高速道路の逆走 最新技術の導入で事故を防げ(2024年8月27日『読売新聞』-「社説」)

 高速道路で車の逆走事故が相次いでいる。逆走が起こりやすい場所を検証するとともに、人工知能(AI)などの最新技術を用いて、安全確保に努める必要がある。
 栃木県那須塩原市東北自動車道下り線で今月15日、逆走してきた軽ワゴン車が乗用車と正面衝突し、両車両の運転手2人が死亡した。乗用車に乗っていた小学生2人も重傷を負った。
 東北道では翌16日も上り線で、逆走車がバイクと衝突し、バイクの男性が大けがをしている。
 高速道での逆走は、スピードが出ている状態で正面衝突するリスクが高く、重大な事故につながりやすい。逆走をいかに食い止めるかは、重要な課題である。
 国土交通省によると、高速道での逆走は毎年200件前後起きている。このうち2割が物損や人身事故につながっている。
 昨年の調査では、逆走事故を起こした運転手の6割は65歳以上だった。原因は、勘違いなどの「過失」が全体の4割を占め、認知症が疑われる例も3割に上った。
 逆走が始まった場所は、サービスエリアから本線への合流部や、高速道の出入り口が多かった。
 国交省や高速道路各社は、逆走の発生状況を詳しく分析し、構造上の問題があれば早急に改めねばならない。運転手の認知機能検査の強化などにも力を入れたい。
 逆走した場合に車体が強い衝撃を受けるよう路面に段差を設置するほか、逆走車を探知して警告を表示する装置を導入するなどの取り組みが、一部で始まっている。これらの場所では、逆走の発生頻度が7分の1に減ったという。
 こうした対策をさらに広げていくことが重要だ。逆走が起きやすい国道や県道などへの応用も検討してもらいたい。
 国交省などは、高速道に設置された約1万5600台の交通監視用カメラの画像をAIで解析する技術の導入を検討している。
 逆走を検知すると、当該の車や周辺を走る車のカーナビゲーションなどに注意や警告を発する仕組みだという。民間の技術も生かして、より安全な交通システムを作り上げることが大切だ。
 逆走車の運転手は、自分が2車線や3車線の左側を通行していると思い込み、追い越し車線を走ってくることが多いという。
 逆走車に遭遇しても回避できるよう、普段から左側の車線を走るようにしたい。逆走車を発見したら、路肩などの安全な場所に避難し、110番通報してほしい。