去る8月1~2日に福井県で全国知事会が開催された。東京への一極集中が少子化対策において有害であるとする46道府県と、少子化と一極集中は明確な関係性が見られないために提言書から関係する一文を削除すべきとする東京都とで意見が分かれた。
まず、筆者は人口動態の専門家として、1対46の対立構造として報道されることは非常に望ましくない状況と考えている。
そもそも「人口のエリア・ポートフォリオ戦略」は、(国が定めた)各自治体からの意見をしっかり聴取したうえで、国が考えるべき課題であり、一極集中については、47都道府県が考え方で一致しないことがあってもよく、事実をしっかり受け止め共有化されればよいのであって、考え方の違いを際立たせ対立的に報道しても意味がない。
■20代はなぜ地元を去ってしまったのか
多様性の時代において、20代の若者が増加人口の86%(残り14%は10代)を占める東京一極「20代人口集中」が悪である、というならば、まずは地元を離れゆく20代の若者たちの考えについて各自治体での綿密な調査結果が必要である。各首長はこれを実施したのだろうか。
それもなしに、単なるヒトの動きとして悪であると論じることは若者の考えへのネグレクトでもある。実際に東京都に集中している人口、すなわち各首長の管轄下にて高校時代を過ごしつつも、地元を去ってしまった(そして戻ってこない)10代、20代人口の「お気持ち調査結果」の分析とその結果の政治への反映もなく、若者の移動を自治体の損得計算で語ることは、あまりに情緒的と言わざるをえない。
人口問題は科学的なエビデンスに基づいた政策が必須である。こうすればよくなるだろう、といった非科学的な対策で改善は望めない。
そこで、そもそも東京都に集まってくる人口はどこから来ているのか、社会増(転入数-転出数の転入超過数)人口の移動前住所を分析した結果が以下のランキングである。東京都の社会増人口の移動前の住所地を割合で確認してみたい。
■東京都にどこから人々はやってくるのか
東京都を除く46道府県のうち、東京都の社会増に2%以上貢献しているのは20エリアにすぎない。
2023年に東京都に対して社会減となったエリアは43道府県(神奈川県、埼玉県、千葉県以外)で、合計7万7070人の東京都への転出超過であるが、中でも大阪府と愛知県の貢献度は極めて高く、この2エリアだけで20%を占める。
つまり、東京一極集中人口の5人に1人が大阪府と愛知県出身の若者、ということになる。大阪府と愛知県がその周辺エリアの広域エリアの人口ダムとして人口流出歯止めの機能を果たせているならば、東京都の社会増は4/5に減少する、ということである。
ただし、「地方大都市機能が正常化」といっても、平たく言うならば「雇用の正常化」である。東京都に住民票を移動する「覚悟を持って移動」する社会増人口は、その86%が20代人口で、さらにそのうち7割以上が22歳を圧倒的多数とする20代前半人口だからである。
専門卒、大卒若者の就職先として圧倒的に支持されている東京都の雇用力に対して、大阪府や愛知県を筆頭とする「地方の冠たる企業・経済界をもつエリア」が若者に選ばれない状態となっている理由に、国でも東京都でもなく、彼らこそが真正面から逃げずに向き合わねばならない。
■沈黙する地方大都市圏
今回の全国知事会が終了したあとにマスコミで取り上げられた知事のコメントは、上記ランキング21位以下の東京一極集中にあまり貢献していない県の首長のコメントであった。
中には(報道の切り抜き効果もあるのかもしれないが)かなり激しい喧嘩腰のものまで見られ、両親が地方出身者である筆者にとっては愛する「わが田舎」との喧嘩ともいえる報道となり、実に残念だった。東京都に流れ込む多くの若者たちにとっても同様だったのではないだろうか。
もしエビデンスに忠実に考えるならば、「わが管轄エリア下にある若者がそちらに行くことによって発生する東京一極集中は大問題だ」と最前線で主張せねばならないのは大阪府や愛知県や福岡県などということになる。しかし、そうではなかった。当然ながら、返す刀で「では同じ大都市圏として、周辺エリアからの人口流入に頼って労働力となる若手人口をなんとか維持している現状を改革せよ」という話になるからだ。
2023年に東京都に対して社会減となったエリアは43道府県(神奈川県、埼玉県、千葉県以外)で、合計7万7070人の東京都への転出超過であるが、中でも大阪府と愛知県の貢献度は極めて高く、この2エリアだけで20%を占める。
つまり、東京一極集中人口の5人に1人が大阪府と愛知県出身の若者、ということになる。大阪府と愛知県がその周辺エリアの広域エリアの人口ダムとして人口流出歯止めの機能を果たせているならば、東京都の社会増は4/5に減少する、ということである。
ただし、「地方大都市機能が正常化」といっても、平たく言うならば「雇用の正常化」である。東京都に住民票を移動する「覚悟を持って移動」する社会増人口は、その86%が20代人口で、さらにそのうち7割以上が22歳を圧倒的多数とする20代前半人口だからである。
専門卒、大卒若者の就職先として圧倒的に支持されている東京都の雇用力に対して、大阪府や愛知県を筆頭とする「地方の冠たる企業・経済界をもつエリア」が若者に選ばれない状態となっている理由に、国でも東京都でもなく、彼らこそが真正面から逃げずに向き合わねばならない。
■沈黙する地方大都市圏
今回の全国知事会が終了したあとにマスコミで取り上げられた知事のコメントは、上記ランキング21位以下の東京一極集中にあまり貢献していない県の首長のコメントであった。
中には(報道の切り抜き効果もあるのかもしれないが)かなり激しい喧嘩腰のものまで見られ、両親が地方出身者である筆者にとっては愛する「わが田舎」との喧嘩ともいえる報道となり、実に残念だった。東京都に流れ込む多くの若者たちにとっても同様だったのではないだろうか。
もしエビデンスに忠実に考えるならば、「わが管轄エリア下にある若者がそちらに行くことによって発生する東京一極集中は大問題だ」と最前線で主張せねばならないのは大阪府や愛知県や福岡県などということになる。しかし、そうではなかった。当然ながら、返す刀で「では同じ大都市圏として、周辺エリアからの人口流入に頼って労働力となる若手人口をなんとか維持している現状を改革せよ」という話になるからだ。