◆石破首相は「先送り検討」から一転、自民は「推進」
石破茂首相は自民党総裁選を控えた9月の時点で、健康保険証の廃止時期の先送り検討も必要との考えを示していたのに、首相就任後は主張を一変。今月7日の衆院代表質問では、マイナ保険証への一本化を「法に定められたスケジュールで進める」と明言した。
自民は公約で、健康保険証の廃止を前提に、マイナ保険証を含む「マイナンバーの利活用推進」を記載。「社会保障」「税」「災害」の3分野以外での情報連携も拡大するとした。公明党も、マイナ保険証への一本化に向けた取り組みを着実に進めるとした。
◆一本化に賛同した維新と国民民主 公約では触れず
健康保険証廃止とマイナカードへの一本化は2023年、マイナンバー法などの改正関連法の成立により決まった。関連法には自公両党のほか、日本維新の会や国民民主党も賛成した。維新と国民は健康保険証廃止を容認する立場だが、公約にはマイナ保険証への対応に関する具体的な記載はない。
◆立憲民主は「見直す」、共産は「押し付けをやめさせる」
◇ ◇
◆「現状で健康保険証廃止はあまりにも拙速」…現状は
東京新聞など全国18の地方紙が8月に実施したアンケートでは、回答のあった1万2007人のうち、現行の保険証を残してほしいという意見が80%を占めた。「紛失時のリスクや手続きが心配」「災害時や停電など、使えないときはどうするのか」といった不安や疑問の声が多く寄せられた。
マイナ保険証を使ったトラブルも後を絶たない。開業医らで構成する全国保険医団体連合会の調査では、5月以降も70%の医療機関で、カードリーダーの不具合などのトラブルを経験していた。
東京都練馬区のITエンジニア、堀田聡美さん(54)は「さまざまな情報がひも付けられるリスクがあるのに、政府は国民が安心できるような制度設計をしていない」と指摘。健康保険証の廃止に関しては「あまりにも拙速だ。トラブルがあった場合に誰が責任を取るのかも分からず、今も不安に感じる。投票する際には、マイナ保険証に対する各党の主張も判断材料の一つにしたい」と話している。(戎野文菜)
マイナ保険証 健康保険証の機能を備えたマイナンバーカード。専用サイトなどで保険証として登録すると使える。患者が同意すれば、医師は薬の処方歴などの確認が可能で、政府は適切な治療につながるとしている。現行の保険証廃止後、カードを持っていない人やマイナ保険証の未登録者には、自治体や健康保険組合などが、代わりとなる「資格確認書」を発行する。