「今、選挙って言われてもピンとこんわ。先にやることあるやろ」
【写真まとめ】二重被災した孤立集落で見た爪痕
その山口、さらに舌鋒は鋭く「(国会議員たちが)何を考えているのか分かりません」と言い放った。もう1人の佐々木好子(84)もまた、「家が地震で壊され、豪雨で流されているとき、正直、選挙どころじゃないと思う」と、永田町のご都合主義を精いっぱい皮肉った。
「何党がいいとか、選挙になるとそんな話ばかり出てくる。こんな時こそ、全部の党が協力すべき」(佐々木)
山口と佐々木、この2人は高齢だが門前町では知る人ぞ知る“論客”だ。話を聞いたのは12日。地元商工会主催のマルシェが開催された、総持寺通りの一角だ。一部の仮設店舗がオープンするとあって、まばらながらも人の姿が目につく。門前町で唯一コーヒーの飲める休憩所兼売店だ。
佐々木の「こんなときこそ、どの党も協力すべき」の言葉が心に重く響いた。周囲には解体工事の重機が陣取り、仮設商店街は完成に向けた仕上げの工事が進んでいる。そんな中に、拡声器を付けた選挙カーがやってくる。確かにそぐわない光景だ。
小寺は、自分たちのボランティア活動は被災者が元気を取り戻すまで継続し、求めに応じて被災地のお祭りにも参加するのだと言う。「今の被災者に必要なことは何?」そう言いたかったのだ。
被災住民の意識を調べようと、永田町で解散・総選挙の流れが確定したとき、町や避難所の知り合い何人かに「総選挙も近そうだね」と声をかけた。きょとんとする人や、筆者の神経を疑うような視線まで浴びた。
解散・総選挙は国政への信を問う大切なもので、被災地のためだけの選挙ではないことは百も承知だ。それでも違和感を感じるのは、元日の地震から10カ月以上もたつのに被災地の復旧・復興は遅れているようにしか見えず、国政が被災地支援よりも政局を重視しているようにしか見えないからだ。