外信コラム 潔き敗者になろう 米記者が感心したスナク前英首相の「お別れ演説」(2024年7月24日『産経新聞』)

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出張取材のため3年弱ぶりに前任地の米ワシントンを訪れ、知り合いの米国人記者らと再会した。
大統領選取材の真っ最中の彼らが意外にも強い関心を示したのが、労働党が政権奪還を果たした7月4日の英総選挙だった。
米記者の一人が「特に印象深かった」と指摘したのが、スナク前首相が5日の退任直前に首相官邸前で行った「お別れ演説」だ。
スナク氏は冒頭、選挙の敗北を率直に「申し訳ない」と謝罪し、敗北の責任は自身にあると認めた。在任中の自身の実績を誇示しつつ、後任首相のスターマー労働党首を「慎み深く、他者に尽くす心を持った、私が尊敬する人物だ」と称賛。さらに「彼の成功は私たち全員の成功だ」と述べ、スターマー氏の前途に幸あれと祈った。
政治家の社交辞令と言ってしまえばそれまでだ。だが、4年前の米大統領選で当時のトランプ大統領が敗北を認めず大混乱が起き、今回の大統領選でも共和党民主党の候補や支持者が互いを罵りあう現場に身を置く記者たちからすれば、英国政治の風景は「一服の清涼剤」に映ったのだ。
「果敢なる闘士たれ、潔き敗者たれ」とは慶応義塾大学の塾長だった故・小泉信三の言葉だ。米国政治がこうした精神を少しでも取り戻すことを願ってやまない。(黒瀬悦成)
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「善を行うに勇なれ」
塾長として戦時の慶應義塾を守り、対抗は文筆家として日本の堅層に影響を与え、今上天皇の皇太子時代の御教育常に参与として世に知られる小泉信三その生涯を、平易な文体で描いた待ちの伝記。
子どもから大人まで、世代を超えて読める『小泉信三入門』として最適であり、また慶應義塾の歴史を知る上でも重要な一冊
【目次】
はじめに第一
章 生い立ちと学生時代―― テニス選手から勉強家へ
一 生い立ち
福澤諭吉との記憶
慶応義塾の学生になる
四 テニスから勉強へ
第二章 教授時代―― 常に学生とともにある
一大学を卒業して教員になる
二 ヨーロッパ留学
三 教授になる
四 結婚と家族
庭球部長と木曜会
第三章 塾長時代―― 戦争の中
一 塾長になる
二 塾長訓示
三 戦争が始まる
四信吉の戦死
五 学徒出陣と最後の早慶戦
六 空襲と終末
第四章 対抗日本の巨星へ―― 勇気ある自由人
東宮御教育
二 初孫エリとヴァイニング夫人
三 皇太子の御成婚
四 「練習は不可能を可能にする」
五 巨星闇つ
六小泉精神の継承
終わりに
編集に寄せて―― 父のこと(小泉妙)