宗教法人「東京都神社庁」(東京都港区、小野貴嗣=たかし=庁長)が、同庁の2580万円の資金を着服したとして、元財務担当幹部の男性(48)=懲戒解雇=を業務上横領容疑で、警視庁赤坂署に告訴したことが分かった。告訴は8月2日付。元幹部は事務局長を務めた任意団体「東京都神職教誨師会」(中川文隆会長)の預金600万円を着服した疑いもあり、同会が告訴を検討している。
◆「競馬などに使った」…既に全額を弁済
元財務担当幹部を業務上横領容疑で告訴した東京都神社庁=東京都港区で
都神社庁は国内最大の神道系包括宗教法人「神社本庁」の地方組織で、都内約1400の神社を取りまとめる。元幹部は港区内の神社の宮司で、昨年3月まで府中刑務所(府中市)の受刑者に矯正教育を行う教誨師としても活動していた。
都神社庁の依頼で弁護士らがまとめた調査報告書によると、元幹部は2020年2月〜22年12月にかけて延べ40回にわたり、同庁の資金を自身や都神職教誨師会の口座に移して、総額2580万円を横領した疑いが持たれている。同月に不正が発覚した際、横領した金を競馬などに使ったと認めて謝罪し、既に全額を弁済している。
◆元幹部は現在も港区内の神社の宮司にとどまる
同庁は昨年1月に元幹部を解雇する一方、懲戒処分は見送ったが、その後に教誨師会の口座悪用と預金着服が判明したため、懲戒解雇処分に改めた。弁護士らによる調査チームの報告書を受け、今年6月の役員会で告訴する方針を決めた。
元幹部は現在も宮司にとどまるが、都内の神社関係者からは「神職資格を剝奪されず、堂々と続ける現状は社会正義に反する」と指摘する声もある。都神社庁の小野庁長は本紙の取材に、今回の資金横領問題について「監督責任は重大で、猛省して再発防止策に取り組んでいる」と説明する一方、元幹部の神職資格の取り扱いに関しては「刑事罰を受けた場合に神社本庁が判断すること」と述べるにとどめた。
この問題を巡っては、内部告発した職員が小野庁長から叱責(しっせき)とパワハラを受けたとして退職している。小野庁長は「外部への情報漏えいを叱責したが、それが退職の直接原因ではない」と主張した。(阿部博行)