福島第一原子力発電所の廃炉を実現することは世界に例のない難作業である。長い道のりとなるが、作業を着実に進め、何としても成功させなければならない。
計画では、まず2号機で3グラム程度を試験的に採取する。わずかな量でも、試料の組成や構造を分析することで、今後の本格的なデブリ取り出し方法を検討するのに欠かせない第一歩となる。
しかし、初日は、取り出しに着手する前の準備段階で、ミスが発覚して中断した。伸縮する釣りざおのような装置を原子炉横の穴から差し込む手はずだったが、この装置を押し込むのに使うパイプの接続に誤りがあったという。
大事に至らなかったのは幸いだったとはいえ、このような単純なミスを防げないようでは、計画の履行はおぼつかない。現場の体制を点検し直し、気を引き締めて作業を再開してもらいたい。
原子炉横の穴が 堆積たいせき 物で塞がっていることが判明し、除去するのにも時間がかかった。また、試料の採取には当初、より大型のロボットアームを使う予定だったが、開発が思うように進まず、今回の釣りざお型装置に変更した。
今後も想定外のトラブルに直面することは避けられないだろう。未知の領域に踏み込んでいる以上、まずは安全を最優先し、慎重に作業を進めてもらいたい。状況の変化に応じて計画を見直すこともためらうべきではない。
日本は技術力を結集し、世界に衝撃を与えた原発事故の後処理を完遂することが求められる。