◆満潮が近づくと逆流した海水が噴き出す
「助けてください」
27日早朝、能登町の宇出津(うしつ)港近くの女性宅。満潮が近づくと、道路脇の側溝から逆流した海水が噴き出し、住宅は海水に囲まれた。1階の車庫はすぐに水浸しに。女性によると、地震前よりも敷地が約30~40センチ沈下して、海水面より低くなったという。
海水が流れ込んだ女性宅の車庫。もう車は置いていないという=27日、石川県能登町の宇出津港近くで
しかし、5月ごろから潮位が上がり始め、ほぼ毎日、海水が流入するようになった。水が引くたびに塩分を洗い流していたが、もうあきらめた。カニやフナムシがうろうろするようになった。湿気もひどい。「せめて長靴なしで生活したい」と、はしごと板でやや高い通路を作った。
石川県奥能登土木総合事務所によると、能登町の宇出津港や小木港、穴水町の穴水港など半島の東側は沈下傾向にあるという。「夏場に潮位が上がる中で被害が分かってきた」と説明する。特に被害の大きい宇出津港では、臨港道路約80メートルの区間で約25センチのかさ上げをし、排水ポンプを設置した。
◆「護岸や道路が50センチぐらい下がった」
県の応急処置で「家に海水が入らなくなった」と安堵(あんど)する住民がいる一方、今も複数の住民が被害を訴えている。女性は「台風で波が上がってきたら、どうしよう。高齢者もいて連れて逃げられない。うちにはいられない」とこぼす。最近は天気予報を頻繁に確認し、事前避難も考えている。
「(地震後に)護岸や道路が50センチくらい下がった」と話すのは、小木港の臨港道路沿いで酒販店を営む小木区長の石岡安雄さん(71)。満潮時には店の前の護岸に海水があふれるといい「毎年台風でこの道路は冠水するが、これだけ地盤が下がっとったら建物まで波が来るかもしれない」と心配した。
金沢大の楳田(うめだ)真也教授(海岸工学)は、地盤沈下した港周辺は「地盤が脆弱(ぜいじゃく)で液状化しやすいため、地震動で変形したと考えられる」と指摘。「日本海の潮位は長期的な上昇傾向が観測されていて、その影響もあり得る」と推測した。
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