女子マラソン 鈴木優花が6位入賞 パリ五輪【詳しく】(2024年8月11日『NHKニュース』)

パリオリンピック陸上の女子マラソンが11日行われ、日本勢は鈴木優花選手が6位入賞しました。この種目、日本勢は東京大会に続いての入賞となりました。

記事後半ではレースの詳しい経過をお伝えしています。

NHKプラスで配信中】(2024年8月18日まで) 

鈴木優花が終盤まで先頭集団 6位入賞

陸上の女子マラソンはマラソン代表選考レース、MGCで優勝した初出場の鈴木優花選手と前回の東京大会で8位で入賞した一山麻緒選手が出場しました。
出場予定だった日本記録を持つ前田穂南選手は右の大たい骨の疲労骨折で欠場しました。

レースはスタートからゆっくりしたペースで進み、鈴木選手と一山選手は大きな集団の中を走りましたが、一山選手は15キロ手前で先頭から離されていきました。

一方、鈴木選手は20キロ以降アップダウンの激しいコースが続く中、先頭集団で走りました。

鈴木優花選手

鈴木選手は35キロすぎまで先頭集団でレースを続けましたが、終盤は徐々に離されて6位でのフィニッシュで、タイムは自己ベストを7秒更新する2時間24分2秒でした。

日本選手のこの種目での入賞は東京大会に続いて2大会連続となりました。

一山選手は51位でフィニッシュし、タイムは2時間34分13秒でした。

オランダのシファン・ハッサン選手が金メダル

▽金メダルはオリンピック記録を更新する2時間22分55秒をマークしたオランダのシファン・ハッサン選手
▽銀メダルは世界記録保持者でエチオピアのティグスト・アセファ選手で2時間22分58秒
▽銅メダルはケニアのヘレン・オビリ選手で2時間23分10秒でした。

《日本選手 談話》

鈴木優花「必死についていった」 

初出場で6位に入賞した鈴木選手は「初めてケニアの選手やエチオピアの選手のペースの変動を経験した。ついていかないと入賞はできないと思っていたので、行けるところまでいこうと決めて必死についていった」とレースを振り返りました。

そのうえで「アップダウンのあるコースで自己ベストを更新できた。より平坦なコースやタイムの出やすいコースに挑んだ時にどこまでいけるか。入賞だけでなくメダルを獲得できるところまで何としてもいきたい」と次の目標を見据えていました。

一山麻緒「日本を背負って走れたことがうれしい」 

51位だった一山選手は「順位をみると惨敗だが、走る前は恐くて仕方がなかった。実際に走って、世界中の方にたくさん応援してもらって日本はすごく世界中から愛されているんだなと思い、日本を背負って走れたことがうれしかった」と涙を流しながら話しました。

そのうえで「東京大会とは全然違ってこれが本当のオリンピックなんだと肌で感じた。悔しいことの方が多い3年間だったが、苦しいだけじゃなくうれしい気持ちで走ることができてありがたいという気持ちでゴールできた」と感謝を口にしていました。

鈴木優花 迷いと葛藤の日々を越えて

オリンピック初出場の鈴木優花選手は大会前「人としても選手としても自信が持てない」と悩みながら日々を過ごしていたといいます。

鈴木選手は大東文化大時代から全日本大学女子駅伝で3年連続で区間賞を獲得するなど駅伝のエースとして知られた存在でした。
フルマラソンに挑戦したのはおととし3月。名古屋ウィメンズマラソンで2時間25分2秒の学生新記録をマークすると、去年行われたパリオリンピックのマラソン代表選考レースでは自己ベストを更新して優勝を果たし、初めてのオリンピック出場を決めました。
着実にステップアップしてきたように見える鈴木選手ですが、選考レースのあとには「自分が本当に日本代表としてパリの舞台に立っていいのか」という葛藤があったといいます。2大会連続でオリンピック代表に決まった前田穗南選手がことし1月の大阪国際女子マラソンで2時間18分台の日本新記録をマークするなど国内のトップランナーが2時間20分台やその前後のタイムを持っているのに対し、鈴木選手のベストは2時間24分台。マラソンの経験も浅く「自分は代表にふさわしくないのでは」と悩んでいたといいます。

鈴木選手はレース前、代表決定からオリンピックまでを振り返り「上のレベルに早く到達したいという気持ちと、焦ったらダメだという気持ちが行ったり来たりすることがあって悩む時期が多かった。目標は入賞だが、どんなレースになるかは走ってみないとわからない」と正直な胸の内を明かしていました。

それでもオリンピックのレースで見せた走りは堂々としたものでした。

序盤から先頭近くでレースを進めると、ポイントにあげていた中盤の急勾配のアップダウンでも力のある海外勢に食らいつきました。その後は先頭集団に離されても少しずつ追いつくという粘りの走りを何度も繰り返し、35キロすぎまでは先頭集団についてメダル争いを演じました。

鈴木選手はオリンピック史上最も難しいと言われたコースで、自己ベストを更新して6位。目標にしていた入賞を見事に果たしました。レースを終えた鈴木選手は「スタッフやチームメイト、家族、友達、いろいろな方々が『気負わなくていいよ、自分らしく楽しく走ってきて』とみんな同じことばをかけてくれた。私は走ることでみんなにその感謝の気持ちを届けることがやるべきことだと思い、吹っ切れて走ることができた」と目に涙を浮かべて話しました。

最後に代表選手としての自信は持てたかと尋ねると「まだまだだが、1つ大きな自信になった。次のロサンゼルスオリンピックに向けてもしっかりとまた強くなっていきたい」と笑顔で力強く宣言していました。

ハッサン マラソン「金」は1万mから35時間後

金メダルを獲得したオランダのシファン・ハッサン選手は今大会5000メートルと10000メートルにも出場。それぞれ銅メダルを獲得していて、マラソンが3つ目のメダルになりました。

エチオピア出身でオランダ代表の31歳のハッサン選手は前回の東京大会で5000メートルと10000メートルで2冠を達成しました。パリ大会はこの2種目に加えてマラソンの3種目と異例の挑戦となりました。そして5000メートルと10000メートルで銅メダルを獲得し、10000メートルが終わって35時間後にマラソンに出場しました。

ハッサン選手は序盤は後ろから様子を伺うようにレースを続け、折り返し地点をすぎたあたりからペースを上げて先頭集団につきました。残り300メートル付近でスパートをかけ、世界記録保持者でエチオピアのティグスト・アセファ選手を振り切り1位でフィニッシュしました。タイムもオリンピック記録を更新する2時間22分55秒でした。

オリンピックで異例の挑戦を続けたハッサン選手は、最後の種目となったマラソンを金メダルで締めくくりました。

==【詳しく】レース経過==

日本時間15:00

【スタート】 

パリオリンピックの女子マラソンが日本時間の午後3時にパリで始まりました。日本からは鈴木優花選手と一山麻緒選手の2人が出場しています。

【5キロ地点】 

左が一山麻緒選手

レースは先頭が大きな集団でゆっくしたペースで展開していて、トップの選手は17分24秒で通過しました。日本の鈴木選手と一山選手は先頭のすぐ後ろを走っています。

【10キロ地点】 

右が鈴木優花選手

パリ市内をセーヌ川に沿って走っています。トップは世界記録保持者のエチオピアのティグスト・アセファエ選手で34分32秒で通過しました。

日本の鈴木選手と一山選手はトップから5秒ほど後ろを走っています。

【15キロ地点】

先頭の集団は14人で形成されていて、ケニアの選手が51分12秒で通過しました。日本の鈴木選手は14秒遅れて、一山選手は46秒遅れて通過しました。

【20キロ地点】 

真ん中が一山麻緒選手

15キロ付近からは上り坂が続いています。イスラエルの選手がトップの1時間9分31秒で通過しました。
日本勢は鈴木選手が先頭集団に追いつき、トップと1秒差の10番目です。一山選手はトップから1分52秒遅れています。

【折り返し地点】

女子マラソンは折り返し地点。トップはオーストラリアのジェシカ・ステンソン選手で、1時間13分22秒で通過しました。日本勢は鈴木選手が先頭集団で走っていて、トップと3秒差です。

【25キロ地点】 

ヴェルサイユ宮殿の付近を走っています。トップはイスラエルの選手で1時間26分34秒で通過しました。日本勢は鈴木選手がトップと6秒差の13番目です。一山選手はトップとは3分7秒差で通過しました。

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【30キロ地点】 

左が鈴木優花選手

アップダウンの激しいコースが続く中、トップはケニアエチオピアの選手で1時間43分59秒で通過しました。先頭を追う日本勢の鈴木選手はトップから4秒遅れて8番目を走っています。一山選手は30キロ地点をトップとは5分20秒差で通過しました。

【35キロ地点】

先頭集団は35キロ地点を1時間59分43秒で通過しました。日本勢は鈴木優花選手が先頭集団に位置し、トップと同タイムの5番目を走っていて2004年のアテネ大会以来となるメダル獲得を目指します。

その後、先頭集団はスピードをあげ、鈴木選手は6番目となっています。

【40キロ地点】

女子マラソン40キロ地点。5人の先頭集団が2時間16分09秒で通過しました。メダル争いが激しくなっています。
日本勢は鈴木優花選手がトップと27秒差の6番目を走っています。

  • 注目

【フィニッシュ】

鈴木優花選手が6位入賞しました。タイムは、自己ベストを更新する2時間24分2秒でした。日本選手がこの種目で入賞するのは前回、東京大会で8位入賞の一山麻緒選手に続いて2大会連続です。

《見どころ》

今大会では、1984年のロサンゼルス大会で女子マラソンが採用されて以来、初めて、女子のマラソンが大会の最終日に行われます。

(左)鈴木優花選手(右)一山麻緒選手

日本からは
▽8位入賞を果たした東京大会に続いて2大会連続出場の一山選手と
▽去年行われたパリオリンピックのマラソン代表選考レース、MGCで優勝した鈴木選手の2人が臨みます。

前田穂南選手は欠場

出場予定だった日本記録を持つ前田穂南選手が右の大たい骨を疲労骨折したため欠場することになりました。

また、5000メートルと10000メートルで銅メダルを獲得し、今大会陸上で3種目目となるオランダのシファン・ハッサン選手が、どのような走りをみせるのか注目です。

◇マラソン会場 最大高低差は156m 起伏多いのが特徴 

陸上、マラソンの会場には、パリ市庁舎をスタートし、パリやその近郊の数多くの名所を巡りナポレオンのひつぎが安置されていることで知られるアンバリッドでフィニッシュする42.195キロのコースが採用されました。

市庁舎の前をスタートしたあとは、セーヌ川に沿ってルーブル美術館コンコルド広場の前を通り、23キロ地点のベルサイユ宮殿近くが折り返し地点となっています。そして後半は、再びセーヌ川沿いに戻り、パリの中心部に向かってエッフェル塔の前を通過し、アンバリッドでフィニッシュするコースです。沿道では無料で観戦することができますが、フィニッシュ地点は、有料で観客を入れる計画です。

コースの最大の特徴は、起伏の多さで最大高低差は156メートルにも達し、特に中盤の20キロから30キロ地点にかけては過酷なアップダウンが待っています。

パリオリンピック組織委員会によりますと、このコースは1789年に食糧難に苦しむ市民たちがパリ市庁舎からヴェルサイユ宮殿まで歩いて国王や議会に対する抗議の意志を示した「ベルサイユ行進」に着想を得たということです。

この行進が女性を中心に行われたことにちなんで、今大会では、1984年のロサンゼルス大会で女子マラソンが採用されて以来、初めて、男女の日程が入れ替わり、女子のレースが陸上競技全体の最後の種目として行われるスケジュールとなっています。