ネットを安心して使える仕組みが必要だ。表現の自由を尊重しつつ、有害な情報の拡散に歯止めをかけなければならない。
政府はSNS事業者に対し、偽情報などへの対応を適切に行うよう促してきた。人を中傷するような投稿に関しては、迅速な対応を求める法改正を実施している。だが、基本的に事業者の自主性に委ねる現在の制度には限界があると判断された。
対策案では、違法な情報の削除などを行政機関が事業者に求める制度の導入を提案した。政府は法規制を視野に議論を進める。罰金などの処分も検討対象となる。
背景にあるのは、刺激的な投稿で閲覧数を稼ぎ、広告収入などを得る「アテンションエコノミー」の広がりだ。事実に反した情報が横行すれば選挙などに悪影響を及ぼす。他人になりすます虚偽広告の詐欺被害も急拡大している。
ただ、政府が過度に介入して投稿の削除やアカウント停止を強制すれば、自由に表現する権利を損なう。法制化するとしても、条件や手続きを厳格に定め、抑制的に行使することが前提となる。
研究者や事業者などで構成する協議会の設置も盛り込まれた。偽情報の影響を分析し、対策の指針策定などを担うという。
国民目線で事業者を監視しつつ、政府の過剰な介入を防ぐ体制を構築できるかが問われる。事実を検証するファクトチェック組織や報道機関との連携も重要だ。
利用者の権利を守るために、産官学のあらゆる関係者が、デジタル空間の健全性を高める役割を果たす時だ。