自らが特別顧問を務める都民ファーストの会は独自候補を擁立せず、国民民主党を支援することを表明した。だが小池知事は国民民主党の候補の応援に入らず、時には同じ選挙区に立候補している与党候補の応援にすら出向いている。
はたしてその目的は何なのか。あるいは断念したと思われた“国政への野望”が、再び燃え始めたのか。それとも――。
■自民党東京都連との関係悪化→修復
「知事として都政を前に進めるにあたり、さまざまな要請活動などをし、また都と国との連携を図るということで、いろいろとキーパーソンの方々もおられる。そうした方々からのお願いがあり、できる限り応えることは、東京都にとっても意味があるということから応援に入らせていただいている」
自民党東京都連会長を務める井上氏は、小池知事にとってまさに“キーパーソン”にほかならない。自民党都連は今年7月の都知事選で小池知事を支援。29人の都議を擁する自民党は2021年の都議選から都議会第一会派となっており、小池知事にとって重視すべき存在だ。
しかし、小池知事と東京都連との関係は、最初から良好だったわけではない。
2016年の都知事選に小池知事が出馬したのは、自民党都連に対する不満が原因だった。「都議会のドン」の異名を持つ内田茂自民党都連幹事長(当時)らとの折り合いが悪かったため、小池知事は「都連はブラックボックス」と吐き捨てたこともあった。
だが、内田氏が2022年に亡くなり、“壁”はなくなった。2021年に都連会長に就任した萩生田光一氏は、旧統一教会問題の発覚でそれまで支持してくれた創価学会が離反。そこで公明党に近い小池知事を頼り始めた。
自民党は昨年12月の江東区長選では独自候補を擁立できず、小池知事が抜擢した大久保朋果元東京都政策担当部長(当時)に抱きつかざるをえなかった。今年1月の八王子市長選でも萩生田氏が擁立した初宿和夫元東京都人事委員会事務局長(当時)が野党系候補に追い上げられ、小池知事に応援に入ってもらって辛勝した。
■自民党との関係は「蜜月」と言えるほど
厳重な警備の中で集まった約300人の聴衆を前に、小池知事は木原氏を「政界の大谷翔平」と持ち上げた。木原氏が岸田政権で幹事長代理と政調会長特別補佐を兼任していたことを「二刀流」とし、投手としても打者としても超一流の大谷選手になぞらえた。
小池知事はその後、府中市に入り、30区に出馬している長島昭久氏を応援。同氏とは2017年に「希望の党」を結成した仲間でもあり、同年の都議選では小池知事が結成した都民ファーストの会の候補に長島氏がエールを送ったという関係もある。
一方で東京24区に出馬している萩生田氏には、ビデオメッセージを送るにとどめている。同氏が自民党の公認を得られなかったことで、応援の“ランク”を下げたようだ。
また福岡11区に出馬の武田良太氏にもメッセージを送り、東京7区に出馬の丸川珠代氏と宮城3区に出馬の西村明宏氏には、小池知事が自らオートコールに応援音声を吹き込んだ。3人は自民党の公認を得たものの、比例名簿には名前が掲載されなかったため、直接の応援は見送られている。
忘れてはならないのは、2016年の都知事選に初当選して以来の「友党」である公明党で、小池知事は衆院選の公示日である10月15日にJR三郷駅前まで出向き、埼玉14区に出馬している石井啓一新代表と手をとりあって連携をアピールした。
ならば東京都で出馬している国民民主党の候補たちへの応援はどうなるのか。「都内の候補であっても、当選可能性が小さければ優先順位が低い」ということだろうか。
また、「選挙サンデー」の10月20日には、東京29区に出馬している岡本三成政調会長の応援に駆け付け、「(岡本氏は)ゴールドマン・サックスで、40歳で執行役員。年収凄かったんだろうなあ」と岡本氏を大絶賛。「仕事の仲間があのドナルド・トランプというではありませんか」と感嘆して見せた。
■最後は舞台中央に躍り出た?
兵庫県では相手となる日本維新の会にいまいち勢いがなく、赤羽氏と中野氏が優勢と見られている。ここに芦屋市出身の小池知事が駆けつけるなら、華々しい“フィナーレ”になるに違いない。選挙戦当初こそ、息を潜めていた印象の小池知事だが、最後には舞台の中央に躍り出た。
選挙戦最終盤の10月23日、日本共産党の機関紙『しんぶん赤旗』は非公認候補へ2000万円が振り込まれていたことを報じた。またもや「金問題」が勃発だ。衆院選が終わると同時に自民党では、石破茂首相や森山裕幹事長、さらには小泉進次郎選対委員長の責任論が噴出することは間違いない。
安積 明子 :ジャーナリスト