日本原子力発電が再稼働を目指している福井県にある敦賀原子力発電所2号機について、原子力規制庁はきょう26日に開いた審査会合で、原発の規制基準に適合しているとは認められないとする結論をまとめました。原子炉建屋の真下を走る断層が将来動く可能性を否定することは困難だとしていて、事実上、再稼働を認めない結論を出すのは2012年の発足後初めてです。
この中で事業者の日本原子力発電は、2号機の周辺で行ったボーリング調査の結果などから動く可能性はないと改めて主張したうえで、データを拡充するため追加の調査を行いたいと要望しました。
これに対し審査を行う原子力規制庁は、科学的な根拠が不足しているなどと指摘し、原子炉建屋の真下を走る断層が将来動く可能性を否定することは困難だとして、敦賀原発2号機は原発の規制基準に適合しているとは言えないとする結論をまとめました。
事実上、再稼働を認めない結論を出すのは2012年の発足後初めてで、原子力規制庁によりますと、それ以前をさかのぼっても、確認できる範囲では、審査で不合格となった例はないということです。
結論は、来週、原子力規制委員会に報告され、日本原電が求めた追加の調査を受け入れるかどうかを含め、委員会として最終的に判断することになりますが、審査会合の結論が受け入れられる公算が大きく、その場合、日本原電は改めて審査を申請するか、敦賀原発2号機を廃炉にするかの判断を迫られることになります。
敦賀原発2号機 13年にわたって運転を停止
日本原子力発電とは
敦賀原子力発電所2号機の事業者である日本原子力発電は、原発の建設や運営などを行う民間企業で、東京電力ホールディングスや関西電力といった大手電力9社などが株主となっています。
1966年に日本で初めての商業用原発となる茨城県の東海原発を建設したのをはじめ、1970年には軽水炉と呼ばれるタイプでは初めての敦賀原発1号機を建設するなど、“日本の原子力発電のパイオニア”として、この分野をリードしてきました。
ただ、日本原電が、現在、保有している原発4基はいずれも稼働しておらず、このうち東海原発と敦賀原発1号機は廃炉作業に着手していて、会社は、残りの2基である、茨城県の東海第二原発と敦賀原発2号機の再稼働を目指していました。
日本原電は、保有するすべての原発が稼働を停止しているため、電力の販売をしていませんが、電力大手各社から、原発の維持・管理費用として「基本料金」を受け取っていて、ことし3月期の決算では、最終的な利益として24億円の黒字を確保しています。
全国の原発 33基中 17基が審査合格
国内にある33基の原発のうち、東京電力福島第一原発事故のあと、原子力規制委員会の審査に合格し、再稼働したのは12基です。
内訳は、
▽鹿児島県にある九州電力の川内原発1号機と2号機、佐賀県にある同じく九州電力の玄海原発3号機と4号機
▽愛媛県にある四国電力の伊方原発3号機
▽いずれも福井県にある関西電力の高浜原発1号機から4号機、大飯原発3号機と4号機、それに、美浜原発3号機です。
このほか、これまでに5基の原発が新規制基準の審査に合格していて、このうち、
▽宮城県にある東北電力の女川原発2号機はことし11月ごろに
▽島根県にある中国電力の島根原発2号機はことし12月にそれぞれ再稼働する計画です。
これに対し、原発事故後に強化された規制基準への対応や経済的な理由などを背景に、21基が廃炉になりました。
内訳は、
▽東京電力の福島第一原発の6基と福島第二原発の4基
▽関西電力の美浜原発1号機、2号機、大飯原発1号機、2号機
▽東北電力の女川原発1号機
▽中国電力の島根原発1号機
▽四国電力の伊方原発1号機、2号機
▽九州電力の玄海原発1号機、2号機
▽日本原子力発電の敦賀原発1号機です。
断層をめぐる審査の状況
原発事故のあと、これまでに全国で17基の原発が再稼働の前提となる審査に合格しましたが、現在も敦賀原発2号機も含めると8基が審査中で、このほかに建設中の2基が審査を受けています。
そのほとんどで、地震や津波といった自然災害への対策をめぐって審査が長期化しています。
このうち、
▽静岡県にある中部電力の浜岡原発3号機、4号機と、
▽青森県で建設中の電源開発の大間原発は、
敦賀原発2号機と同様に敷地内の断層が焦点になっています。
一方で、敦賀原発2号機と同様に過去に原子力規制委員会の専門家会議で敷地内の断層について、「将来動く可能性が否定できない」とされながら、その後、評価が覆ったケースもあります。
このうち石川県にある志賀原発2号機の審査では、北陸電力が新たな手法を用いて「活断層でない」とする証拠を示し、去年、規制委員会から了承されました。
今回の結論の影響は
日本原電社長 “廃炉 考えていない”
敦賀市長 “今後の状況を注視したい”
原子力規制庁元幹部 “科学的に判断 当然の結果”
専門家 “結論を急いだこと明白な審査 互いが納得できる議論を”
原子炉工学が専門の、東京工業大学奈良林直特任教授は、「結論を急いでいることが明白な審査会合で、事業者と規制側の主張がかみあっていない部分が多かった」と述べました。
そのうえで、「規制委員会は、行政機関として原発を廃炉にするために審査するのではない。拙速に議論するのではなく、互いが納得できる議論を重ねるべきだ」と述べ、事業者の追加調査も含めて審査を継続するべきだと指摘しました。
また、焦点となっている原子炉の真下を通る断層については、「地震を引き起こす『震源断層』は別だが、引きずられて動くひびのような断層については、工学的な安全対策で影響を評価できる。そうしたサイエンスに基づいて審査を進める仕組みに変えるべきだ」と話し、規制基準の見直しも含めた検討が必要だと述べました。