宮田笙子選手のオリンピック代表辞退【ゼロ・トレランス方式への疑問】2024年7月20日『Yahooニュース』)

親野智可等教育評論家
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筆者提供
体操女子オリンピック代表選手の宮田笙子さんが、日本代表としての行動規範に違反して喫煙と飲酒をしたということで代表辞退ということになりました。
それに対して「厳しすぎる」という意見が多数あがっています。私も厳しすぎると思います。
このような厳罰主義的な対応を「ゼロ・トレランス方式」といいます。トレランス(寛容)がゼロという意味で、非寛容方式とも呼ばれています。
違反に対しては例外なくルールが適用されるので、違反の背景にある問題(多くはその人を取り巻く環境や社会自体に問題がある)やその人の事情は一切考慮されません。まさに問答無用です。
その主旨は、軽度な違反でも厳罰に処することで、重大な違反の発生を防ごうということです。
当然メリットとデメリットがあり、時と場合によっては一定の効果もあるようです。例えばジュリアーニ市長が犯罪都市ニューヨークの治安を回復した例などです。
ただし、弊害も大きく、例えば中学や高校で導入された場合は次のような弊害が出る可能性があります。
1,問題を抱え丁寧な指導が必要とされる生徒の安易な排除が増える
2,違反の背景や事情に対する改善がなされなくなる
3,その結果、問題の背景はそのまま残るので同様の問題が起こり続ける
4,排除された生徒は立ち直りの機会を与えられず、社会からのドロップアウトに繋がることもある
5,先生と生徒の信頼関係が崩れ、生徒が先生にうっかり相談できなくなる
6,集団の雰囲気がトゲトゲしてきて先生も生徒も疑心暗鬼におちいる
同様の弊害はどこでも起こりえます。このような弊害の大きさを考えると、ゼロ・トレランス方式の採用には慎重さが求められます。
ましてや二十歳に満たない若者に対して、今回の処分は厳しすぎます。
日本社会はいま様々な問題を抱えていますが、それらに対して「非寛容な排除」を最優先する手法が蔓延すると社会全体がギスギスしてきます。
手間暇はかかりますが、問題の背景や事情に寄り添った丁寧な対応が必要です。
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教育評論家
教育評論家。本名、杉山桂一。長年の教師経験をもとに、子育て、しつけ、親子関係、勉強法、学力向上、家庭教育について具体的に提案。Instagram、Threads、TwitterYouTube「親力チャンネル」、Blog「親力講座」、メールマガジン「親力で決まる子供の将来」などで発信中。全国各地の小・中・高等学校、幼稚園・保育園のPTA、市町村の教育講演会、オンライン講演、先生や保育士の研修会でも大人気となっている。TwitterInstagramYouTube、Blog、メルマガ、講演のお問い合わせなどについては「親力」で検索してHPから。



【体操】宮田笙子所属の順大 HPの声明が波紋「出場もあり得ると考えていた」に残る違和感(2024年7月20日『東スポWEB』)
 
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五輪出場辞退となった宮田笙子
 体操女子の宮田笙子(19=順大)が、飲酒と喫煙行為でパリ五輪出場を辞退したことを受けて、所属先の順大が公式ホームページで発表した声明が波紋を広げている。
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五輪への意気込みをインタビューに語っていた宮田笙子
 声明の中で順大は行為そのものについて「認められるものではありません」としたが、パリ五輪辞退について「本学としては、当該選手に対する教育的配慮の点から、常習性のない喫煙であれば、本人の真摯な反省を前提に十分な教育指導をした上で、オリンピックに出場することもあり得ると考えておりました。したがって、この度のオリンピック出場辞退という結果には、本人が負う社会的ペナルティーの重さへの懸念から、誠に残念な思いでおります」とした。
 日本体操協会と認識の差が浮き彫りとなる文面。ネット上では「飲酒喫煙して出場できるってどんな発想だろう。他人ならともかく指導する立場の発言とはとてもじゃないが思えない」「順大は暗に体操協会の決定を批判しているように感じる。確かに判断の分かれるところではあるが、順大自身のこの発言には違和感がある」などの意見が上がり、「指導する立場の大学がこの開き直り。この大学にしてこの選手ありって感じですね」と厳しい指摘も見られた。
 順大は宮田が猛省した上で五輪の出場を望んでいた。19日の会見で順大の原田睦巳監督が泣きながら声をつまらせて「ものすごいプレッシャーと結果を残さなければいけないと胸に抱え、日々を過ごしていたことは、ぜひご理解いただければ幸いです」などと語っていたが、大学側の意向が通らなかった無念の涙でもあったのだろうか。

「叩き過ぎだろ?」五輪辞退の宮田笙子が自身のインスタグラム投稿を“全削除”にネット騒然「そこまで追い込む程かね!?」「本当にかわいそう」(2024年7月20日『THE DIGEST』)
 
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パリ五輪を辞退することになった19歳の宮田笙子。写真:滝川敏之
 日本体操協会は7月19日、東京都内で緊急会見を開き、体操女子でパリ五輪代表の主将を務める宮田笙子(19歳・順天堂大学)に行動規範違反が確認されたため、五輪出場を辞退したことを発表。また翌日の20日までに自身のインスタグラム投稿を全削除している。
【PHOTO】パリ五輪出場が内定した日本体操女子代表5選手を厳選フォトで一挙紹介!
 宮田には行動規範違反にあたる喫煙の疑いが持ち上がり、合宿地・モナコから帰国。その後、協会が本人に聞き取り調査を行ない、疑惑の喫煙行為に加えて“飲酒行為”も明らかになった。それを受けて行なわれた19日の会見で、パリ五輪の出場を辞退することを発表した。
 現在、日本の成人年齢は18歳だが、喫煙と飲酒が許されるのは20歳以上となっている。また今回は、代表活動の期間は原則的に20歳以上でも喫煙は許されないといった同協会が定める行動規範にも違反した。
 宮田の五輪辞退は国内外で大きな波紋を広げており、そうしたなかでのインスタグラム投稿の全削除には、心配の声が数多く挙がっている。
  ネット上では「そこまで追い込む程の罪かね??」「本当にかわいそう」「たかだか喫煙と飲酒くらいで…」「こんなになるまで社会制裁必要なのか?」「叩き過ぎだろ?」「復帰を待っています」などと、驚きと心配のメッセージが寄せられている。
構成●THE DIGEST編集部

為末大さん「出場できる道を…」宮田笙子のパリ五輪辞退であらためて長文の持論展開 SNSで賛否「可能性を信じる社会はいい言葉」「一番の被害者はチームでは?」(2024年7月20日『西スポWEB OTTO!』)
 
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為末大さん
 世界陸上男子400メートルハードルで2度の銅メダルを獲得した元陸上選手、為末大さん(46)が自身のX(旧ツイッター)を更新。飲酒と喫煙により、パリオリンピック代表を辞退した体操女子の宮田笙子(19)について、あらためて長文で私見をつづった。
 為末さんは「どうか、協会としても出場できる道を探って欲しいです」として、「ルールの運用は機械的でない方がいい」「十代の脳は大人とは違う」「個人的な体験から人は変われると信じている」と「三つの観点」から、持論を展開していった。
 自身の苦い経験なども交えながら、最後は「私は十代で馬鹿げたことをたくさんしました。けれども周りの大人が支えてくれ、変われたと思います。十代は不安定です。馬鹿げたこともするし、先も見えていない。でも、大人は皆十代の時期を過ごしてきました。子供たちの問題にフォーカスするより、可能性を信じる社会の方が私は良いと思っています」と締めくくった。
 この投稿にコメント欄では「日本の古き悪しき慣習を変えないと日本は未来に向けて変われない」「可能性を信じる社会、いい言葉」「難しいですが判断に柔軟性無いように思う」と為末さんの投稿を支持する声がある一方、「ルールを破っているんだからダメなものはダメ。 スピード違反とは違う」「被害者は辞退した選手ではなく、一番の被害者はチーム全体では?」「大人ならやらかしを擁護するのではなく、愛ある叱責と次へ期待して見守るべき」「規定違反したことが問題」など、否定的な声も寄せられた。
 為末さんは19日にも「問題だったとは思いますが、代表権を奪うほどではないと思います。どうか冷静な判断をお願いします」と投稿し話題となっていた。
【#OTTOパリ五輪情報】

体操・水鳥男子監督、女子エースの宮田笙子の五輪辞退に沈痛「相当厳しい判断をされた印象。代償がすごく大きい」(2024年7月20日『スポーツ報知』)
 
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宮田笙子
 【パリ(20日)大谷翔太】 日本体操協会水鳥寿思男子強化本部長が20日、パリ郊外で行われた男子の公式練習後、取材に応じた。女子主将の宮田笙子(19)=順大=が喫煙、飲酒など代表行動規範に違反する行為で五輪出場辞退となったことについて「本当に残念。東京五輪からパリにかけて、スポーツ、体操の魅力を発信していこうと取り組んできたので。女子も目標があった中、そこが難しくなってきている状況は残念だと思う」と沈痛の表情で語った。
 男子監督でもある水鳥氏によれば、ナショナルチームでは少なくとも年に1回、行動規範に関する研修が行われているという。「今回(パリ)も、第一回の合宿の時に代表チームができたから、そういった事は確認しているし、おそらく女子もしているという」と水鳥氏。JOCとしても選手に対してインテグリティ教育にも取り組んで来ただけに「アスリート全体に向けた研修などもしていたので。そういった意味では、体操からこういったことが出てしまったのは残念」と水鳥氏は述べた。
 20歳未満での喫煙、飲酒でありながら、代表辞退という重い発表には賛否が分かれる。水鳥氏も、今回の判断についての問いには熟慮した上で「五輪の大きさ、価値は僕自身がとてもよく分かっているので。そうとう厳しい判断をされたな、という印象はある」と、アテネ五輪団体総合金メダリストとして選手をおもんぱかった。一方で「チームとして頑張っていこうという中でのそういった事。チームとして重く受け止めた部分はあったと思うし、僕の中でも明確な答えがないくらい難しいことだなと。本当に、代償が大きなとすごく感じた」と、言葉を選びながら語った。
 エースで主将の宮田の辞退は、女子団体にとって大きな痛手。選手の入れ替えが認められず、4人で戦うという厳しい状況下におかれるが、水鳥氏は「今日も女子選手も一緒のバスで(練習に)来たけど、選手は選手でしっかりやろうという雰囲気は感じられたので、安心した。残っている選手がまずはしっかりと、自分の演技ができるように頑張ってほしい」と願いを込めた。