NHK「中川アナ」が何を着ようが彼女の自由 女性を支配する“男目線”…日本の後進性にア然とする(2024年8月7日『デイリー新潮』)

メディアの視線こそいやらしい
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男女共同参画社会」はどこへ行った
 日本選手の活躍がめざましいパリ五輪で、NHK中川安奈アナウンサー(30)の服装が物議を醸した。7月26日、開幕式の直前、女優の杏らと一緒に現地の様子をレポートしたが、白いジャケットのインナーに着ていたベージュのトップスが、肌と同化しているように見えたとのことで、「何も着ていないかと思った」といったコメントが、SNS上に殺到したのである。
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 SNSでこの手のことが騒がれるのは、毎度のことで違和感はない。しかし、この話題を多くのメディアが取り上げたことには、強い違和感を覚えざるをえなかった。
 その際、メディアは、次のようなことも強調していた。自身の公式インスタグラムに投稿される中川アナのプライベートの姿は、ボディラインを強調している服を着ていることが多くて批判もある、中川アナは「NHK峰不二子」と呼ばれている、局内には「こうした服装をするのはいかがなものか」という意見もある――。
 日ごろから女性の権利や男女共同参画を重視しているはずのメディアだが、中川アナのあの程度の服装をこうして揶揄するのは、じつは、メディア自体が女性を淫猥なものとして眺めていることの証なのではないか。そんなことを思ってしまう。
ヨーロッパでは露出が多い服が当然
 ヨーロッパに行くと、女性が機能性の高い服装をしていることに気づく。痩せていても太っていてもボディラインがしっかり見える服を着る人が多いが、それは「峰不二子」のようになろうとしているのではなく、機能性を重視しているからだ。下着が見えていても気にしているフシはない。
 とくに夏場は老若問わず、肌を大きく露出させた女性が目立つ。胸元が大きく開いた服など当たり前で、キャミソールを着ていない、ブラを着用していない、と思われる人も多い。むろん、それは男性を挑発するためではない。快適性を優先し、自分がラクにすごせる服装をしているにすぎない。
 男性もそれを当たり前に受け入れ、劣情をもよおしたりはしない。いや、刺激を受けている男性はいるかもしれないが、ヨーロッパには、それを表に出してはいけないという通念がある。いわば、女性が自分のしたい恰好をすることができ、基本的にそれが受け入れられる大人の社会なのである。
 一方、日本はどうだろうか。昨年夏、大阪府泉南市で開催された音楽イベントで、韓国の女性DJ「DJ SODA」が胸を触られたとして、イベントの主催会社が観客の男女3人を不同意わいせつと暴行容疑で告発する事件があった。そのときSNSなどには、「露出が多い服を着ているのが悪い」という声が上がった。
 また、「ちょっと露出多くないですか? もっと自分を大切にしてください」という意見も上がったという。そして、この声がいみじくも指摘するのは、日本では露出が多い服装をしていると、自分を大切にできない、すなわち自分を守ることができないという事実である。日本の男性は、露出が多い女性の服装への耐性がない、と言い換えることもできるだろう。
 むろん、ヨーロッパの女性も露出が多いのは夏場だけだが、寒い時期も大人っぽい、それこそボディラインが強調された、セクシーな服を着ていることが多い。だが、それが「峰不二子のようだ」と揶揄されることはない。
 ところが、日本ではセクシーさを強調していては、揶揄されるばかりか自分を守ることもできない。したがって、おのずと大人っぽいセクシーな服装を着るのを避け、体のラインを隠したかわいらしい服を好む女性が多くなる。
キャスターまでパリへ
 具体的に見てみよう。まずはアナウンサーではないが、「サタデーウオッチ9」(土・21:00)の伊藤良司キャスターは7月27日の放送でパリから中継で出演した。
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浅田春奈アナ(NHKの公式HPより)
 
「繰り返しますが、NHKは28人のアナウンサーをパリに派遣します。さらに伊藤キャスターまでも現地に向かう必要があったのでしょうか? パリで仕事をしているNHKのアナウンサーに出演してもらい、東京のスタジオにいる伊藤キャスターと衛星回線でやり取りすれば、それで済んだと思います」(同・関係者)
 次は番組から派遣された女性アナウンサーだ。先に触れたとおり、3人の女性アナウンサーが番組からパリへ派遣されている。
NHK NEWS おはよう日本」(平日・5:00など)のレポーター・浅田春奈アナ、「NHKニュース7」(毎日・19:00)で金土日祝のフィールドキャスター・川口由梨香アナ、「ニュースウォッチ9」(平日・21:00)のスポーツキャスター・吉岡真央アナ──この3人だ。
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吉岡真央アナ──(NHKの公式HPより)
 
「浅田アナと川口アナは19年、吉岡アナは18年の入局です。3人とも20代の若い女性アナウンサーという共通点があります。Xを見ると、彼女たちはかなり前から現地に入っていることが分かります。とはいえ、3人がフランスから送ってくるレポートはパリ通行人のインタビューとか、選手村の様子を紹介するなど、他愛もないものばかりです」(同・関係者)
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川口由梨香(NHKの公式HPより)
番組スタッフも渡仏
 番組から派遣されるのは女性アナウンサーだけではない。番組スタッフも同じようにパリへ渡る。
「“屋上屋を架す”という慣用句を思い出します。パリにはNHKの国際部とスポーツニュース部の記者やデスクが大量に派遣され、取材して記事を書き、カメラマンが撮影しています。ところが番組からも番組の担当記者やデスクが派遣されますから、完全に重複しています。『ニュース7」』や『ニュースウォッチ9』の場合、取材制作ディレクターやデスク級までパリへ渡ります」(同・関係者)
 要するに無駄なアナウンサーやスタッフが目立つようなのだ。
「番組からアナウンサーやスタッフは渡仏させず、現地の記者やディレクターが番組分の取材も行う。必要ならパリ滞在中のアナウンサーに出演してもらうほうが、はるかに合理的であることは言うまでもありません」(同・関係者)
 さらにNHKがネット対応に力を入れていることで、「番組発の独自報道」の必要性が低下しているという。
「昭和の時代なら、それぞれの時間帯で放送される報道番組が独自ネタを放送したり、独自の観点でパリからレポートを伝えたりすることに価値はあったと思います。しかし今では、番組発のニュースであっても、国際部が取材してまとめたニュースでも、ネット記事では単なるNHKのニュースに過ぎません。こうして見ると、NHKパリオリンピックに対応するため、かなり予算を乱暴に使っていることが分かります。局内でも『こんなにジャブジャブ予算を使って大丈夫なのか?』と呆れ、心配する声が出ているのです」(同・関係者)