パリオリンピック柔道男子66キロ級で、阿部一二三選手が金メダルを獲得しました。阿部選手は前回・東京大会に続く金メダルで2連覇を果たしました。
2連覇を目指す阿部選手は、初戦の2回戦は合わせ技一本で勝って準々決勝に進みました。
準々決勝では世界ランキング7位のタジキスタンの選手と対戦し、開始40秒すぎに得意の袖釣り込み腰で技ありを奪い、開始2分40秒すぎには大内刈りで再び技ありを奪って、合わせ技一本で勝ち、準決勝に進みました。
決勝は世界ランキング8位のブラジルのウィリアン・リマ選手と対戦しました。
阿部選手は開始1分48秒に隅落としで技ありを奪い、さらに開始2分36秒には袖釣り込み腰で再び技ありを奪って、合わせ技一本で勝って金メダルを獲得しました。
前回・東京大会で金メダルを獲得した阿部選手は、2連覇を果たしました。
阿部選手はこの大会4試合で相手に技のポイントを1つも奪われずに優勝し、オリンピックの2連覇は、日本の柔道では8人目です。
一方、ともに連覇を目指した妹の詩選手は2回戦で敗れ、きょうだい同時の連覇はなりませんでした。
阿部一二三「最高の気分 絶対にむだな努力はない」
大会2連覇を果たした阿部一二三選手は「最高の気分です。オリンピックまでの3年間は楽な道のりではなかった。妹が負けてしまって僕自身も苦しい1日だったが、兄として『やるしかない』という思いでいました」と話していました。
また、阿部選手は表彰式のあと「生涯絶対に忘れることはないが、東京大会のときよりもたくさんの思いが詰まっているメダルだと思う。『これぞオリンピック』という大歓声の中で金メダルをとることができて本当によかった」と述べたうえで「オリンピックという舞台でやってきたことを出せたことは、これからの柔道人生で強みになってくるし、自信になったので、もっと強くなりたいと思う」と話しました。
また、今大会の活躍を見た人に何を感じてほしいか問われると「つらいこと、しんどいことはたくさんあると思うが、僕は『努力は天才を超える』というのを座右の銘にしていて、絶対にむだな努力はないと思っている。もし何かがかなわなくても、努力してきたことはむだにはならないので、途中でやめずに続けることが大切だ」と応えていました。
「圧倒的な柔道」で2連覇成し遂げる
阿部一二三選手は信条としている「圧倒的な柔道」でライバルを退け、2連覇を成し遂げました。
代名詞とも言える袖釣り込み腰や背負い投げなどの豪快な担ぎ技だけでなく、足技の鍛錬にも力を入れてきた阿部選手。
ことし3月の国際大会を制したあと「自分が求めていた内容で優勝できた。自分の求めていた理想の形で足技で投げた。練習の成果はだいぶ体に染みついている感覚はある」と話し、もはや弱点が見つからないほどの高い完成度を誇る柔道を作りあげてきました。
阿部選手自身「年々、稽古の量は増えている」とみずからの強さを今も貪欲に追い求めていて、柔道男子代表の鈴木桂治監督も「勝つために何が必要か常に考えている」とその姿勢を高く評価していました。
パリ大会に向けては「周りは絶対に2連覇してくれるという期待をもって見てくれていると思う。自分の圧倒的な柔道を日本だけでなく、世界の方々に見せたい」と、金メダルはもとより「阿部一二三らしい強い柔道」を見せることを最も追求しました。
そのことばどおり、阿部選手は1回戦から得意の担ぎ技と磨いてきた足技で勝ち上がり、決勝も一本勝ちで締めくくりました。
妹の詩選手が敗れ、史上初のきょうだいでの2連覇こそなりませんでしたが、目指してきた圧倒的な強さを示した上で2連覇を果たしました。
==決勝までの勝ち上がり==
【初戦の2回戦】
初戦の2回戦で、ハンガリーの選手に合わせ技一本で勝って準々決勝に進みました。
【準々決勝】
準々決勝では世界ランキング7位のタジキスタンの選手と対戦し、合わせ技一本で勝って、準決勝に進みました。
【準決勝】
準決勝は世界ランキング1位のモルドバのデニス・ビエル選手と対戦しました。
準決勝では延長戦までもつれましたが、延長戦の開始9秒すぎに払い腰で技ありを奪って勝ち、決勝進出を決めました。
所属の会社 2連覇に歓喜
阿部一二三選手が所属する東京・品川区の「パーク24」の本社には、柔道部の仲間や会社の柔道クラブの子どもたちなどおよそ50人が集まり、モニターで熱戦を見守りました。
試合前から集まった人たちが「阿部選手頑張れ」などとエールを送る姿が見られ、10歳の男の子は「豪快な担ぎ技で金メダルを勝ち取ってほしい」と話していました。
迎えた決勝では、全員が特製のバルーンをたたいて声援を送りました。
そして、阿部選手が合わせ技一本で勝って、前回の東京大会に続いて金メダルの獲得を決めると、大きな歓声が上がり、快挙を喜び合っていました。
声援を送った11歳の女の子は「妹の詩選手が負けてしまった分まで頑張ってくれたと思います。『本当におめでとう』と伝えたいです」と話していました。
阿部選手と柔道部の同期だという20代の男性は「練習で追い込み続ける姿を間近で見てきたので、一二三らしい豪快な柔道で金メダルを勝ち取ることができて本当によかったです。帰って来たら酒を酌み交わしてねぎらってあげたいです」と笑顔で話していました。