政治とカネ 再発防止策も丁寧に語れ(2024年10月11日『産経新聞』-「主張」)

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衆院解散後、記者会見する石破茂首相=9日午後、首相官邸(鴨川一也撮影)
 事実上始まった衆院選では「政治とカネ」を巡る問題が争点となっている。
自民党はパーティー収入不記載事件に関連し前議員らを非公認にしたり、比例代表への重複立候補を認めなかったりする方針だ。
 野党は「不十分だ」と批判している。野党との対決を前に、石破茂首相による党内の非主流派潰しの様相を呈しているとの指摘も出ている。
 有権者の投票判断の材料にすべき課題はほかにもある。政治資金の透明性確保と事件の再発防止の具体策だ。
立憲民主党日本維新の会公明党、国民民主党などは、政党から国会議員に支出される使途の報告義務がない政策活動費の廃止を訴えている。
 自民は公約に「将来的な廃止も念頭に」改革に取り組むと記した。首相は今回の衆院選では「使うことはある」と語った。立民が先の通常国会でパーティー禁止法案を提出しながら、同党幹部らが開催していたことを想起させるものだ。
 党務を預かっていた茂木敏充前幹事長は自民総裁選で、廃止は可能と語っていた。今の自民の姿勢は有権者から見て分かりにくい。
 国会議員に支給される調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)の使途公開は、衆院選後の国会で直ちに関連法を改正して実現すべきだ。政治資金を監視する第三者機関の制度設計も急がれる。
 立民、維新、共産党などが唱えている企業・団体献金の禁止には賛成できない。企業や労働組合なども民主主義社会の構成員である以上、政治活動の自由は認められるべきだ。
 一般国民からの個人献金が定着していない日本で企業・団体献金を禁止すれば、世襲ではない人や、業界団体、宗教団体などの背景を持たない人にとって選挙活動は極めて不利になる弊害も出てくる。企業・団体の幹部が分散して、個人として献金する抜け穴をふさぐことも難しい。かえって日本の議会制民主主義を後退させかねない。
 一方、外国人・外国法人のパーティー券購入禁止の議論が低調なのは残念だ。国政が外国勢力からの影響を受けるのを防ぐために禁止は欠かせない。
 不記載事件の動機は今も分かっていない。自民は明らかにする責任がある。