靖国神社の参拝を終えた木原防衛相=15日午前、東京・九段北
そもそも韓国に、日本の首相や閣僚の靖国神社参拝に反対したり、失望したりする確たる理由はあるのか。朝日新聞は16日朝刊で、木原稔防衛相が「終戦の日」の15日、靖国に参拝したことについて「日韓関係に冷や水も」との見出しの記事を載せていた。一読、どうにも釈然としない。
▼政府は昭和57年4月の閣議決定で、15日を「戦没者を追悼し平和を祈念する日」と定めている。防衛相がこの日に戦没者追悼の中心施設である靖国に詣でて、今日の平和の礎をつくった方々に「哀悼の誠をささげ、尊崇の念を表した」(木原氏)ことに、何の問題があろうか。
▼朝日は記事で、靖国に東京裁判で「A級戦犯」とされた14人が合祀(ごうし)されていることなどから「防衛省トップによる参拝は、重大な問題をはらむと指摘される」と書く。とはいえ、いわゆるA級戦犯は「国内法では犯罪人ではない」(平成18年10月の安倍晋三首相の国会答弁)。
▼実は、韓国が靖国参拝に強く反発しだしたのは、戦後約60年がたつ盧武鉉(ノムヒョン)政権(2003~08年)以降である。外務省事務次官経験者によると当時、韓国側に「日本と戦争をしていない韓国がなぜ反対するのか」と尋ねると、こんな答えが返ってきたという。「中国が批判しているから韓国も何か言わないと、と思って」
▼その程度の話だったのである。ある時期に突然始まった自衛艦旗(旭日旗)へのイチャモンや、原発処理水放出をめぐる放射能デマと同じく、根拠のない難癖に過ぎない。徹底的な反論は必要だとしても、相手の言うことを真に受ける必要はない。
▼問題はむしろ、韓国側の言い分を検証せずに無条件で受け入れたり、あおり立てたりしがちな日本のマスコミにあるといえる。