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2025年大阪・関西万博が迷走する原因の一つに「電通・吉本」依存が指摘される。メガイベントの運営や機運醸成は善かれ悪しかれ、巨大メディア企業である両社なしではできないのが現状。ところが、実際のところ、両社とも社内事情から今回の万博には距離を置いているというのだ。
その複雑な事情を、ノンフィクションライターの西岡研介氏は『大阪・関西万博「失敗」の本質』(ちくま新書)で明らかにしているが、もう一つ注目すべきメディア企業の動きがある。万博と地続きのIR(統合型リゾート)に対する読売グループの姿勢だ。同書から引用する。
「チーム関西」という団体
万博招致が決定すると(2018年)、吉本興業は機運醸成を目的に「チーム関西」協議会を発足させ、自ら旗振り役となる。21年3月時点では関西電力、大阪ガス、JR西日本、パナソニック、サントリーなど関西を代表する14の企業・団体が参加していた。
さらに吉本は22年2月、早々に万博へのパビリオン出展を発表。同年の大型連休にはチーム関西との共催で、70年万博跡地の万博記念公園を会場に「Warai Mirai Fes 2022~Road to EXPO2025~」と題するお笑いや音楽のイベントを開き、3日間で5万人を超す観客を動員した。その後、一般社団法人となったチーム関西には朝日放送、関西テレビ、毎日放送の在阪民放局を含む17社が名を連ね、機運醸成イベントを毎年行っている。
ところが、チーム関西に唯一加わっていない在阪民放局がある。読売テレビだ。23年7月の同局の定例会見で、大橋善光社長は参加見送りの判断をこう語っている。
「私たちは報道機関でもありますので、『報道を制限されるような包括的な団体には入れません』とお断りした」
具体的な理由を問われると、大阪IRを挙げた。
「(チーム関西の説明を受けた時)IRについて書いてあった。IRには場合によっては離反しなければならない。各社の世論調査を見ても賛成・反対が等しい状態。いろいろな問題も出てくると思います。われわれはIRを推進する可能性のある団体には、報道を制限される可能性がある以上、賛同できない。万博については精いっぱい報道していくが、場合によっては厳しい事も言っていかなければならない」
万博には協力するが、IRには関わらない──そう宣言したに等しい。