診療回数を減らされたくない?「リフィル処方箋」のポスターが見当たらない院内 「開業医の収益はやり方次第」(2024年10月8日『東京新聞』)

 
<医療の値段・第5部 続・明細書を見よう>⑤
 「診察で『リフィル処方箋はできますか』と聞いたら『よく分かりません』と言われて。医者が知らないなんてあり得ないです」

◆「見やすい場所に掲示する」が要件なのに…

 そう話すのは今回の連載1回目に登場した関西に住む50代の女性。6月の高血圧の診療で、毎回検査をしていないのに検査を包括する「生活習慣病管理料(Ⅰ)」6600円(診療報酬点数660点、1点10円)の請求に疑問を持ち、病院側に問いただすと、3330円の(Ⅱ)に訂正したことを取り上げた。
長期処方・リフィル処方箋が可能なことを伝える厚労省作成の院内掲示用ポスターの見本

長期処方・リフィル処方箋が可能なことを伝える厚労省作成の院内掲示用ポスターの見本

 女性はその際、1枚の処方箋を薬局で3回まで使えるリフィル処方箋を医師に打診したが、あいまいな説明で断られていた。
 厚生労働省は6月の診療報酬改定で、生活習慣病管理料の算定要件に「長期の投薬を行うか、リフィル処方箋が交付できることを見やすい場所に掲示する」と加えた。長期処方やリフィル処方の普及のためだ。

◆患者が指摘すると一転してリフィルに

 改定に合わせた連載第3部で、リフィル処方が医師の拒否反応で普及しないことを取り上げ、厚労省作製の掲示用ポスターの見本の写真を載せた。すると読者から「6月になっても院内に掲示が見られない」という情報が複数寄せられた。
 先の女性も6月の診療の際に掲示を探したという。
 「診療所の奥の方の掲示板まで見ましたが、ポスターはなかったです。あったとしても、見やすいところに張らなきゃゃいけないので、アウトですね」
 女性が病院側に「ポスターは見かけませんでした。生活習慣病管理料を算定している限り、リフィル処方箋・長期処方のいずれにも対応すべきではないでしょうか」と指摘すると、次の受診の際、一転して2回使えるリフィルが渡された。

◆診療代、調剤報酬の節約阻む「頻回診療」

 女性の6月の診療代は計4960円で、自己負担は3割の1490円。薬は28日(4週間)処方なので、リフィルがなければ年13回通院することになり、自己負担は計1万9370円。
 それが2回のリフィルがあるので、2回目は診療なしに薬を購入できる。その後も同じなら年間の通院回数は半分になり、自己負担も半額ですむ。
 仮に3回のリフィルなら診療代は3分の1に。さらに3カ月の長期処方なら薬局にも3カ月に1回行けばいいので、診療代に加えて薬局の調剤報酬も3分の1になる。そうした医療費の節約を阻んでいる要因の一つが頻回な診療だ。

◆「出来高払い」でなく定額方式の検討を

 経済協力開発機構OECD)のデータでは、日本の1人あたりの年間外来受診は11.1回で、15.7回の韓国に次いで2位。先進32カ国の平均は6回で、倍近い頻度だ。CTやMRIなどはOECD加盟国で群を抜いて多い。医療費増大の要因は高齢化や医療の高度化だけでなく、医療行為をすればするほど収益が上がり、頻回な診療を招きやすい出来高払いもある。
 東京都内のベテラン開業医が言う。「開業医の収入はやり方次第で、すごく収益が上がる仕組みです。それは出来高払いだから。だから(医療費が定額の)包括式にするとか、考えた方がいいと思う」

 生活習慣病の医療費 厚生労働省の調べで、2020年の高血圧性疾患の患者は1511万人、糖尿病579万人、脂質異常症401万人。3つの生活習慣病が傷病総患者数の上位3位を占める。2021年度の国民医療費45兆359億円のうち外来医療費は15兆5474億円。そのうち高血圧性疾患は1兆5151億円、糖尿病は9340億円と、2つで15.8%を占める。

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<連載:医療の値段>
 6月の診療報酬改定に合わせて生活習慣病の診療代の頻回な請求を取り上げた連載第3部に、多数の情報や意見が寄せられた。改定後は「医療費が値上がりした」「薬の長期処方やリフィル処方を断られた」という声が今なお届く。問題をもう一度追った。(杉谷剛が担当します)
 連載へのご意見や情報をお寄せください。メールはsugitn.g@chunichi.co.jp、ファクスは03(3593)8464、郵便は〒100-8505(住所不要)東京新聞社会部「医療の値段」へ。
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