全米で女性が選挙権を得たのは…(2024年9月17日『毎日新聞』-「余録」)

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米大統領選に向けた討論会に臨むハリス副大統領=米東部ペンシルベニア州フィラデルフィアで10日、ロイター
 全米で女性が選挙権を得たのは憲法修正第19条が成立した1920年8月である。3カ月後の大統領選挙では800万を超える女性が票を投じた。ただ、それ以前から、大統領を目指す女性はいた。被選挙権について憲法は「米国生まれの35歳以上」などと規定し、性による排除はしていない
▲女性は投票できないのだから勝つ見込みは薄い。それでも1872年、ウッドハル氏が全国平等権党から出馬する。死刑廃止などを訴えたものの投票用紙に名は載らなかった。まだ34歳だったのだ
▲84年と88年には、同じ党から参政権運動の指導者、ロックウッド氏が立った。女性として初めて最高裁判所で活動を許された弁護士だ
▲30年にニューヨーク州で生まれ、若くして教師になった。同じ仕事をしても男性の半分しかもらえぬ給与に落胆し、弁護士となって少数派の権利擁護に奔走する。「自分たちで要求し勝ち取らない限り、平等な権利は得られません」
▲2度目の大統領選挙で敗れた際には、「男性は騎士道時代の考えに固執している」と感想を述べた。それから136年。民主党のハリス副大統領が今、女性ゆえに高い地位に就きにくい「ガラスの天井」に挑む
▲ロックウッド氏は女性の投票風景を見ることなく1917年に生涯を閉じた。亡くなる3年前、女性が大統領になる可能性について語っている。「ふさわしいと示せるならば、いつかホワイトハウスに入るでしょう」。ようやくその時が訪れるのか。投開票まで7週間である。