コロナ禍の混乱中、女性教諭が出勤したら…「給料28万円返納を」 川崎市教委「特別休暇の不正取得」(2024年7月25日『東京新聞』)

 
 川崎市立中学校の30代の女性教員が、コロナ禍に市が認めた特別休暇を申請していた日に子どもを保育園に預けて出勤したことは不正取得に当たるとして、市教委が給与など28万4718円の返納を求めたことに対し、女性教員が近く市人事委員会に措置要求する。女性は業務の必要性から出勤したのに多額の返納を求められる理由はないと主張。本紙の取材に対し「このような形になるのは本当に残念」と話している。(竹谷直子)
多額の返納は不当だと訴える教員の女性=市内で

多額の返納は不当だと訴える教員の女性=市内で

◆生徒の登校に立ち会うため、子どもを保育園に

 川崎市では2020年5月から、コロナの感染拡大防止のため、保育所の臨時休業や登園自粛要請により自宅で未就学児を世話しなければならない場合、特別休暇を取得することが認められた。女性も特別休暇を申請していたが、同年5月に2日、6月に1日の計3日間、生徒が写真撮影などで1~2時間ほど登校するのに立ち会うため、出勤の必要が生じた。そのため、子どもを短時間保育園に預けて勤務した。
 市教委は昨年2月、教職員29人が特別休暇を不正取得していたと公表。特別休暇を申請したのに子どもを保育園に預けていたり、時間単位で申請できるのに1日分の申請をしていたりしたことなどを理由に挙げた。女性も文書注意を受け、該当の3日間について特別休暇ではなく、本来勤務すべきなのにしなかったと認定された。勤勉手当の引き下げ対象にもなり、市教委から計28万円余りの返還を求められている。

◆「了承を得ていたのに」…適正な措置を要求へ

 女性は20年5月時点では時間単位の取得ができることを知らされていなかったほか、いずれの日も管理職に事情を話し、了承を得て出勤していたという。女性は「職務を全うしようと思い、保育園に頼み込んで子どもを預けて仕事に行った。久々の登園で何かあればすぐにお迎えに行ける状態にしたかった」と休暇のまま短時間勤務した理由を説明。適正な措置を人事委に求める方針だ。
 市教職員連絡会によると、処分は今後の昇級にも影響し、生涯賃金にも関係してくることになるという。代理人の川岸卓哉弁護士は「コロナ禍の混乱期の中、市教委の周知不足に起因する手違いで不正とは言えない。1カ月分の給与に相当する多額の返納を求めるのは法的に認められない」と批判する。市教委は「いろいろな検討の中で厳正に対処した」とし、適正だったと強調した。