泉V S枝野…立憲の代表選が、「どうしても新しさに欠けてしまう」根本的な理由(2024年8月8日『現代ビジネス』)

なぜか盛り上がらない
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〔PHOTO〕Gettyimages
9月に予定されている自民党総裁選と立憲民主党代表選。
どちらも党のトップを決める選挙で、それぞれ政権与党と野党第1党であるだけに、その結果は日本の政治を大きく左右する。
しかし、自民党総裁選では現職の岸田文雄首相のほか、石破茂氏、河野太郎氏、高市早苗氏、茂木敏充氏、そして若手中堅の小林鷹之氏などさまざまな候補の擁立論が挙がっている一方で、立憲の代表選は現代表の泉健太氏と前代表の枝野幸男氏という新旧対決が軸になる見通しで、今一つ盛り上がりに欠けている印象だ。
実はその背景には、立憲代表選の規則を巡る構造的な問題がある。
立憲代表選には国会議員であれば誰でも立候補できるわけではない。
立憲民主党代表選挙規則の第6条には「代表候補者は、代表選挙の告示日に、国会議員の20人以上25人以下の推薦状を添えて、代表選管に届け出ることを要する」とあり、推薦人を20人以上集めなければ立候補することすらできないのだ。
これは、自民党総裁選における立候補の条件とほとんど同じで、候補者がむやみやたらに乱立するのを防ぐ狙いがある。
ただ、この「推薦人20人」は、立候補を検討する議員にとって大きな壁となることもある。
推薦人は氏名が公開されるため、誰が誰を応援していたのかというのが明らかになってしまうからだ。
党内選挙も権力闘争の場だ。特定の候補を応援して敗北した場合、その後の人事などで冷遇されてしまう恐れもある。
いわば、推薦人と候補者は一蓮托生であり、リスクを背負って応援してくれる人を20人も集めるのは至難の業だ。
実際に、自民党の例だが、高市早苗氏は前回総裁選では安倍晋三氏の応援を受けて出馬することができたものの、一方で今回は後ろ盾を失い、推薦人集めに苦労していると言われている。
若手が手を挙げにくい
そして、この推薦人のハードルは自民党に比べて、立憲民主党のほうがより高いと言えるだろう。
なぜなら、国会議員の数がそもそも違うからだ。
自民党は国会議員が衆参合わせて369人もいるのに対し、立憲民主党はたった136人しかいない。
しかも、今回の「泉VS枝野」はガチンコ対決となるため、それぞれ裏での国会議員への根回しには余念がない。
そうなると、他の候補者が出てくる余地はますますなくなってくるわけだ。
立憲関係者は「本当は若手や女性の候補者も出てきて、立憲代表選をもりあげたいが、なかなか難しい党内情勢だ」と溜息を漏らす。
もちろん、他の候補者の動きがないわけではない。
8月2日には立憲の若手中堅グループ「直諫(ちょっかん)の会」が記者会見し、少子化対策や脱炭素などに取り組む企業を支援するなど「インパクト立国」なる国家ビジョンを発表した。
しかし、会長の重徳和彦衆院議員は「代表選でどのように扱うかは仲間と共に検討したい」と述べるにとどめ、会として候補者を擁立するか否かについては明言しなかった。
また、小沢一郎氏は8月6日、自身の政策グループ「一清会」を動かして代表選に積極的に関わっていく方針を示したが、支援する候補者はまだ絞れていない。
立憲内からは「推薦人20人は今の党の規模からして多すぎる。もっと少なくしないと代表選は活発にならない」という声も挙がるが、代表選を来月に控える中、規則が改正される兆しはない。
このまま「泉VS枝野」という新旧対決に終始してしまうのか。
立憲代表選も自民党総裁選も、まだ構図は完全には決まっていないが、ただでさえ政権与党である自民党総裁選が注目される中、代表選が盛り上がらなければ立憲の存在感はますます低下してしまうだろう。
野党第1党として、政権を担うに足る活発な論戦を、代表選を通して繰り広げることができるか否か。
それがまさにいま、立憲民主党には問われている。
宮原 健太(ジャーナリスト)