「保険証残して」の声に「不安解消の努力は徹底しなきゃ」武見厚労相が力説 マイナ一本化の方針は譲らず(2024年9月3日『東京新聞』)

 
現行の健康保険証を廃止しないでほしいという多くの声を、政府はどう受け止めるのか。
東京新聞など全国18の地方紙が8月に実施したマイナ保険証についての合同アンケートで、現行の保険証を残してほしいという意見が8割を占めたことを受け、東京新聞は3日、武見敬三厚労相に記者会見で見解を尋ねた。
記者会見で質問に答える武見敬三厚労相=2024年9月3日

記者会見で質問に答える武見敬三厚労相=2024年9月3日

武見氏は、医療のデジタル化に向けて「マイナ保険証は極めて重要な役割を持っている」と強調する一方、「移行期における不安解消の努力は、徹底してやらなきゃいけない」とも述べた。

◆保険証廃止は譲らず「積極的に利用いただけるよう」

東京新聞は、マイナ保険証を使うという人たちの半数近くが現行保険証とマイナ保険証との選択制を望んだことを示しながら、アンケート結果の受け止めや現行の保険証廃止を見直す考えはないかを尋ねた。
武見氏は「アンケートの結果では、情報漏えいが不安といった声が寄せられる一方で、メリットを実感される方もいらっしゃると認識をしております」と述べた。
現行保険証廃止を見直すかどうかは、はっきりとは言及せず、「より多くのみなさまにメリットを感じていただき、積極的にご利用いただけるよう、不安の解消にも努めていく」と語った。
東京新聞は再質問で、アンケートに寄せられた高齢の家族への心配や読み取り機のトラブルへの不安の声を紹介した。
記者が「メリットの強調だけでは、そういった国民には届かないと思います」と語ると、武見氏は質問を遮って「当然です」と語気を強めた。
記者は、具体的な不安解消策を尋ねた。
武見氏は「移行期に、なかなかついていけない方々の事情があることも、私どもは正確にきちんと把握をして、移行期における不安解消の努力は徹底してやらなきゃいけない」と答えた。

河野太郎氏「使い方のルールを周知」

この日、河野太郎デジタル相の記者会見でも、現行の保険証廃止の質問があった。
記者は、保険証廃止に関する厚労省パブリックコメントに寄せられた意見約5万3000件うち、多くが廃止に批判的だったことを指摘し、マイナ保険証と現行保険証を併存させる考えはないかを尋ねた。
河野氏は「12月2日からマイナンバーカード保険証を基本とするシステムに移行する方針には変わりございません」と返答。マイナ保険証を読み取るカードリーダーのトラブル対応などに触れ、「しっかり使い方のルールを周知広報して、不安を払拭していきたい」と述べた。

◆これまでの利用促進策ではトラブルも

政府はこれまで広報で、マイナ保険証のメリットを強調してきた。
薬局や病院に対し5月から患者にマイナ利用を促す声かけを強化するように求めた際は、厚労省が示した声かけの「台本」やチラシで、保険証代わりになる「資格確認書」の説明が省かれていた。マイナ保険証が必須だと誤解するトラブルが相次ぎ、政府の強引さを批判する声が出ていた。
厚生労働省が用意した病院などでの配布用のチラシ㊧や、7月に追加したリーフレット㊨。リーフレットには「資格確認書」の説明もあるが、以前から配られていたチラシには説明がなかった

厚生労働省が用意した病院などでの配布用のチラシ㊧や、7月に追加したリーフレット㊨。リーフレットには「資格確認書」の説明もあるが、以前から配られていたチラシには説明がなかった

厚労省は7月から、マイナ保険証の利用を勧める病院や薬局向けのリーフレットに、「大切なお知らせ」として資格確認書の説明を加えた。8月30日に開いた社会保障審議会医療保険部会では、カード紛失や情報漏えいの不安を抱える人たちがいることを踏まえ、「周知広報の手法にも変更を加えていく必要がある」とした。
厚労省の医療介護連携政策課の担当者は、「マイナ保険証を使う際のトラブルや資格確認書の内容も工夫しながら周知することが必要だと思っている」と取材に語った。(福岡範行)