◆娘はデイが大好きなのに…利用控え
「本当はもっと通わせたいが、利用料を2万円以下に抑えたいので、週3回くらいしか通わせていない」
長女(8)が放課後デイを利用する東京都北区の母親(42)は、サービスの利用控えをしている。「放課後デイで他の子やスタッフと触れ合うことで苦手だった自己主張ができるようになってきた。娘はデイが大好きなのに」
◆「親亡き後」に備え、貯金も必要
ただ、一定収入を超えると「一般2」の区分となり、月の利用料は最大3万7200円まで上がる。一般2に該当するのは、家族構成にもよるが、おおむね年収900万円超の世帯。一般1と一般2で利用料負担の差は、最大8倍になる。
同区で4人の子どもを育てる母親(45)の家庭も一般2の区分だ。特別支援学校に通う次男(8)は車いすを使い、医療的ケアも必要。共働きのため、平日週5日の放課後デイの利用が欠かせないが、夏休みの8月は昼食やおやつ代も含め、計4万5000円以上かかった。
「一般1と一般2の負担額の差はあまりにも大きい。将来の『親亡き後』に備えて貯金も必要で、生活に余裕はまったくない」と母親。衆院選では国民民主党が障害児福祉の所得制限撤廃を実績として訴えるほか、共産党も障害者サービスの利用料は所得制限をなくし無料にするとしている。母親は「障害児の子育ての大変さにもっと目を向けてほしい」と願う。
◆住む場所で策がバラバラ…「国が制限撤廃を」
この母親は、同じような思いを持つ2人の母親とともに先月「東京都北区 障害児福祉の所得制限の撤廃を求める会」を設立。SNSで課題を発信している。
東京都中央区や千代田区、神奈川県鎌倉市などは独自に放課後デイの利用を無償化しているほか、荒川区も一般2の世帯に半額を補助するなど負担軽減策を講じる自治体が広がる。同会も北区に、補助による負担額の軽減を求める要望書を提出する予定だが、「住む場所によって軽減策が異なるのは不公平。本来は国に所得制限をなくしてほしい」と訴えている。
放課後等デイサービス 児童福祉法に基づき、2012年に始まった制度。障害のある6〜18歳の子どもが放課後や休日に通う。生活能力の向上に必要な訓練や社会との交流の促進、保護者の支援などが目的。2023年12月時点で約35万人が利用している。