「佐渡島(さど)の金山」のシンボルとされる採掘跡「道遊の割戸(どうゆうのわりと)」。長年掘り進むうちに山がV字形に割れたような姿となった=5月15日、新潟県佐渡市
【ニューデリー時事】インドで開催中の国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産委員会は27日(日本時間同)、世界最大級の金生産地だった「佐渡島(さど)の金山」(新潟県佐渡市)の世界文化遺産への登録を決定した。ユネスコの諮問機関は6月、追加情報を求める「情報照会」を勧告していたが、審議の結果、韓国を含む全会一致で登録が決まった。
「歴史全容説明なら反対せず」 佐渡島の金山―韓国代表団アドバイザー
世界遺産委は「世界で採鉱などの機械化が進んだ時代に、高度な手工業による採鉱と製錬技術を継続したアジアにおける他に類を見ない事例だ」と評価した。
佐渡島の金山を巡っては、太平洋戦争中に朝鮮半島出身者も働いていたことから、韓国側は「強制労働の現場だ」として日本政府に抗議するなどしてきた。世界遺産委は日本に対し、「鉱業採掘が行われたすべての時期を通じた歴史を説明する施設を整えること」などを勧告した。
政府代表は登録決定後、「金山におけるすべての労働者、特に朝鮮半島出身労働者を誠実に記憶に留め、韓国と協議しながら展示施設を強化すべく努力していく」とする声明を読み上げた。
政府は、佐渡市の「相川郷土博物館」に過酷な労働状況などに関する展示物を新たに整備。同市で毎年、労働者の追悼行事を行うことも表明した。
これに対し、委員国の韓国代表は「未来志向の日韓関係という視点から世界遺産委の決議を尊重する。全体の歴史を示すという日本の言葉を信頼し、履行を期待する」と述べた。
佐渡島の金山は17世紀には世界最大級の金生産地となり、機械化が進む中で19世紀半ばまで手工業による金生産が行われた。政府は「世界に類のない鉱山遺跡」として、昨年の登録を目指して推薦書を提出。しかし、ユネスコから内容の不備を指摘され、昨年に修正した推薦書を再提出した。
ユネスコ諮問機関の国際記念物遺跡会議(イコモス)は6月、「登録」に次ぐ情報照会を勧告。推薦対象外の明治以降の遺構が多く含まれる一部地区を除外するなど3項目の指摘を受け、政府はいずれも応じた。
国内の世界文化遺産は2021年の「北海道・北東北の縄文遺跡群」(青森など4道県)に続く21件目で、自然遺産を含む世界遺産は計26件となった。