自民党総裁選、候補者ヤキモキ 推薦人「20人」に決まった力学(2024年9月9日『毎日新聞』)

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自民党総裁室の机=東京都千代田区の同党本部で2024年2月22日午前10時9分、竹内幹撮影
 自民党総裁選(12日告示、27日投開票)の「出馬ラッシュ」が続くなか、立候補を模索しつつもいまだに正式表明できない候補者もいる。確保が必要な「推薦人」の数が20人となっていることが「絶妙」な高さのハードルとなっているためだ。10人でも50人でもなく、なぜ20人なのだろうか。
 「総裁の候補者は、党所属国会議員20人により、総裁の候補者として推薦される者とする」
 推薦人について総裁公選規程はこう定めているが、推薦人制度は1955年の自民結党時にはなかった。
 候補者の乱立を防ぐ目的で71年、推薦人を10人とする制度が設けられたのが源流だ。78年の総裁選では20人、82年には50人まで増えた。「数の力」を誇る派閥政治が推薦人の数を膨れ上がらせた形だが、立候補のハードルを下げる目的から89年以降は30人の時期を設けるなど要件を緩和してきた。
 推薦人の確保が容易になれば、中堅・若手も立候補しやすくなる。2001年には、党の中堅・若手議員が推薦人数の引き下げを党幹部に要望。02年党大会で推薦人を30人から20人とし、現在まで続いている。
「絶妙」の人数
 変遷を続けてきた推薦人の数が、現在の「20人」に落ち着いたのはなぜなのか。
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自民党本部に掲げられた総裁選のポスターがデザインされた懸垂幕=同党本部で2024年9月2日午後1時15分、平田明浩撮影
 党総裁選挙管理委員会の担当者は「総裁となった場合に閣僚や党執行部に起用することを想定し、20人となったようだ」と背景を語る。
 「私のときは『派閥から10人はそろえるから残りは自分で集めろ』と言われた。最後の1人が相当きつかった」
 過去に総裁選に出馬した閣僚経験者はこう振り返る。「選択肢も必要」と考えての出馬だったものの、このときの総裁選は党内が他の有力候補一色だったこともあり、推薦人集めの苦労は予想以上だった。
 「10人だと案外集まるが、20人となると派閥の協力などがないとなかなか難しい」。20人という人数を「絶妙」と表現する。
 今回の総裁選に出馬表明したり、出馬が取り沙汰されたりしている議員は計12人。自民の国会議員は367人(5日現在)なので、単純計算すれば20人ぐらいは難なく集まりそうなものだが、そうは問屋が卸さないらしい。
 推薦人になる議員は、所定の用紙に氏名を書く必要がある。その用紙が総裁選挙管理委員会に出されたのち、推薦人名が公表されるのだ。
 「推し」候補が敗れてしまった場合、新総裁選出後の人事で「冷や飯を食う」ことになる恐れがある。こうしたことが「勝ち馬」探しに拍車をかける側面もある。
 今回、推薦人にはなっていないものの、支持する候補者を既に決めているというある議員は「支持している候補が最後の最後で総裁選に出られなくなりそうなら私が推薦人になるのも仕方ない。だが、投票行動が縛られることになるので基本的にはやりたくないよ」と本音を漏らす。
立憲は引き下げ求める声
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立憲民主党代表選を巡り、推薦人に関する党規約改正を求める提言をまとめた中谷一馬衆院議員(中央)ら=国会内で2024年9月2日午後3時3分、源馬のぞみ撮影
 一方、23日に投開票を控える立憲民主党の代表選でも、立候補に必要な国会議員の「推薦人」は最低20人だ。
 ただ、立憲の国会議員は136人(5日現在)と自民の4割程度なので、相対的にハードルはより高いともいえる。
 立憲の有志は2日、立候補に必要な推薦人について国会議員の「10%」か「20人」の少ない方とする案などを盛り込んだ提言をまとめた。現在の国会議員数では、10%に引き下げれば14人の推薦人で立候補可能となる。【畠山嵩】