災害級の暑さ前提に対策急げ(2024年7月19日『日本経済新聞』-「社説」)

 梅雨が明けて気温が上昇するなか、日傘を差して東京・銀座を歩く人たち(7月18日、共同)
九州南部や東海、関東甲信で梅雨が明けた。他の地域も間近だ。7月末にかけて「10年に1度」の厳しい暑さになりそうだ。気象庁が早期天候情報を出し、警戒を呼びかけている。
 昨年は7、8、9月と平均気温が観測史上最も高くなった。気象庁は今夏も異例の猛暑になると予想する。災害並みに危険な暑さが頻繁に来ると考え、備えを徹底しなければならない。
 まずは熱中症対策だ。1993年までは年平均67人だった死者数が、2018年以降は21年を除いて1000人を超す。暑さに慣れていない今は特に危険だ。こまめな水分補給やエアコンの適切な使用を心がけるようにしたい。
 高騰する電気料金を気にしてエアコンを控える人も少なくない。自治体は公共施設を避難先に指定し、住民に利用を呼びかけ始めた。企業にも協力を求め、商業施設などにも広げる必要がある。
 高校野球は昨年から、休憩時間を設け、選手が身体を冷やし、水分を補給できるようにした。工事や工場、警備の現場ではファン付き作業服を着る人が増えた。今の対策では熱中症を防げないことも起こりうる。
 夏の生活や仕事を変えることも検討すべきだ。スポーツや屋外作業は昼の休憩時間を延ばし、朝や夕方に集中するようにしてはどうか。コロナ下で広がったテレワークや、旅行と仕事を兼ねるワーケーションも有効だろう。
 建物の断熱化も有効だ。古い校舎や集合住宅の最上階はエアコンをつけても室内が30度を超すこともある。コンクリートが昼間に蓄えた熱を放出するため、夜中も室温が下がらない。天井や壁の断熱を進めれば、電力の消費を抑えられ、地球温暖化対策にも役立つ。
 東京大学気象研究所などの解析によると、昨夏の猛暑は「温暖化がなければ起こりえなかった」。猛暑が当たり前になるのは避けられなくても、温暖化対策の手を緩めれば状況は悪化する。将来世代のためにも怠れない。