日本のエネルギー 原発回帰か脱却か おひざ元での「論戦」状況は? 各党の公約もチェック(2024年10月25日『東京新聞』)

 
 日本のエネルギー政策は、原発依存を続けるのか、それとも脱却を目指すのか。衆院選では自民党派閥の裏金問題などに隠れがちだが、各党は原発推進から即時廃炉までそれぞれ公約を掲げる。ちょうど今年、将来の電源構成比の目標を示す国の次期エネルギー基本計画を策定する議論が始まった。選挙結果は、この議論にも影響を与える可能性があり、中長期の原発政策の分岐点にもなる。(荒井六貴)

衆院新潟4区では候補者3人が討論

 「再稼働させることに、賛成かそれとも反対か」
 東京電力柏崎刈羽原発新潟県)が立地する衆院新潟4区で16日、候補者3人の討論会が開かれた。出席したのは無所属前職の泉田裕彦(62)、自民党前職の鷲尾英一郎(47)、立憲民主党前職の米山隆一(57)の3氏。泉田氏と米山氏は県知事経験者だ。
 泉田氏は賛否を明言せず「不十分な避難しかできない状況を改善しなければならない」。鷲尾氏は「高い化石燃料を大量に輸入せざるを得ないことを考えると、再稼働は必要」。米山氏は「賛成でも反対でもない。県民に信を問うことが必須」と、それぞれ訴えた。
 討論会を主催した長岡市の長岡青年会議所の佐藤洸太理事長(37)は「再稼働を巡る住民の関心は高い。候補者の主張を知ってほしかった」と意図を説明した。長岡市原発30キロ圏内で、事故時の避難計画策定が義務付けられている。

敦賀2号機の福井、核燃サイクルの青森でも

 衆院選原発を巡る議論は、新潟4区のように再稼働が迫る原発が立地する選挙区や、再稼働を認められなかった日本原子力発電敦賀2号機(福井県敦賀市)がある福井2区、核燃料サイクル施設が林立する青森県の青森1区では候補者同士の論戦も比較的活発だ。
 他の地域では裏金問題や物価高対策などの陰に隠れがちだが、各党の公約や政策集を見ると、原発再生可能エネルギーをどうするのかが示されている。
 経済産業省では今年5月、約3年ごとに改定されるエネルギー基本計画を議論する有識者会合がスタート。来年3月までに、政府が掲げる2050年までの温室効果ガス排出ゼロを踏まえた電源構成のあり方が示される。岸田文雄前首相が原発の最大限の活用を掲げたことから、基本計画では、再稼働の推進と原発の新増設が明記されるかが焦点になっている。
 東電福島第1原発事故で福島県双葉町から埼玉県加須(かぞ)市に避難してきた女性(73)は「原発事故が忘れられたとは思わないが、私たちのような苦しみをもう味わってほしくない。再稼働するにしても、そういう苦労を含め(選挙戦で)議論してほしい」と望んだ。

 日本国内の原発 計35基あり、東京電力福島第1原発事故後にできた原発の新規制基準に基づき、原子力規制委員会による審査で適合と判断されたのは東電柏崎刈羽原発6、7号機など計17基で、うち再稼働したのは計12基。政府は現行のエネルギー基本計画で2030年度の電源構成の目標として原発を20〜22%と示す。実際は22年が5.5%。目標達成には30基程度の稼働が必要とされる。

 

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