兵庫・斎藤知事の「通報者探し」は違法 専門家論破「真実相当性は関係ない」…弁護士解説「背景に法律改正」(2024年9月9日『 ENCOUNT』)

  テレビ朝日法務部長・西脇亨輔弁護士が解説

 兵庫県・斎藤元彦知事のパワハラ・贈答品疑惑などを告発する文書をめぐり、今月6日、県議会の百条委員会で知事への2回目の証人尋問が行われた。斎藤知事は告発者処分に問題はないという主張を繰り返したが、元テレビ朝日法務部長の西脇亨輔弁護士は尋問前に行われた参考人招致での専門家見解を重視。「指摘は決定的なものだった」と解説する。


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【動画】斎藤知事「言い逃れ」のほころびを指摘する西脇亨輔弁護士

 2度目の証人尋問でも斎藤知事の主張はこれまでの繰り返しだった。しかし、その言葉が持つ意味は、尋問前に行われた専門家の意見陳述によって完全に変わった。斎藤知事のこれまでの「言い訳」が全く通用しなくなっていたのだ。

 百条委員会での専門家の指摘は、これまでの堂々巡りの議論に終止符を打つものだった。斎藤知事は、亡くなった元西播磨県民局長による内部告発を「うわさ話を集めたもの」「真実相当性(真実と信ずるに足りる相当の理由)がない」として公益通報には当たらないと主張。これに対して「真実相当性はある」「そもそも告発された当人が真実かどうか決めつけること自体がおかしい」などの異論が出ていた。

 こうした議論を受けて百条委員会は今月5日に上智大の奥山俊宏教授から、翌6日には消費者庁公益通報者保護制度検討会の委員である山口利昭弁護士から意見を聞いた。2人の専門家からは次々と鋭い指摘がなされたが、山口弁護士が特に強調した見解は議論を根底からひっくり返すものだった。その核心をひとことで言うとこうなる。

「告発に真実相当性があろうとなかろうと、関係ない」 「告発に真実相当性はない」と繰り返す斎藤知事に対して、山口弁護士は「真実相当性はある」と反論するだけでなく、さらに進んで「告発に真実相当性があろうとなかろうと、斎藤知事がしたことは違法だ」と指摘したのだ。

 なぜ、そうなるのか。背景には2022年の大幅な法律改正がある。

 実は改正前の古い法律の頃なら、斎藤知事の言い分にも意味があったかもしれない。06年の施行当初、公益通報者保護法は通報者をクビにするなどの「不利益取扱いの禁止」だけを決めた短い法律だった。そして、その適用条件として外部通報には「真実相当性」が求められていたため、斎藤知事らはしきりに「真実相当性なし」と連呼し、「法律の対象外」と主張したのだろう。

 しかし、改正によって同法は「不利益取扱い禁止」だけではなく、新たに「公益通報の保護する措置」についての事業者の義務も規定することになり、その内容として内閣府指針は次のように定めた。 「やむを得ない場合を除いて、通報者の探索を行うことを防ぐための措置をとる」

 つまり、余程のことがない限り「通報者探しは禁止」と決まったのだ。そして、ポイントとなるのが「通報者探し禁止」となる通報の範囲だ。同指針はその範囲を「公益通報者保護法2条の公益通報」と定めた。ここが重要だ。

 公益通報者保護法「2条」は、金もうけや私怨などの「不正の目的」ではない限り、広く公益通報に当たるとしていて、そこに「真実相当性」という条件はない。斎藤知事がしきりに繰り返している「真実相当性」は同法の「3条」に初めて登場し、「2条」には出てこない。「通報者探し」は「真実相当性がない通報」の場合まで含めて、広く禁止されたのだ。

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