79年前のきょう、シベリア抑留が始まった。国家による戦争で多くの人が人生を狂わされた。歴史の教訓を語り継いでいくべきだ。
厚生労働省の推計によると、抑留者は約57万5000人に上る。最長で11年に及び、約5万5000人が亡くなったとされる。
犠牲者を追悼する集いが、きょう東京で開催される。約4万6300人分の名簿を、有志がオンライン上で読み上げる追悼イベントも実施される。
名簿は、抑留経験者だった村山常雄さんが96年から10年かけて、一人でコツコツと作成したものだ。厚労省が公表した不完全なカタカナの名簿を基に、遺族から集めた情報などを照合した。さらに現地で墓碑の名前を書き写すなどして氏名の漢字を割り出した。
「一人一人の無念さと命の尊さを、その人自身の氏名に刻んで歴史に残したい」。10年前に亡くなった村山さんは生前、その思いを語っていた。
政府は91年に旧ソ連と協定を結んで遺骨の収集を進めてきた。収容された遺骨は2万264人分にとどまり、3万人以上が故郷に戻れないままだ。
生存している抑留経験者は3000人を割り込み、平均年齢は100歳を超えているとみられる。抑留の実態を明らかにし、残されている遺骨の収集、身元の特定作業を進めるのは政府の責務だ。
だが、犠牲者を数字だけで語ることはできない。一人一人に名前があり、命の重みがある。悲惨な戦争を繰り返さないために、そのことに思いをいたしたい。