<袴田巌さん再審>日弁連会長「司法制度の抜本的改革を」 袴田巌さん無罪確定受け(2024年10月9日『毎日新聞』)

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袴田巌さん=代表撮影
 袴田巌さん(88)に対する静岡地裁の再審無罪判決が確定したことを受け、日本弁護士連合会の渕上玲子会長は9日、「刑事司法制度の抜本的な改革に取り組まなければならない」との談話を出した。
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清水署に連行される袴田巌さん=1966年8月18日
 
 渕上会長は、国が袴田さんに真摯(しんし)に謝罪した上で、冤罪(えんざい)の発生や、無罪確定までに長い年月を要した原因を検証し、是正する措置を講じなくてはならないと指摘した。
 袴田さんの再審請求手続きが長期化した点を最高検が検証するとしていることに対しては、「非人道的な取り調べや証拠の捏造(ねつぞう)が認定されたことを真摯に受け止め、冤罪の原因と責任の所在を明確にしなければ、同様の被害を防げない」と訴えた。
 日弁連として死刑制度の廃止や再審制度の整備を実現するために力を尽くすとしている。【菅野蘭】

袴田事件」の再審無罪判決確定を受けての会長談話
袴田事件」に関し、静岡地方裁判所が本年9月26日に宣告した再審無罪判決について、本日、検察官が上訴権を放棄したことにより同判決が確定した。
再審無罪判決の確定に至るまで、1966年(昭和41年)8月に袴田巖氏が逮捕されてから実に58年2か月、1980年(昭和55年)12月に袴田氏に対する死刑判決が確定してからも43年10か月という長い年月を要した。
袴田氏、姉の袴田ひで子氏、そして弁護団の長きにわたる雪冤に向けた努力と多くの方々の支援が結実し、袴田氏が晴れて真に自由の身となられたことを心から喜ぶとともに、袴田氏が、今後心身ともに回復され、人間らしい、穏やかな日々を送られるよう切に願っている。
国は、「袴田事件」の経過及び結果を重く受け止め、袴田氏に対して真摯に謝罪した上で、本件えん罪の発生や再審無罪判決確定までに長い年月を要した原因を検証し、これらを是正する措置を講じなければならない。
昨日公表された検事総長談話は「再審請求手続がこのような長期間に及んだことなどにつき、所要の検証を行いたい」とするが、その検証においては、再審無罪判決で捜査機関による非人道的な取調べや証拠のねつ造が認定されたことなどを真摯に受け止め、本件えん罪の原因と責任の所在を明確にしなければ、同様のえん罪被害の発生を防ぐことはできない。また、単に刑事司法制度の運用を改めれば足りるとするのではなく、法改正を含む抜本的な改革に取り組まなければならない。
とりわけ、「袴田事件」を通じて改めて浮き彫りになった再審法の不備を正すため、直ちに再審法改正に向けた具体的検討に着手すべきである。
当連合会は、「袴田事件」のような悲劇を二度と繰り返さないよう、今後も刑事司法制度の改革に尽力するとともに、他にも多数存在するえん罪事件の被害者が一日も早く救済されるよう支援を続けていく。また、死刑制度の廃止並びに再審請求手続における証拠開示の法制化、再審開始決定に対する検察官の不服申立ての禁止及び再審請求審における手続規定の整備を含む再審法改正の実現のため、今後とも力を尽くす所存である。
2024年(令和6年)10月9日
日本弁護士連合会
会長 渕上 玲子
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渕上 玲子氏