とりわけ日本を守る安全保障が重視されなかったのは残念だ。
立民は国を守れるのか
 台湾有事の懸念が高まっている。公示の前日には、中国軍が台湾を包囲する形で大規模な演習も行った。今回の衆院選で選ばれた議員が台湾有事に直面する可能性がある。北朝鮮の軍はウクライナ侵略に加担する見通しだ。朝鮮半島有事がロシアを含む日本有事へ拡大することもあり得る。
 その危機が十分には語られず、抑止力のための防衛力の抜本的強化、国民保護などの具体策の議論が深まらなかったのは問題だ。
 立民の影響力は増大する。野田佳彦代表は外交・安保政策の継続性を重視する考えを示す一方で、集団的自衛権の限定行使は憲法違反という党の立場を変えていない。反撃能力の保有にも積極的ではない。
 これで国民を守れるのか。この政策では日米同盟を危機に陥れた旧民主党政権の二の舞いになる恐れがある。政策上の欠陥を抱えたままの立民に政権担当能力があるのか疑問だ。
 経済を巡っては、各党がこぞって消費税減税や給付金支給などの物価高対策を示した。だが財源を含む具体化の道筋にはあいまいなものが多く、バラマキ色が目立った。物価高に負けない賃上げを果たし、デフレからの完全脱却を確実にするには、生産性を向上させて企業の収益力を高める取り組みが欠かせない。そうした積年の課題を解決しなければならない。
 憲法改正の動きを後退させてはならない。自民の大敗に加え、改憲に前向きな日本維新の会が振るわなかった影響は大きい。自衛隊明記や緊急事態条項の創設は急務で、国会は改憲原案の条文化を進めるべきだ。

与党「過半数割れ」 審判を重く受け止めよ 安定した政権の構築を求める(2024年10月28日『産経新聞』-「産経抄」)
 
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取材に応じる自民党総裁石破茂首相=27日午後、東京・永田町の党本部(岩崎叶汰撮影)
 第50回衆院選の投開票が行われた。政権の信を問うと臨んだ石破茂首相は勝敗ラインに自民党公明党の与党過半数を設定していたが、届かなかった。立憲民主党は躍進し、国民民主党議席を伸ばした。
 自民にとって野党に転落した平成21年の衆院選以来となる歴史的敗北だ。首相は選挙結果を重く受け止めねばならない。
 今後自民は非公認当選者の追加公認を図る見通しだ。
 国際情勢は厳しく、混迷の度合いを増している。今後、特別国会で首相指名選挙が行われるが、各政党は安定政権を作るべく努力してもらいたい。国政を停滞させてはならない。
言い訳選挙では勝てぬ
 今回の大敗は、石破首相と自民執行部が「言い訳選挙」にしてしまったことが大きい。言い訳選挙で優勢に戦うことなど望むべくもない。
 自民の旧安倍派などの派閥パーティー収入不記載事件への有権者の怒りはくすぶっていた。それにうまく対応できなかったのが首相だった。就任後、不記載の前議員の非公認を増やし、比例代表との重複立候補を認めなかった。
 しかも一気に事を決めず騒動を続けた。世間の関心が「政治とカネ」一色になったのはそのせいでもある。
選挙戦最終盤には自民が、非公認にした候補が代表を務める政党支部に活動費2千万円を支給したことが報じられ、首相は党勢拡大のためで「選挙に使うことはない」と釈明した。
 これも有権者の投票行動を左右した可能性がある。有権者や他党からどう見られるかを考えなかった石破首相や森山裕幹事長には、自民内から疑問の声が上がった。
 石破首相は高市早苗前経済安全保障担当相との協力関係構築にも失敗し、閣僚人事で挙党体制を作らなかった。自民の岩盤支持層の離反を招き、票が日本保守党や参政党などへ流れた。国会論戦も十分に行わず早期解散に走った。これで勝てると思っていたのなら信じがたい。
 衆院選で政治とカネの問題への有権者の憤りが改めて示された。各党は政治改革の具体策で合意し、速やかに実行に移すべきだ。それを怠れば政治不信に拍車がかかる。
 言い訳選挙になったのは、もう一つ理由がある。それは、石破首相が政治とカネの問題を上回る、または匹敵するような政策上の大きな争点を国民に示せなかったことだ。
 衆院選は常に日本の独立と繁栄、国民の生活と暮らしがかかった、日本の針路を決める政権選択選挙なのである。にもかかわらず日本の針路を巡る本格的な論戦は展開されなかった。とりわけ日本を守る安全保障が重視されなかったのは残念だ。
立民は国を守れるのか
 台湾有事の懸念が高まっている。公示の前日には、中国軍が台湾を包囲する形で大規模な演習も行った。今回の衆院選で選ばれた議員が台湾有事に直面する可能性がある。北朝鮮の軍はウクライナ侵略に加担する見通しだ。朝鮮半島有事がロシアを含む日本有事へ拡大することもあり得る。
 その危機が十分には語られず、抑止力のための防衛力の抜本的強化、国民保護などの具体策の議論が深まらなかったのは問題だ。
 立民の影響力は増大する。野田佳彦代表は外交・安保政策の継続性を重視する考えを示す一方で、集団的自衛権の限定行使は憲法違反という党の立場を変えていない。反撃能力の保有にも積極的ではない。
 これで国民を守れるのか。この政策では日米同盟を危機に陥れた旧民主党政権の二の舞いになる恐れがある。政策上の欠陥を抱えたままの立民に政権担当能力があるのか疑問だ。
 経済を巡っては、各党がこぞって消費税減税や給付金支給などの物価高対策を示した。だが財源を含む具体化の道筋にはあいまいなものが多く、バラマキ色が目立った。物価高に負けない賃上げを果たし、デフレからの完全脱却を確実にするには、生産性を向上させて企業の収益力を高める取り組みが欠かせない。そうした積年の課題を解決しなければならない。
 憲法改正の動きを後退させてはならない。自民の大敗に加え、改憲に前向きな日本維新の会が振るわなかった影響は大きい。自衛隊明記や緊急事態条項の創設は急務で、国会は改憲原案の条文化を進めるべきだ。

自公が過半数割れ 民意は政治腐敗拒んだ(2024年10月28日『東京新聞』-「社説」)
 
 衆院選が投開票され、自民、公明の与党が過半数の233議席を割り込んだ。自民党が派閥の裏金事件に自らけじめをつけなかったことに対し、民意は政治腐敗を明確に拒んだと言える。国会は政治への信頼回復に最優先で取り組まなければならない。
 衆院選の最大の争点は「政治とカネ」だった。本来、私たちの暮らしに関わる政策実現を巡って与野党が政権を争うべきだが、裏金事件は政策遂行の前提である政治への信頼を揺るがした。自民党が生まれ変わる可能性にかけるのか、野党の議席を増やして政治を変えるのか。その選択を有権者に求めたのは自民党自身である。
 自民党内では、9月の総裁選で党の「刷新感」を国民に印象付けた後、新内閣の支持率が高いうちに衆院を解散し、議席減を最小限にとどめる戦術が早くから語られていた。こうした思惑は、総裁選への再選出馬を断念した当時の岸田文雄首相も、後継を争った候補者9人も共有していた。
◆石破首相の変節に疑念
 石破茂総裁(首相)は総裁選の期間中、衆院を早期に解散するにしても、国会論戦を通じて国民に十分な判断材料を提供してからという考えを示していた。だが、長く「党内野党」だった石破氏の正論は、総裁に就任した途端に霧消した。戦後最短となる首相就任から8日後の解散は党内の大勢に流されたからにほかならない。
 石破氏の変節は、誰が総裁になっても自民党は変わらないという疑念を有権者に抱かせた。自民党皮算用は完全に外れ、石破内閣は低水準の支持率で発足。そもそも、新内閣の人気がうせないうちに、という発想自体が国民を甘く見ていたというほかない。
 裏金に関わった非公認候補の党支部に活動費2000万円を支給したことが、カネにものをいわせる自民党の体質は変わらないと見透かされる決定打になった。裏金に厳しく対処したと言いながら「裏金候補」に税金を原資とした政党交付金で支援すれば、有権者の怒りに油を注ぐのは明らかだ。
 自民党惨敗の責任を石破氏1人に帰することはできない。
 派閥から還流された政治資金パーティー収入を政治資金収支報告書に正しく記載しなかった前議員ら85人の責任は重大である。このうち46人が衆院選に立候補したこと自体が、本当に反省しているのかと有権者に疑わしく映った。
◆岸田政権の3年に審判
 衆院選結果は3年間の岸田政権に対する審判であることも忘れてはならない。発足間もない石破政権には何の実績もないからだ。
 裏金事件を巡っては、岸田氏は党総裁として主導した聞き取り調査で違法な資金づくりの経緯や使途といった実態をほとんど解明できなかった。そもそも岸田政権が裏金議員を厳しく処分しなかったことが、石破氏が衆院選公示の直前に非公認を追加する騒動につながったことは間違いない。
 岸田氏は故安倍晋三元首相の国葬を国会に諮らずに独断で決めた上に、安倍氏銃撃を機に浮上した自民党と旧統一教会(世界平和統一家庭連合)との関係を十分に調査せず、政策に影響があったのか否かを闇に葬った。教団と関係の深かった候補者に有権者が厳しい視線を向けたのは当然だ。
 安全保障を巡っても岸田政権は国会で議論を尽くさず、防衛関連予算の倍増や敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有を決め、憲法に基づく専守防衛を形骸化させた。防衛関連予算倍増の財源として増税を決める一方、突如、所得税・住民税の定額減税を実施するなど場当たりな経済運営も目立った。
 アベノミクスによる金融緩和の継続による円安・物価高は私たちの暮らしを直撃した。賃上げは物価高に追いつかず、実質賃金は長く低迷したままだ。
 安倍政権から現在に至る12年弱で暮らしが上向かず、自民党議員が国民に隠れて違法な資金に手を染めていたとなれば、有権者の厳しい審判が下るのは、民主主義の機能として当然である。
◆抜本改革の議論を急げ
 立憲民主党野田佳彦代表の下で議席を大幅に増やし、国民民主党も躍進した。まずは、自民党の裏金事件を断罪した民意を踏まえて、政治改革に向けた具体策の議論を急がねばならない。
 先の通常国会での政治資金規正法改正では、使途公開の必要がない政策活動費や金権政治の元凶とされる企業・団体献金の廃止は実現しなかった。
 こうした抜本改革を唱えてきたのは議席を大幅に増やした野党側だ。野党は小異を捨てて大同につき、国民の信頼に応えなければならない。それができなければ、どの政党が政権を担っても政治への信頼を回復することは難しい。

江戸後期の随筆「譚海(たんかい)」にこんな話がある。どこか…(2024年10月28日『東京新聞』-「筆洗」
 
 江戸後期の随筆「譚海(たんかい)」にこんな話がある。どこかの山の中に「風穴」と呼ばれる場所がある。広さ七間(約12メートル)というからかなり大きな穴である
▼この穴の中に石を投げ入れると不思議な現象が起きる。突然、風が吹き、何日もやまない。大きな石を投げ込むと、風はさらに強くなる
▼総選挙の結果に日本国中に吹き荒れる強い風を想像する。自民党の政治に腹をすえかね、よほど大きな石を風穴に投げた人がいるらしい。しかも、大勢の人が列をなして投げ込んだか。自民党は大敗した。「政治とカネ」の不祥事を受け、自民党に対し、はっきりと「ノー」を突きつける大風が吹いた。政権は大きく揺らいでいる
▼大風の出どころは「政治とカネ」の問題ばかりではあるまい。経済、社会保障少子化。長年、日本の抱える難問に成果もよい兆しも見いだせない自民党の政治に有権者はしびれを切らし、大きな変化と新たな道を求めたのかもしれぬ。将来の不安の中で自民党の政策もまた信用を大きく失っているのだろう
▼岸田さんが辞め、石破首相で総選挙に打って出ればご祝儀相場も手伝ってそれほどは負けないはず-。衆院解散前の自民党の見通しは甘く、強い大風が分からなかった。それもまた、おごりのせいである
▼風を吹かせたあの穴に最初に石を投げ込んだのは誰か。国民を侮り、緩んだ自民党自身に他なるまい。