ふるさと納税1兆円超 規模縮小させる抜本策を(2024年8月7日『毎日新聞』-「社説」)

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ふるさと納税を巡りポイント付与を禁止する方針について反対意見を述べる楽天グループの武田和徳副社長=東京都江東区で2024年8月2日、山崎明子撮影
 
 膨張に歯止めがかからない。税財政をゆがめる深刻な事態だ。
 自治体に寄付すると住民税などが控除される「ふるさと納税」の年間の寄付総額が初めて1兆円を上回った。
 2023年度分は前年度より2割増の約1兆1175億円となった。19年度の約4900億円から4年間で倍以上に増えたことになる。利用者数も今回、初めて1000万人を超えた。
 ふるさと納税を巡っては、高額な返礼品競争が自治体間で過熱したため、寄付額に対する返礼品調達額の割合を3割以下などとする規制が導入された。だが、人気がある返礼品を送る自治体に寄付が集中する構造は変わらない。
 自治体への寄付は、約半分が返礼品や事務手数料など経費に使われる。このため、寄付が拡大するほど地方全体の税収は結果的に減少する。他自治体への流出分の75%は国が地方交付税で補塡(ほてん)するため、交付税の財源も圧迫される。
 弊害の是正に関しては、新たな動きもある。ふるさと納税を所管する総務省は6月、仲介サイトによる寄付者への特典ポイントの付与を来年10月から実質禁止する方針を公表した。ポイントを付与することで寄付者の囲い込みを進めてきた仲介サイトの一部は、反発している。
 総務省は、ポイントの付与は自治体を応援する制度の趣旨を逸脱していると主張する。自治体が仲介サイトに支払う手数料がポイントの「原資」に使われている可能性が否定できないとも指摘している。そうであればもっと早く手を打つべきだった。
 ここにきてのポイント規制には、寄付の総額を抑制したい総務省の思惑もうかがえる。だが、小手先の対応と言わざるを得ない。
 ふるさと納税は返礼品のカタログショッピングと化し、富裕層の節税対策に利用されている。この実態に正面から切り込まない限り、問題は解決しない。
 好きな自治体や故郷に寄付して応援するという原点に回帰するには、やはり最終的には返礼品を廃止するしかあるまい。
 まずは控除限度額を段階的に引き下げることで寄付総額を縮小し、返礼品頼みからの脱却を進めるべきだ。早急な対策を求める。